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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

人口爆発の脅威

2021-10-29
  世界の人口稲作の開始(1万年前) と産業革命(18世紀半ばー19世紀) 以来、増加の速度を速めたと言われる。産業革命の場合、人力や動物力そして水力から、化石燃料を使った動力(外燃機関・内燃機関:19世紀末)へと動力源が変わったことで、産業の規模が拡大し、食糧が増産できたことによる。さらに世界大戦(1939-1945年)が終わる頃に爆薬の生産が化成肥料や農薬の生産に切り替わったことで、農業に「緑の革命」(1940ー1960年代)が起こったことも相乗効果した。そして現在は79億人を超え、2050の予想では、100億人に達するという。だがその予想は多分に甘いと思われ、最悪な状況では2040年にこの値になる可能性もあるという。他の大型生物でこれほどに増殖をした生物というものはないことから、聖書にあるようにまさに「産めよ増えよ、地に満ちよ」という神の意思が実現されたことになる。だがそれが最終的には悲劇をもたらすことは自明の理であり、2015年までは貧困率や飢餓人口は減り続けていたが、現在は難民の増加も併せて増加傾向にあり、飢餓人口は6億9000万人と推定されている。2050年には農地の劣化と水資源の不足、および飢饉の常態化や天候異変・自然災害により、食糧供給量が現在以上に伸びる可能性は小さく、その逆に現在のままでいくと食糧必要量は1.6倍に増えるという。そこに大きな飢餓の発生の可能性が見えてくる。本項では人口爆発に対する対処と未来世界に於ける人口抑制について述べてみたい。

  人類のうち、貧困国では避妊の余裕のない性活動により人口が増加傾向にあり、逆に先進国では文明の成熟により人口減少(少子高齢化)が起こりつつある。日本はその最先端を行っており、衰退期に入ったとも言われる。中国は一人っ子政策という人為的制御で人口増を食い止めたが、それは早期の少子高齢化をもたらし、競争下にある中での国力衰退は危機的であるとして人口増に舵を切った(6.11「中国の人口政策は妥当か? 」)。移民に経済活動を依存している西欧はまだそこまでの危機には至っていないが、白人中心だった人口構成が移民に取って代わられるという恐怖におののいている。「軒先貸して母屋取られる」の例えがそのまま当てはまる事例と言えるであろう。移民を排除しなかった米国は黒人系大統領を誕生させたが、結局は国論分断を副作用として生みだした。どこにも共通しているのはストレスの増大が起こっているということにある(20.11.30「ストレス論」)

  興味深い統計がある。江戸時代は250年間に亘り安定を築いていたが、その間人口はほとんど増えなかったのである。江戸は大いに栄えて庶民文化を生み出したが、それでも日本全体の人口は増えていない。その理由は自然による調節機能(飢饉・感染症)が働いたからだと思われる。日本が人口爆発を起こしたのは明治維新以後であり、これは未来世界にとって非常に興味深いことであり、ぜひ江戸時代の真似をしたいものである(8.8「江戸文化の奥深さとその背景 」・8.15「江戸時代の安定の秘訣1・通貨 」)。そして現代では、人類という生物種の本能からかもしれないが、男女ともに結婚に対する興味が薄れ、妊娠を回避する傾向が増している。27日にNHKが放送した「BS世界のドキュメンタリー」の「出産しない女たち」という番組では、少女時代から一度も子どもを欲しいと思ったことがない女性がいることを知った。これは本能に逆らう事象であり、ホルモン異常によるものなのか、本人の思考がそのように進化(?)したのか不明である。そのような女性が多くなっていることは確かなようであるが、登場した女性のほとんどが哲学者・作家・デザイナーなど特殊な職業に就くハイクラスな人ばかりであり、女性の全体を代表しているとは言えない偏向番組であった。語っている内容も自己中心的で、他者に責任をなすりつける傾向があり、独善的であった。スペインで制作されたものであるため、個人主義を基底に持つ思想であろう。
  
  だが別の視点で観ると、人類は生存の危機を感じて子を増やそうとする動物的本能と、逆に子を減らして生存確率を高めようとする知的本能の両方が出てきているのかもしれない、とも考えた。そうだとすれば、人間の一部に思考の進化が見られることを意味するかもしれない。人間の思考の速度増大は産業革命以来著しく、IT技術が出てきてからは一般大衆もその技術により訓練されて、思考速度や思考内容に大きな変化が見られる。それはやがて人間の脳に知的進化をもたらすかもしれない。原始脳と呼ばれる生理反応や生存に関わる部分が退縮し、知的活動を司る大脳、特に前頭葉や側頭葉がより拡大して思考そのものが進化する可能性は大きいと思われる(4.8「ホモサピエンスからネオサピエンスへの進化 」)。その進化が人口爆発の速度に追いつけば良いのだが、残念ながらここ10年ほどの間にその進化を期待する方が無理というものだろう。

