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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

*002「第三次世界大戦の可能性」(5402字)

(註)参照は本HPで公開した論文の場合は(*〇〇〇「・・・」)の形で番号とタイトル名を示します。現在執筆を続けている本論文の場合は(№〇〇〇「・・・」)の形で、雑論文の場合は(記〇〇〇「・・・」)の形で示します。ただし本HPの公開論文以外はまだ公開できません
 
*002.「第三次世界大戦の可能性」(2013.1.25起案・2020.11.3起筆・完/19.11.6・20.9.24追記:5402文字)   (完)
 
  核戦争が避けられないことはこれまでの数々の論の中で何度も指摘してきました。ここではその要点だけをまとめてみたいと思います。関連する未公開論文を以下に示しますが、これらは参照はできません(№067「戦争論」・№110「地球の水と寒冷化、そして最終戦争」・№191「生物大絶滅にみる時間資源の喪失」・№216「ヒトと国家の自己防衛本能」・№248「人の本能」・№289「囚人のジレンマと第三次世界大戦」・№337「社会ストレスと戦争」・№347「生存の仕組み」・№376「世界史における戦争とその未来」・№642「核兵器」・№735「第三次世界大戦への備え」№831「最終戦争(第三次世界大戦)の経緯」

  核戦争への道程と切っ掛けには以下のような要因があると考えます。①地球環境の劣化によるストレス増大・②人口の増大と資源の枯渇によるストレスの増大・③時間資源の喪失・④人の生存本能・⑤近代兵器の瞬時性、です。簡単にこれらについて説明します。

  ①地球環境の劣化によるストレス増大:科学技術の不完全さや利潤の追求により、人類は一時期公害をもたらし、さらに現代では環境汚染をもたらしています。それにより生存条件としての食糧や水の確保が十分ではなくなってきており、温暖化による異常気象が世界各地に大きな被害をもたらしています。これによって富民と貧民の格差が増大し、世界的にデモや騒乱、叛乱が続出し、政治的にも経済的にも不安定になるでしょう(№391「環境論」・№404「環境破壊の事例」)

  ②人口の増大と資源の枯渇によるストレスの増大:人口は1世代に相当する30年間で40%も増大し、まさに人口爆発を起こしており、それに伴って資源・エネルギーが不足しつつあります。その獲得を巡って各国で熾烈な争いが起こり、それは局地的なものから一気に全面戦争へと発展する危険を孕(はら)んでおり、それを避けることは状況論的に不可能でしょう(№021「状況理論(因果律)」・№125「資源の枯渇問題」・№602「人口爆発」

  ③時間資源の喪失:人間は冷静な判断を下す時間的余裕も、対処する時間的余裕も失っており、全てはコンピューターの判断に委ねられてしまうため、瞬時に誤った判断が下されて実行されてしまう危険を抱えています(№035「人工知能(AI)」・№191「生物大絶滅にみる時間資源の喪失」・№289「囚人のジレンマと第三次世界大戦」・№788「未来のコンピューター」)

  ④人の生存本能:人はどんなに平和主義的思想を持っていたとしても、危機に当たっては生存本能を優先させるために、その思想とは異なった異常な行動をします。核戦争はどちらが先にボタンを押すかの競争となり、カタストロフィー的に人類は崩壊するでしょう(№248「人の本能」・№253「カタストロフィーの事例と前兆」・№289「囚人のジレンマと第三次世界大戦」

  ⑤近代兵器の瞬時性:過去の戦争には有り得なかった核兵器の破壊力とその瞬時効果は圧倒的なものであり、現代のNTT火薬1メガトン級原爆は広島に落とされた15キロトン相当の破壊力の66倍の破壊力を持っており、瞬時に東京を消滅させるでしょう。多弾頭兵器が使用されれば、1発のICBMで3~6基のキロトン級核弾頭によって大都市の広範囲な部分やいくつかの都市を同時に消滅させることができると思われます。その飛翔時間は5~60分程度であるとされ、対応が間に合わなくなる恐れから誤認識・誤作動・誤データなどによって恐怖心から一方的に発射する可能性が非常に高く、一旦どちらかから発射されれば、相互確証破壊の原則から全ての核兵器が発射される可能性も高いのです。核戦争は事実上1時間以内に終了するのです(№642「核兵器」)
 
