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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

地球温暖化と動物窒息死の問題(11.28・12.2追記)(4188文字)

2020-11-23
  これまで取り上げてきたつもりでいたが、地球温暖化について書いたことが無かったようである。それは【時事評論】が2020年の1月6日から開始されたこともあり、昨年グレタ・トゥーンベリによって巻き起こされた温暖化問題が、コロナ禍によってすっかり隠されてしまったことも大きな要因であった。他の項で温暖化問題を取り上げてきたことから、これについて書かなければならない必要がでてきたため、改めてこの問題を取り上げてみたい。そして人類が、実はこの問題よりももっと重大な動物窒息死問題に晒されていることをここで声を大にして主張したい。
 
  地球温暖化という問題は意外と最近になって認識されてきた問題である。筆者は環境問題を教えてきたが、この問題を論文のテーマにしたのは意外と遅かった(「地球温暖化対策に関する提言 ーバイオマスの炭化による炭酸ガスの永久固定・他ー」1998.4月)・(未公開論文:2013年3月/№296「大気の変化」・№297「海洋の変化」・2016年12月/№906「地球温暖化」・2019年3月/№207「メタンハイドレートの脅威」)。書くのが遅くなったのはこの問題が誰もが認める問題だと認識していたためであり、それを真っ向から否定したトランプが現れたことに刺激されたことにもよるだろう。私がまだ若かった当時は地球が寒冷化に向かっていると考えるのが常識的であった。1940年代から1970年代までは事実気温が低下していたからでもあった(後にこれは大気汚染による硫酸エアロゾルの増加によるものと推測された)。1970年代までは温暖化のデータや知識が無かったからでもあり、地球の軌道・自転・歳差運動、等々から考えると、寒冷化に理があったのである。
 
  地球の気温に影響する要素はかなりたくさんあり、離心率(太陽からの距離:10万年周期)・地球の自転軸の歳差運動(コマの振れの周期:25800年周期)・地軸の傾き(4万年周期/以上3つをミランコヴィッチサイクルと呼ぶ)・自転周期変動・公転軌道の形(真円か楕円か)・日射量変動・太陽活動変動(黒点が多いと活動活発:11年周期・22年周期・87年周期・210年周期等がある)、などがあり、それによって地表での雲の多少・雪表面の多少・氷河の多少、などが変化して太陽光による気温変化に影響を与える。現在最も気温に影響を与えているのは大気中の二酸化炭素濃度の上昇であり、これは以前には正確な観測データが無かったが、近年の南極氷床のボーリング調査から、長期的にみると1800年代中頃から急激な上昇が始まっていることが分かってきた。この時期は産業革命(18世紀後半)が起こった時期の直後であり、大量の石炭・石油の消費が始まったときから暫くして気温が上がり始めたことを傍証していると思われる。そして最新の観測から、2016年に二酸化炭素の推定経年平均濃度が温暖化の危険水準である400ppmを超えたことが分かったのである。2020年9月のデータによると、411.3ppm(0.04%)となっており、毎年2.2ppm増えていることになる。この濃度が100倍の4%になると動物は全て呼吸困難となり、動けなくなることで餓死すると言われる。だが誰もそのことを想定せず、温暖化による気温上昇にのみ気を取られているようである。
 
  では二酸化炭素濃度が100倍になる可能性はないのであろうか。過去の太古の地球の大気には二酸化炭素は10%ほどという研究がある。数値ははっきり分かってはいない。だが地球に石灰岩として存在するものが古代の大気を吸収して石灰質の殻として沈殿したものであることを考えると、如何に膨大な量の二酸化炭素が存在したかが推測できることは誰にも明瞭に分かるであろう。それを劇的に減らしたのは海水の中和化であり、海中生物であり、植物であったと言われるが、メタンハイドレートによる貯蔵系への移動についての知見はまだほとんど分かっていない。メタンハイドレート(メタンCH4が水により包まれたもの:CH4·5.75H2O)は、海底で生物の死骸がメタン菌により嫌気性分解されて生じたメタンが高圧化で水と反応してできるもので、常圧下ではすぐに分解してメタンと水になる。海底数百メートル以上の深海で生ずると言われ、海底生物が死骸となって降り積もった場所にはどこにでも存在すると考えられている。これが海水温上昇により一気に大気中に突沸すると、メタンが二酸化炭素に変化することで二酸化炭素濃度が一気に上昇する。それは突沸するメタンハイドレートの量次第であるが、正のフィードバック効果で現在でも二酸化炭素濃度の上昇率は級数的なものになっている。なおメタン自体の温室効果は二酸化炭素の40倍ほどであると言われていることを念頭におくべきであろう。
 
