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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

人類史

2022-02-25
  「人類史」という重要なテーマを取り上げるのが遅くなったが、それは当初の【時事評論】の目的が、基本的にはその時々の時事的問題を取り上げるために設けた欄であり、ノム思想の解説をするためではなかったためである。だが記事を書いているとどうしても未来世界のことに触れざるを得ないことから、その説明についても折に触れて載せてきた。そして最近になって、「戦争」や「民族大移動」というテーマを書こうとした頃から、人類史に触れざるを得ないことに気が付いた。ノム思想が必要なのも人類が存在するからであって、人類がいなければ思想などというものも必要はないのである。そこで本項では人類史を、ノム視点で書くことにした。なお、本項は2012年に書いた本論文『人類の誕生と進化』(19014文字)を参考にした

  人類の祖先である霊長類の進化の歴史は約8500万年前まで遡る(21.3.12「人類の挑戦と進化 」・21.6.8「新・進化論 」)。その祖先は齧歯目(げっしもく)、ウサギ目(もく)と共通祖先をもったグループと見なされている。恐らくその共通祖先はネズミのような小動物が、大絶滅のあった白亜紀後期にウイルス病に罹り、生き残った個体がウイルスのDNAを組み込んだことで胎盤を持つようになり、哺乳類に進化したと最近は考えられている。最も初期の霊長類と考えられている動物はその後アメリカの大地溝帯で誕生し、暁新世(ぎょうしんせい)と始新世の温暖な時代にユーラシアとアフリカに広まったという説もある。約260万年前から始まった氷期で砂漠化が進んだため、一部の霊長類は草原生活に移行していった。最も古いものとしてカモヤピテクス(2400万年前)というものがあるようだが、よく知られているものとしてはサヘラントロプス(700万年前)があるとされる。2012年に発表されたゲノム解析の研究によるとホモサピエンスとチンパンジーが分化したのは約600万年前ごろとされた。ミトコンドリアDNAの全塩基配列の解析では487万年前±23万年にチンパンジー亜族とヒト亜族が分岐したとされる。この分化の原因か結果かは分からないが、生理反応の進化が起こっている。このことからサヘラントロプスがほぼその分岐後の猿人と見てよいだろう。

  重要だと思われることは、猿人から始まる初期ヒト族はアフリカで誕生したのではないかと思われることである。それはアフリカにおける気候変動が大きく作用したというのが通説になっているが、その誕生に放射線が大きく関わっているという説は皆無のようだ。だがノムは進化には放射線の作用が重要であると考えており、アフリカにはその条件があったのではないかという仮説を唱えている。それはアフリカにある大地溝帯が、かつて放射能が高かったのではないかという推定に基づいた仮説である。大地溝帯はマグマが地球の割れ目を広げたことでできたと考えられており、そのマグマが地球内部の放射性元素を沢山含んでいたため、周辺より放射能レベルが高かったのではないかと考えている。それにより猿人の進化が進み、多くの人類祖先の化石がこの地域で発見されるのである。猿人から原人、そしてホモサピエンスに至る進化はほぼアフリカの大地溝帯周辺で起こったのではないだろうか。現在の大地溝帯は放射能レベルは特に高くないようであり、進化条件の1つはもう無い。

  約440万年前のラミダス猿人はNHK番組によると二足歩行によって家族が生まれたとする。すなわち、両手を使えるようになって、オスはメスと子に餌を運ぶことが容易になり、家族という絆ができたとする。それによってメスを巡る争いがかなり減少し、多死多産によって人類は繁栄を始める。アファレンシスというものに進化した頃には、10人以上の集団で行動していたようだ。この頃には野獣に対して戦う武器をまだ発明していなかった。ホモ・ハビリスパラントロプス・ボイセイは60万年という長きに亘って共存していたとされ、強健なボイセイが滅びた。ハビリスが生き延びたのは華奢であったため顎が小さく、頭蓋が大きくなり、知的に優越であったと考えられているようだ。240万年前に誕生したとされるホモ・ハビリスは最初に石器を使ったかもしれないとされ、旧人と呼ばれるホモ・ネアンデルターレンシスや新人と呼ばれるホモ・サピエンスの祖先となったようだ。およそ80万年前に分岐したネアンデルタール人とサピエンスは同時代に生息していたが、ホモサピエンスの方が華奢であったにも拘らず、知能が優れていたためにサピエンスが残り、ネアンデルタール人はおよそ2万数千年前に滅びたと言われる。だがこの2種は混交できたため、ネアンデルタールのDNAが現代のポリネシア・メラネシア系に残っていることが2010年に発表されている。サピエンスが生きた時代には6族が共存していたとする説もある。