  以上の議論からわかるように、現在はまだ世界にそれほどの緊張が強いられている状況にはないように見えますが、その兆候は既に見られることから、偶発的核戦争は今後いつ起こってもおかしくないように思われます。筆者は2020年頃になんらかの大変革が起こると35年近く前から予想してきました(№369「予言」)。それは人口曲線を基にした漠然とした直観によるものでしたが、現在の状況を考えると、かなり現実性が増していると実感しています。
 
  ではこの論の最後に、核戦争が起こった場合の、その後について予想してみたいと思います(№188「未来社会の実現の条件」)。核戦争の事前予想シナリオはほとんど不可能ですが、それでも有り得るシナリオを想定してみます。某国がミサイルを発射し、それを探知した予想被害国が迎撃してミサイルを破壊する。世界は一触即発状況となり、予想外の小さな切っ掛けが大袈裟な反撃を呼び、それが拡大して一気に核戦争へと発展することが考えられます。そのような状況では各国ともありとあらゆる有効な核ミサイルを発射し、自国の被害を最小にする努力を惜しまないでしょう。その結果世界は1日にして放射能を含んだ暗雲に覆われ、それは1週間で世界を覆い尽くすと言われています。日射は激減し、「核の冬」の到来を告げるでしょう。だが予想するよりも意外に早く暗雲は晴れるかもしれません。大気中の微細な粒子が雨を呼び、大気を洗浄するからです。そしてその結果、地表はどこも放射性物質による放射線が異常に高くなるでしょう。しかしそれは人々が思っているほど恐れることではありません。生物にとってはそれほど致命的なことではないからです(№034「放射線問題における確率論」・№284「ホルミシス効果」)。それよりも、大都市が消滅し、政治機能や都市機能が麻痺することにより、人々の間にパニックが生じることが最初の人口減少の徴候となるでしょう。人々は争って日用品や食料品を買い漁り、1日にしてスーパーや商店の商品は空っぽになります。各国が開発した電磁パルス核兵器が通信機能を麻痺させるため、物流はトラックなどの車両が使えなくなるためほとんど停止し、商品の供給は停滞します。それは数ヶ月に及ぶかもしれません。そのことによって大都市内ではすぐに飢餓が発生し、大都市周辺の破壊されなかった中都市では略奪や強盗、そして強姦が横行するでしょう。各都市や市町村は自己防衛のために自警団を組織し、他の地域からの侵入者を阻止するかもしれません。当初は人々は人道的に振る舞うかもしれませんが、物資停滞による飢餓が発生した場合には今度は各地域ごとの戦闘状態が発生するかもしれません(日本では少ないかもしれませんが・・・)。特に石油関連の流通の停滞は電磁攻撃でなくても自動車の運行を不可能にし、船舶・航空機でさえ運行できなくなるでしょう。核兵器大国は戦略として仮想敵国の都市破壊だけでなく、通信と物流の破壊をするのが常套手段だからです。北朝鮮もそのことを可能にする実験をつい先ごろ行いました。非核兵器国である日本もアメリカの同盟国として標的となっており、東京の他10都市ほどは消滅しているでしょう。原発だけでなく、黒四などの大規模水力発電所のダムも標的となっているといわれます。おそらく数十年間は新規の発電所の建設は不可能であることから、大部分の家庭や工場は電気が途絶え、生産はほとんど不可能になります。農地に対する直接的被害は小さいと思われますが、放射能を被った作物をも人々は争って買い求め、また略奪するようになるため農家も大きな被害を被ることになるでしょう。人々は闇夜に慣れるしかなく、必然的に新生児が増えることになります。ですがそれが人口の回復に寄与するかどうかは不明です。核攻撃による一時的な人口減少とその後の飢餓による人口減少がどの位のものなのか推算する根拠を持ちませんが、各国の都市への人口の集中を考えると全世界で人口は3/5(60%)に減ることが予想されます。都市人口の世界平均は58%以上(日本は92.5%)だそうですから、大都市だけが攻撃されたとしてもその被害は甚大であり、問題は政府が消滅してしまう恐れが大きいことです。日本では皇室の喪失が最大の懸念となります(記262「古代日本人と天皇家」)

