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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

宣戦布告なき第三次世界大戦

2021-06-22
  朝の新聞を広げて記事を読んでいたとき、ふと下段にある書籍広告の中の『第三次世界大戦はすでに始まっている!ヴァーサス・チャイナ(Vs.中国)』が目に入った。筆者は常々第三次世界大戦勃発の脅威を説いてきたが、それが既に始まっているという指摘は考えてみれば当然の認識であり、改めて戦争というもののフェーズ(相)認識を変えてみる必要があることを思い出させてくれた。これは裏を返すと、宣戦布告なき第三次世界大戦が既に始まっていることを意味することから、タイトルをそのように替えて考察してみることにした。

  まず上記書籍を書いた山岡鉄秀(てつひで)について説明しておこう。彼は1965(S.40)年に東京に生まれ、中央大学・シドニー大学大学院修士などを経てジャーナリズムの世界に飛び込んだ。現在は情報戦略アナリストを自称している。他の著書に『日本よ、もう謝るな!』・『日本よ、情報戦はこう戦え! 』・『新・失敗の本質 』がある。どれも共感しそうで読みたくなるが、アマゾンから検索すると、私好みの他書の広告が紹介されており、『世界の未来は日本にかかっている 中国の侵略を阻止せよ!』・『中国と戦うときが来た日本』・戦うことは悪ですか?という本もあり、読書好きの人であったならば全部購入していたかもしれない。だが筆者は人の本は読まないことにしているため、資料として冒頭の1冊だけ手に入れることにした。

  アマゾンにしては珍しく、数日して本が届けられた(いつもなら翌日配送)。山岡によると、中国の脅威はソ連の脅威を上回る戦後最大の脅威であるという。その理由として、
 1.ソ連は共産主義革命の輸出を目的とした。そしてソ連はそれを隠そうとしなかった。それは目に見える対決であった。
 2.一方中国は資本主義を取り入れ、見せかけの自由経済を利用して世界の工場になり、それによって技術を取り込んで世界に格安の良品を売りまくり、莫大な利益を上げて西側諸国の経済覇権を凌いだ。
 3.その間、中国は世界制覇の野望をひた隠し、無害を装いながら巨大な市場を提供するふりをしながら外国企業を取り込み、世界の経済との非分離性を確立した。
 4.巧妙なのは、世界中に存在する中華系移民や留学生を工作員として活用し、戦わずしてターゲット国の属国化を進めた。各国が気付いたときには、その浸透を食い止めることが出来なくなっていた。

  この状況を豪州チャールズ・スタート大学のクライブ・ハミルトンは「静かなる侵略」と呼んでいる(20.10.3「中国の世界進出はガンの転移と似ている 」)。かつて豪州は中国にのめり込んだ時期があり、議会にまでその影響は及んでいる。だがオーストラリアは世界で最も早く中国の脅威に気付いた国であろう。それをコロナ禍で中国に批判の矛先を向けた途端、中国は見せしめとするために豪に対して意外な強烈パンチを浴びせてきた。だがそれは世界に中国の脅威を改めて感じさせるきっかけとなった(20.10.16「中国の急激な先鋭化は何を意味する? 」)

  それ以前から中国の野望は明らかであったが、アメリカは気が付くのが比較的遅すぎた。せめてオバマ時代(2008-2016年)に気が付いて対策をとるべきであったが、オバマの平和主義や腰の引けた対応から、その間に急速な台頭を許してしまった。せめて習近平が指導者になった2012年に、そのリスクを悟らなければならなかった。日本は対中国戦争を戦った悔悟から、戦後は終始中国に対して謝罪と支援の姿勢を続けてきた。その罪は最大であったとも言えよう。特に天安門事件後に一早く中国への支援を世界に先駆けて開始し始めたことにより、世界は日本に遅れるなとばかりに一斉に中国を受け入れた。その結果が現在の状況を作り出したのである。

  超大国アメリカに戦争を仕掛けた国は日本の他にない。日本はアメリカに移民を多数送り込んでいたにも拘らず、その日本人(日系人)を通じて第二次世界大戦の布石を打たなかった。アメリカも日本を追い込んで戦争しか選択肢が無いようにしていたことから、ルーズベルト大統領は日本の宣戦布告を待ち望んでいたとも言われる。だが事務的過失から日本の宣戦布告は開戦から1時間ほど遅れ、それが厭戦気分にあったアメリカ国民を奮い立たせた。「リメンバー・パールハーバー」という合言葉がそれを象徴している。だが中国の場合宣戦布告がないまま既にアメリカ国内だけでなく、世界にその布石が為されていた。各国に存在する中国企業や留学生は中国共産党の支配下にあり、日々諜報活動に専念している(20.12.14「中国のスパイ組織が白日の下に晒された」)。また公然とではないがサイバー攻撃の訓練も行われている。中国は長期戦略の中にアメリカへの攻撃時期について定めていない。アメリカに対してはまだ中国と言えども堂々と正面攻撃するには非力であり、先制攻撃は突然行われることが予想される(20.9.22「中国が日本に対する先制攻撃を示唆 」)。つまり宣戦布告なき第三次世界大戦が公にはここから始まる

  たまにしか報道では出てこないが、中国は世界制覇の手順を定めており、それを国営メディアで既に明らかにしている。それが「六場戦争論」(2013.7月)である(20.10.16「中国の急激な先鋭化は何を意味する? 」)国家が戦争予定を公的に発表するという前代未聞なことを中国はやってのけた。それは中国の自信と確信を示す以外の何ものでもない。それも習近平が指導者に就任してから1年ほどにして発表された。台湾(2020~2025)・ベトナム(2028~2030)・インド(2035~2040)・日本(尖閣諸島)(2040~2045)・外モンゴル併合(2045~2050)・ロシア(一部領土奪還)(2050~2060)と名指しされた各国は、当然反発するだろうが、今のところ荒唐無稽な話と考えているのか、表立った反応は出ていない。興味深いのはこの中にアメリカが入っていないことにある。恐らく1つずつ手に入れていく中で様子を見ながら、アメリカとの第三次世界大戦がいつ始まってもいいように備えているということなのであろう。その時には当然宣戦布告はない。ある日突然、ワシントン・ニューヨークなど大都市の機能が停止し、通信が不可能になる。問題はそのことによりアメリカが本当に戦闘能力を失うのかどうかであり、当然アメリカもその備えを進めているに違いない。そこでお互いの戦略の傍受(諜報)が重要になり、中国は米軍深くまでサイバー攻撃することによってアメリカの備えがどこまで進んでいるかを探ろうとしているのである。だが民間へのサイバー攻撃を試して、その実力を今磨きつつあるという段階であろう。


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