  ホモ・サピエンスはおよそ20万年前にアフリカで誕生し、7万年~5万年前にはヨーロッパとアジアに拡散していったとされる。だが先進したサピエンス族は後の4万年前頃に後進してきたサピエンスに滅ぼされた可能性も指摘されている。同種同士の生存闘争はこの頃から始まったのかもしれない。この頃のヒトは既に動物と違う特異行動(言語・音楽・造形・装飾・祭祀・取引)と身に付けていた。さらに抽象概念の理解という能力も獲得していた可能性が高い。その原因は頭蓋構造の変化と手の器用さから生まれたとノムは推測する。調理によって固い食物を柔らかくして食べられるようになった結果、頭蓋構造が変化し、顎骨が最小化した結果大脳を発達させることができ、かつ発音に適した構造になったからである。特に脳の前頭葉の発達が文化というものを生み出した。だが人類は7万年前の大規模気候変動で旱魃が起こったことでわずか2000人に減ったというボトル・ネック現象を主張する学者もいる。そのためか現生人類のDNAの均一性は極めて大きい。ついに人類はその7万年前頃から「出アフリカ」という行動に出た。これは人類の大移動の始まりとなる。3万年前にはすでに北米に辿り着いていたという説もある。移住はヒトの進化を促進する触媒作用を果たし、各種の人種が生まれた。上記特異行動は3万年前には顕著となっている。そして1万年前からの気温の安定化によって、人間は農耕を可能にし、食糧が安定したことで一気に人口を増加させ始めた(21.10.29「人口爆発の脅威 」)

  人類はこの段階で既に高度な言語を持ち、手先の器用さも増していたため、各種の道具を作るだけでなく、機械をも発明していた。水車・車輪は活動を拡大し、ついに紙や火薬までも発明していた。だがそれらの最先端技術を持つ集団が優位となり、銅器・青銅器・鉄器が発明されると、それらは戦闘・戦争の道具とされた(20.9.16「競争はいつ芽生え、何をもたらしたか? 」・21.7.4「戦争論 」)。集団闘争の起源は農耕の開始にあったと考えることもできる。さらに技術の進歩は人間生活と闘争に重要な革新をもたらした(21.5.14「係争と戦争の論理(ロジック) 」・21.12.31「憎しみと戦争 」)。農耕開始以降の人類史は闘争史と言っても過言ではないほど、闘争に明け暮れ、その規模は拡大していった。そして自らを守るために部族・国家・帝国を形成していった(21.6.11「人類文明のエントロピー的解釈 」)

  技術に革命的変化が訪れた。近代に至るまではニュートン力学によって技術のほとんどがカバーできたが、この革命的確信は目に見えない電気という現象を応用したことからはじまったものであり、近代科学がそれを可能にした。やがて電気現象は電子現象として理解され、さらに物質の構造にまで研究が及んだ。物質の構造が徐々に明らかになったが、それを数学理論と一致させるためには物理学のより深い理解が必要となり、相対性理論や量子力学という学問領域が誕生し、ついにそれは宇宙の創造と構造の理解に及んだ。

  これらの人間による知的理解と応用は果てしがない知的競争と技術応用の競争を生み出し、結果として人間活動は地球の隅々にまで及んだ(20.12.24「人類の好奇心と冒険心」)。特に人間が人力と動物力および重力を応用していた時代から、内燃機関や電気モーターによる動力利用の時代に入ったことは、格段にそれを押し進めた。その中の、化石燃料を燃料とする動力源や産業、そして暖房は、予測しなかった地球大気組成の微小な変化をもたらし、それが地球温暖化をもたらした。本来なら間氷期にあるはずの地球の気候は徐々に変化し、気温上昇とともに大きな自然災害をもたらすようになった。さらに人間の競争は国家の競争に拡大され、大規模な戦争に発展した。20世紀は戦争の世紀と呼ばれるようになり、現代の21世紀は人類破滅の世紀と呼ばれるようになるであろう(002「第三次世界大戦の可能性」)。それは人間が作り出した核兵器というものが、破滅的破壊力と気候変動をもたらすからである。核兵器の発明(1945年7月16日)からまだわずか77年しか経っておらず、産業革命(18世紀半ば)からも250年ほどしか経っていない。人類の歴史を20万年と考えても、1000分の1の時間で人類は自らを滅ぼす道に迷い込んでしまったことになる。

  人類の未来に目を向けると、生物の歴史から学べることは、現在の人類は恐らく100年ほどの間に滅びることになるかもしれない。そして極寒の世界を生き延びた人類が知的進化を遂げて、新人類(ノムは「ネオサピエンス」と名付けた)が誕生することだろう(21.4.8「ホモサピエンスからネオサピエンスへの進化 」)。それは本質的部分にはさほど変化はないが、知的レベルと文明レベルで産業革命以前の人々の生活形態や政治制度が全く異なる高度なレベルに達した世界であり、人類である。つい100年前までは、人々が車を運転することすら考えられなかった。今では人々はスマホによって会話し、コンピューターで仕事をしている。未来はさらにそれが進んで、人類は機械と一体化してサイボーグとなっている可能性が高い(21.3.12「人類の挑戦と進化 」・2.6「人間のサイボーグ化は人類進化なのか? 」)。そのような未来では人間は競争や争いを克服し、調和という制御手法を習得しているだろう。それには世界が統一されている必要があり、そうなる前に競争と闘争による大きな災厄があると考える(21.3.28「世界連邦の可能性 」)。その災厄は2020年の中国によるコロナ禍から始まったとノムは考えており、さらにその人類に加えられたストレスは、ロシア・ウクライナ戦争という形ではっきり表れた(20.2.26「人類は試されている」・20.12.18「人類の希望はどこにあるか?」・21.5.2「病原体の進化と人類への影響」・21.7.4「戦争論 」・21.12.13「ノムの予言の意味 」/004「人間の存在の意味」)。(22.7.6追記)


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