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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

人類史から観た第三次世界大戦の必然性

2022-06-30
  前項を書き上げてアップしたあと、録画を観た。NHKが今年3月31日に放送し、6月28日に再放送した「ヒューマニエンス」シリーズの『絶滅人類 ホモサピエンスを映す鏡』と題する番組である。そして前項で書いたことがほとんどそのまま実証されたという確信を持った。これは驚くべき偶然であったが、書いたことが数日内にニュースや科学番組で実証されるということはノムにとってはよくあることである。そこでタイトルにあるように、人類史から観た第三次世界大戦の必然性について書いてみることにした。最初に番組の内容を紹介し、つぎにノムの自論との関連、そして具体的提案を展開したい。

  人類が我々ホモサピエンスに進化するまでには、20種類以上の傍系が存在し、しかもホモサピエンスと同時代に生きていたものも数種類あったとされる。番組では科学者がそれぞれの考え方から、なぜ最後にホモサピエンスだけが生き残ったのか、という疑問に対して推論を述べているが、その考え方には大きく分けて2つある。1つ目の考え方は、ホモサピエンスが大型動物を「狩り」で、傍系人類を「闘争」で他種を絶滅させた、というもので、マンモスなどの大型動物の絶滅や、人類傍系がホモサピエンスの世界への進出と時を合わせて絶滅していることから、この推論はかなり強い根拠を持つ(2.25「人類史」・4.7「人類の戦争史」)。2つ目の考え方は、ホモサピエンスは敢えて傍系人類と戦わなかったとしても、傍系を生存条件の悪い地域に追いやったことで、自然と傍系は絶滅せざるを得なかった、というもので、ノムとしてはその両方が同時に進行したのだろうと考える

  ホモサピエンスより遥かに遡る200万年前に存在したサピエンスの祖先とされるホモ・ハビリスは、パラントロプス・ボイセイと同じ時代を生きた。この頃のアフリカでは乾燥化が進み、食料を得るのは難しい時代だった。ボイセイは食物を主として根茎(ヤムイモ・タイガーナッツ)などに求めたため、顎が強度に発達した。咀嚼力は現代人の5倍以上だったと推測される。どちらかと言えば「菜食系」であったとされる。この食物の違いはその後の進化に大きく影響したという。つまり菜食系の傍系は脳の容量が増えなかったのに対し、死肉や骨髄などを漁っていた肉食系のハビリスは脳を増大させ、しかも強欲になっていったという。またこれには道具(石器ナイフ)の発明が大きく貢献した。他の傍系人類も道具を使ったが、その形態・機能に余り進化が見られないのに対し、ホモサピエンスの祖先の旧石器時代の進化には目覚ましいものがあった。それは脳の体重相対容量の比較でも傍証される。ボイセイは500㏄であったのに対し、ハビリスは600㏄以上あったとされる。ハビリスが進化したエレクトスは狩りを行うようになり、脳は800㏄を超えるようになっていった。番組では、肉食から始まった脳の増大が浪費型人類を生み出したと説明する。

  ホモサピエンスの誕生初期には、狩りの必要からその結束がかなり強かったことが想像され、集落の形成や集落間のネットワークの形成によって、他の傍系人類よりも強力な生存条件を生み出した。およそ30万年前、既にアフリカから出立して全世界に散っていった人類の祖先は、各地で原人・旧人と呼ばれる種に進化していた。アフリカに残った種から、およそ30万年程前にホモ・サピエンスが誕生したが、これが5万年ほど前に第二の出アフリカをし、ヨーロッパ方面に存在していた旧人に属するネアンデルタール人と中東辺りで遭遇し、これをほぼ1万年後に絶滅させた。そして進出先にいた先輩人類が次々と消滅していったとされる。また大型動物であるマンモス(シベリア)やオオツノジカ(ヨーロッパ)・ディプロトドン(オーストラリア)・アメリカマストドン(北米)・メガテリウム(南米)は、サピエンスの進出の数万年後には絶滅した。その原因については上記した2つの説があるが、東京大学の海部陽介は自然淘汰説を採る。自然界でも自然淘汰による絶滅があるように、人間界でも資源を独占した者が生き残ったと考える。

  ここで番組では人の「賢さ」と「強欲」という2つの足目を取り上げる。人間は生きるために必要でなくても、物事をとことんまでやるという強欲さを持っている。それが他者である動物や同類人類を滅ぼしたのではないかという。確かにその通りであり、ノムはそれを知能から生まれた悪の側面であると考える(21.11.18「本能論」)。上記の海部はまた、人間が手にした技術がその欲望を可能にしたとも言う。欲望も技術も知能(知性)から生まれていると考えるべきだろう。番組では出演者が「ホモサピエンスは本当に”賢い人”なのか」ということで議論を盛り上げた。漫画家の山崎マリは「サピエンスの浪費は古代から変わっていない」と発言していたが、その通りであろう。そして山崎は「”業”を訓練していかなければダメ」とも言う。これはノムの「制御思想」に繋がると考えた(21.1.7「制御思想」)。 
 
