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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

世界食糧危機は起こるか? その時日本は?

2020-06-13
  コロナ禍が後進国に拡大する中、アフリカ東部やインド・パキスタンでサバクトビバッタが猛威をふるって後進国の食糧事情を悪化させている。世界食糧計画(WFP)は2020年末までに、世界で2億6千万人が食料不足に直面し、それは2019年比で倍増となるとしている。打撃をもろに受けるのは既に飢餓が問題となっているアフリカなどの最貧国や中東で、特に難民の多いナイジェリア・南スーダン・シリア・イエメンなどであり、バッタ被害の深刻なエチオピア・ソマリア・ケニアも同様である。コメ輸出国のインドでも既に大量の失業者や貧困層が食料配給のへの長い列を作っている。
 
  食糧が世界的に不足すると価格高騰が起こるが、WTOのルールでは自国内が食料不足でない限り、輸出制限は禁止されているため、先進国の多くは輸出を増やして大儲けする。アメリカ・カナダ・オーストラリア・EUなどは輸出制限をしていない。だがコメ輸出国のインドでは2008年のリーマンショック時にコメの輸出を禁止した。価格高騰になると国民がコメを買えなくなってしまうからである。インドの貧困層の支出の大部分が食費であるからである。タイは購買力があるため輸出を止めなかった。
 
  今回、インドはコメ・小麦の輸出を制限している。ベトナム・カンボジアも部分的に輸出制限を講じている。G20の貿易相は3月30日に緊急テレビ会議を開き、コロナ禍終息までは貿易制限を回避し、国際的な食料安定供給を維持することで合意した。それは先進国だからこそできる政策であるが、日本は先進国でありながら食料自給率が2018年度で37%(カロリーベース)と低い。果たして日本は大丈夫なのかという心配が高まっている。だが日本は所得水準が高く、物流インフラも整備されているためその心配はない。だが価格高騰は避けられないであろう。
 
  だが日本周辺で軍事的紛争が起こった場合、それは直ちにシーレーン破壊に繋がり、一気に石油と食糧が断たれる可能性は極めて大きい。それは自然災害(コロナ禍を含む)よりもはるかに決定的な食糧危機要因であり、しかもコロナと同様、ある日突然に想定外のこととして発生する可能性が大きいのである。日本がそのような事態に備える戦略を持っているとは思えない。今こそ他国の状況を「他山の石」として学び、国家安全保障を意識した抜本的な食糧安全保障政策を打ち立てなければならない。
 
  ノム世界で構想している田園都市計画の考え方はその一助となるだろう。戦時中の国会議事堂前の界隈で畑が見られたように、空き地を整備していつでも農地として使えるようにすべきである。現在東京都内には空き家になった未使用土地が沢山あり、所有権があるため手付かずとなっている。これを強制収用できるようにして、買い上げで市民農園にすべきである。それは大規模火災発生時にも延焼を防ぐために役立つだろう。ノムは市の管理する道路のガードレールを利用して花壇を作っているが、これはすぐにでも農用プランターに転用できる。
 
  こうした細かい配慮がなければ、非常時に対応することはできない。政府は予算を決めるという大枠を定めるだけが仕事ではない。最も小さいところに目を留めて、それを活用できるように社会の制度を変えていくべきである。そのためには個人主義・権利主義・法律主義を廃し、全体主義・道理主義を取り入れていくべきである。首都直下地震・大規模水害等も予測されている中、そのような国家としての本来あるべき姿を追求していかないと、その時になってにっちもさっちもいかない事態が招来されるだろう。日本人の叡智が試される時である。

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