  人口増加がゆっくりであっても急激であっても、地球環境容量の観点からすれば同じである。だがストレスの増大という点では急激であればあるほど、大きいと言わねばならない。そこにこの問題の深刻さがある。人口爆発が脅威であるのは、食糧や水の問題という個別問題ではなく、人類全体がストレス増大によって戦争に走るリスクが極めて大きくなっていることにある。ノムが第三次世界大戦は避けられないと断じているのは、これが最大の理由だからである。その点では過去の戦争の原因と重なるところもあれば、全く新しい状況に遭遇していることによる部分もある。いずれにしても明らかに人類は生存可能人数を超えることは出来ないだろう。ノムは35年前にその人数をおよそ100億人と考えた。ということは2050年には限界に達することを意味する。だがノムはそれ以前に人間界に生ずるストレスによって、人間は破滅的な核戦争を始めるだろうと予測した。そしてその予測年を2020年頃だと推定した。幸いなことにまだ核戦争は勃発していない。だが朝鮮戦争(1950-1953年)時には、米軍総指揮官の立場にあったダグラス・マッカーサーが本気で核兵器使用を考えた。その頃日本の米軍基地である嘉手納には核兵器が持ち込まれていたそうだ。トルーマン大統領も最初同じ考えであったという。だがソ連を巻き込むことを恐れたトルーマンは、マッカーサーを解任することでその選択を排除した。キューバ危機の最中の1962年10月27日、当時のソ連の潜水艦による核魚雷発射という事態が起こる可能性が極めて強かったという事例がある。それを救ったのはヴァシーリイ・アルピーホフという副艦長の強い反対の主張であった。1995年1月25日には、時のロシア大統領ボリス・エリツィンがアメリカから核弾頭が発射されたと報告を受けた際に、反撃しないと決断したことでこの誤報による核戦争勃発から免れることができたという。現在では米中による南シナ海・台湾海峡・尖閣周辺での偶発的戦闘から核ミサイルの応酬になる可能性が大きい。戦争は始まれば止めどが無くなるという制御不能状況を作り出してしまう。それが人口爆発の本当の意味での最大の脅威なのである。

  では人口爆発に我々人類はどう対処したら良いのであろうか。ノムは自然の調整力に任せるのが最善であると考える。ノムの予想した通り、2020年(実際には中国では2019年8月頃からと思われる)に人類はコロナ禍に見舞われた。筆者の予想外の災厄が起こったのである。そのためもあって人的災厄である第三次世界大戦は延期されたと考える。そして本来このコロナ禍は自然界の人口調整機能であるはずであった。だが人類はこれを撲滅しようと躍起になったことで、全世界でも520万人の死者で済んでいる。ワクチンなどによる治療法が無ければもっと死者は多かっただろう。だがこれでは人口調整機能と評価するには数字が小さすぎる。前項でも触れたように、飢餓状況にある人々が7億人もいるというが、そうした人々への援助が無ければもっと死者は多くなるだろう。自然調節機能は、1.感染症などの病気の蔓延によるもの・2.飢饉など自然異変による飢餓によるもの・3.戦争など人間が起こす人為的なもの、の3つに大別されると考えられる(5.3「自然の摂理 」)。前者の2つの要因は現在進行形であり、3番目の人為的なものはそれほど大きな要因にはなっていない。すなわち人間はまだぎりぎりのところでこれを食い止めているのである。だがその限界に達した時には、世界的な核戦争による死者は数千万人に上ると推定され、その後に地球を襲う寒冷化(核の冬)などによる飢餓や凍死などでの被害は数億から数十億人に上ると思われる。さらに最悪の事態を考えれば、二酸化炭素の濃度上昇によって3%に達したならば、殆どの人が窒息死するであろう(20.11.23「地球温暖化と動物窒息死の問題」)。この人災をも自然調節機能に含めれば、人間がやらなければならないのは戦争の準備ではなく、戦後の寒冷化や食糧難に備えることではないだろうか。

  最後に未来世界に於ける人口抑制について述べたい。それには、1.出産制限・2.独身の奨励・3.養子縁組の奨励・4.避妊手術の奨励・5.過度の医療の排除、という方法が考えられる。1.出産制限の手法は中国が試みたものであり、非常に有効である。夫婦の間では子どもは2人に制限されるであろう。2.の独身の奨励は既に現代に自然に発生している現象であり、特に奨励は必要ないかもしれない。3.養子縁組の奨励は、子どものない人だけでなく、多くの子どもを欲しい人の願いを補足するだろう。また貧しい家庭の子どもを救済することにも繋がる。4.避妊手術の奨励は、子どもが欲しいと思わない人に勧められるものである。5.過度の医療の排除は別項にも述べたように、定年後の退職者には特別な延命治療を施さず、安楽死の選択も可能にする(20.11.8「安楽死をどう考えるか」・10.26「未来世界の医療 」)。それは引いては人間の寿命の短縮化をもたらすだろう(4.10「人間の寿命 」)。そしてそれは人口の激減に繋がる。未来世界の人々がこれらの施策を素直に受け入れるためには、ノム思想の普及が肝要になる(20.9.7「ノム思想(ノアイズム)とは何か? 」)。ノム思想では人間の欲による無理な延命治療や過度な繁栄を許さないからである。そしてそれを人間哲学として学ぶことで、より自然な形で運命に自分を委ねるようになるだろう(20.11.7「運命論」)


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