  だがネアンデルタールとは混交(交配)があったことが2010年になってDNA解析から分かった。アフリカ以外のヨーロッパ・アジア・オセアニアの人の1.3~2.7%にはネアンデルタールの痕跡が残っているという。これは進化が直線的に起こったということではなく、分岐的に行われてきたとともに、異種人類同士の交配もあったことで進化が促進されてきたということを示している。またインドネシアのフローレス島で2003年に発見されたホモ・フロレシエンシスは、独自の進化を遂げて、少ない食料に適応した小柄な体形になった。その脳容量は426㏄だという。現代人の1350㏄の1/3ほどである。身長は110cm程度だったようだ。ジャワ原人は身長165~170cmで大型の方だったが、島に閉じ込められた結果、島嶼効果と呼ばれるもので独自進化をしたと考えられている(21.3.12「人類の挑戦と進化」)。海部は「脳が大きくなるということは必然ではなかったし、定めでもなかった」と進化の考え方が一変したという。脳の大きさと神経ネットワークの密度について、これからまだ研究が進められるだろう。

  以上の番組の内容を踏まえて、ノムは以下の推論をした。

  1.人間は菜食によって強欲を抑えられるが、肉食は強欲を生み出し、それは制御不能となる。日本では縄文時代は恐らく「菜食系」の生活(採集中心)をしており、また天武天皇が肉食禁止令(675)を出したことで、明治時代に入るまで日本人は主として菜食に頼ってきた(5.22「縄文時代の奇跡」)。それが温和な性格を形作ってきたと考えられる(21.10.13「日本人の精神性」)。だが明治時代になって肉食が普及し始めたことで性格的にも野蛮さが生じ、対外戦争に踏み込んでいった一因となった。これに対し、最初から「雑食系」であったアジア・アフリカ、そして「肉食系」であったヨーロッパ(アメリカを含む白人系)は闘争的となった、という自論を持っている。だがあいにく、食物と性格についての科学的研究があるのかどうかについてはノムには知見がない

  2.武器の進化は生存可能性を飛躍的に高め、武器の優位性がこれからの時代でも勝敗の決定的要素となるだろう。その意味でロシアや中国の脅威はもっと強調されなければならない。

  3.ネットワークを作ることのできる体制が優位である。その意味で現代のロシア・中国は逆をいっており、最終的な生き残りには不利となるだろう。欧米先進国は幸いなことに現在は一致団結してロシアを敵国と見做しており、他の弱小国が中国にこびへつらったとしても問題ではない。民主主義に拠って立つ強国がネットワークを形成しつつある状況(NATO・AUKUS・QUAD・米日同盟・米韓同盟・米比同盟・)は、世界にとっては好ましいことになっている。最終的にこれらを1つにまとめる方が良いだろうと前項で指摘した。

  4.自然界や動物界では種の多様化が見られるのに対し、人類だけは1種に固定化されてしまった。その原因は人類の際限のない同種間闘争にあり、番組でも紹介しているように、多くの同種人類を滅ぼしてきた。現在これは国家間闘争という形で行われており、人類はこれを制御できなくなっている。このことは、地球温暖化や核戦争による環境激変に対して非常に脆弱であることを意味する。人類は最終兵器とも呼ばれる核兵器という武器を手にした結果、それによって自らを滅ぼしてしまう可能性を持っている。

  以上の論考から未来社会の在り方を遠望すると、①人類は肉食を止めて菜食の方向に移行すべきである・②武器をこれ以上開発するべきでなく、連邦が一括管理すべきである・③世界はノムネットで連携し、情報交換をより頻繁化すべきだが、人流・物流は省エネの観点から制御されるべきである・④地球環境の激変(気温上昇・旱魃・自然火災・海面上昇・二酸化炭素濃度の上昇による窒息)を食い止め、安定化させるには、人間活動の劇的縮小が必要であり、人類は知能を持つためそれを実現する可能性は残されている。ノムの具体的提案として生活領域の地下化肉食から菜食への移行(ベジタリアン・ビーガンの思想は原理的に正しい)、人工物質生産(主としてプラスチック)の抑制と消費抑制、を挙げたいが、これらを実現するためには強力な権威主義体制が必要であり、良い意味での権威主義賢人による連邦政府により実現するだろう(20.6.13「世界食糧危機は起こるか? その時日本は?」)

  振り返って現代を観てみると、人類は絶滅に至る最終局面に差し掛かっている。世界民は自分の生活レベルの向上にのみ価値を置き、各国は自国の繁栄に最大の価値を置いており、その結果相互の競争が起こり、その競争は単に経済競争に留まらず、戦争に至っている。もし世界が最終兵器と呼ばれる核兵器を使用すれば、それは確実に核の冬をもたらし、環境の激変を引き起こす。それは人類をも絶滅させるかもしれないという未曽有の脅威である。また核戦争が起こらなかったとしても、人間活動のもたらす二酸化炭素の増加によって、人類は動物を含めて窒息死に至るであろう(20.11.23「地球温暖化と動物窒息死の問題」)。その両方の問題を解決に持っていくには、ノムの提唱する未来世界が築かれなければならないが、残念ながら人間はその知恵をまだ持っておらず、また持っていたとしても状況論からして事態の悪化を防ぐことはできず、ついには第三次世界大戦が必然的に勃発してしまうのである(21.6.22「宣戦布告なき第三次世界大戦」)

  これは以上に述べた人類史から観て、必然的過程であることが分かるであろう。「賢い人」の意味で名づけられたサピエンスだが、実はまだ本当の賢さには到達していない。だが番組でも織田裕二が述べていたように、「ホモサピエンスは生き残る」ことを希望として持ちたい。またその可能性はゼロではないと思うのは、人間は技術力で不可能を可能にしてきたからである。ほんの一部の人間だけかもしれないが、必ず人間は生き残る。その残った人間が、新たな社会を形成するように動くだろう。それがノムの説く「未来世界」に繋がれば、ノムの本望であり最善の道となるだろう(4.24「未来世界の精神文明と自己実現」)


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