  ここで正のフィードバック効果について触れておこう。現在のところ二酸化炭素濃度の上昇は短期間でみれば直線的に増えているように見えるが、長期的にみると級数的に増えていることが分かる。それは正のフィードバック効果が表れている証拠である。気温が上がると氷河や氷床が減り、太陽光の反射率(アルベドと呼ぶ)が減り、地表面が温められることで気温がさらに上がる。これを正のフィードバック効果と呼ぶ。同じ効果は、山火事の多発・旱魃・乾燥化による砂漠や土漠の拡大・水田におけるメタン発生の活発化・海水温の上昇(二酸化炭素の溶解度が減る)・メタンハイドレートの臨界点到達、等にも表れる。特に恐ろしいのがメタンハイドレートの臨界点到達であり、海水温の上昇がこれをもたらす。そうなるとメタンハイドレートは海底や永久凍土下におとなしく保持されていることができなくなり、一気にガス化して突沸する。それは瞬間的に起こる現象であり、沸点に達した水が突沸するのと同じような現象である。
 
  メタンハイドレート(以下MHと略す)は地球の炭素循環における貯蔵系物質であり、石炭・石油と同じ化石燃料である。近年日本近海で大量の埋蔵量が確認され、日本では資源国になったと沸き立っているが、これをもし使いだしたらパンドラの箱を開けたと同じような大変なことになることは自明のことである。だがもっと恐ろしいことは、気温の上昇とともに浅海や永久凍土下でのMHが臨界に達して爆発的に突沸しているらしいということが分かってきたことである。その証拠の1つとして2億5000万年前のペルム紀に起きたメタンハイドレートの爆発的気化による大絶滅が挙げられる。2つめは8000年前にノルウェー沖で起きたメタンハイドレートの巨大崩壊であり、大量の二酸化酸素(メタンはすぐに分解して二酸化炭素となる)を生じさせ、その結果気温はたったの10年間で4℃も上昇したと言われる。3つめはここ10年ほどに起きたとみられるシベリアでの氷原や凍土に開いた巨大な穴である。幅30m・深さ50~70mに達するものもあり、このようなものが続々と発見されている。これは小規模なものなので、まだ二酸化炭素濃度や気温に影響を与えるほどではない。だがもし日本の東南海沖で巨大地震が起これば、大規模なMHの崩壊が考えられ、一気に地球規模の気候変動が惹き起こされる可能性が高い
 
  そして二酸化炭素濃度が前述したように4%程度に達すると、人間だけでなく動物全てが呼吸困難になり、少なくとも活動ができなくなって食糧生産ができなくなり、ほぼ絶滅する可能性がある。だが人間は急遽対応して生き残る人もあるかもしれない。あるいは地域的に生存が可能なところもあるかもしれない。アマゾンのような熱帯雨林は二酸化炭素吸収が促進されて酸素が豊富なため、生き残りを図るには好都合な場所となるかもしれない。いずれにしてもほとんどの人間は死滅する運命に遭遇するだろう。恐ろしいことに、このような重大な危機が明らかになっているにも拘らず、科学者や政治家はこのことをひた隠しにしている。科学者でこのことを最初に指摘したのはノーベル賞候補にもなった西澤潤一と上墅勛黃(いさお)であろう。共著のタイトルは『人類は80年で滅亡する』というストレートなものになっている。2000年の出版であるから、2080年までにその兆候が表れてくることを示唆している。またジャーナリストの櫻井よしこは政治のことだけでなく、このような問題にも関心を振り向けており、週刊誌でこのことを取り上げたことがある。だがほとんどの一般市民は温暖化問題は知っていても、窒息死問題は知らないのである。それはNHKが取り上げていないことも大きく関係しているだろう。
 
  人間は不確かなこと、まだ経験したことのないことに対して無警戒である。コロナ禍でさえ、ペスト流行やアメリカ風邪(スペイン風邪と呼ばれている)、そして2002年のSARS、2012年のMARSの経験を忘れていた。特にアメリカはこれを軽く見たために今最大の被害を被っている。だがウイルスの方がまだ対処はしやすい。空気中の酸素が維持されていたとしても、二酸化炭素が数%に達したら、人間のヘモグロビンの酸素交換機能が有効に働かなくなり、10%以上の高濃度二酸化炭素環境下では瞬間的に意識を失うとも言われる。その恐ろしさを人類はこれから50年以上先に味わうことになるであろう。これに対処する方法を筆者も知らない。その前にコロナ禍が起きて世界の交通が崩壊していることは救いの前兆かもしれない。さらに第三次世界大戦が起きて文明が破壊されれば、二酸化炭素の増加が一時的にでも低下するかもしれず、そのことに期待するしかないのかもしれない。全て人類が初めて直面する生存の危機であり、運命に全てを委ねるしかないだろう(11.7「地球温暖化と動物窒息死の問題」・「運命論」参照)。その上で、未来世界が開けることを願って、今と言う時に未来への備えをしておくべきだと考える。それは未来世界のヴィジョンを明確にしておくことである
 
参照:ヤフー掲載 AFP作成グラフ:https://news.yahoo.co.jp/articles/d296b53898c3546aa0e93131e1e41812ff4c080a/images/000

 
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