  戦争や戦闘による収奪が限界に達したころ、人々は自分で食料生産に励むようになるでしょう。テレビで放映されたアメリカドラマの「大草原の小さな家(原題「Little House」)に「サバイバル(原題「Survival」)というものがありました(№699「サバイバル原理」)。突然の大雪が三週間も続いたことで、旅行に出ていたインガルス(Ingalls)一家は用意していた食べ物を食べつくし、お父さんのチャールズ・インガルスは食べ物を求めて銃を持って狩りに出かけます。幸い鹿を射止めたのですが、とても重くて途中で失ってしまい、インディアンに救われるというストーリーです。果たして銃を持たない日本人はどうやって非常時の食料を調達するのでしょうか。とても狩りなどはできないので庭先などで野菜を育てるしか手はないでしょう。それも丁度いい季節とはかぎりませんから、多くの人は飢え死にすることになります。最悪の場合は90%以上が餓死し、人肉食やペット食によって一部の人は生き残るかもしれません(記432「古代からあった人肉食」。それは状況次第としか言いようがありません(№021「状況理論」)

  生き残った人々は失われた文明社会の中で生きなければなりません。もしかしたら水を得るのも困難かもしれず、ほとんどの電化製品は使えないでしょうから、言ってみれば原始時代に戻ったのと同様な生活を強いられます。ですが衣服や家屋が文明のもたらした恵みとして残っていればまだ幸いです。そうこうして生き残った人は次第に原始生活に慣れ、あらゆる工夫をして快適さを確保しようとするでしょう。まだ脳の中にはついちょっと前までの文明技術の知識が残っているため、それを総動員して生産に挑むようになるでしょう。それにどの位の期間が必要なのかも想像がつきません。数年の時は最低でも必要だと思われます。そして被害を免れた文明遺産をなんとか生かして少しずつ生産が始まるでしょう。それはまず道具の生産から始まると思われます。農耕生活に必要なクワやシャベルなどがそれに当たります。電気が無ければ鉄材を炭で溶かして鉄の塊を作り、それを鍛造して作るということになるでしょう。いずれにしても想像するより短期間に人類は文明復興に成功するかもしれません。何しろ土台になる技術や知識はまだ頭脳の中に残っているからです。ですがもし復興が長期に及べばその技術や知識を持っている人も死に絶え、文書の形でしか残らないことになります。そうなるとその復活には多少余計な時間が必要でしょう。

  筆者は最低限の復興(給水インフラ・給電インフラ)に数十年は掛かると想像しています。そしてそこからある程度の余裕が出来てきたころ、人々は政治や経済のシステムの見直しを始めるでしょう。そして戦争を引き起こした原因が、人間の競争にあったことに思い当たると思います。国家間の競争・経済の競争・我欲の競争などです。それらが人間の欲から生じていたことにも気が付くでしょう。そしてそれらを克服する方法はないかと探し求めることになるでしょう。もしそのような状況下で筆者の説くノム思想というものがあったことを見出せば、もしそれが残っていたとすればという仮定の下にですが、それを改めて学び始めるでしょう。あるいはノム思想が失われていたとしても、その理念が本HPである程度広まっていれば、その理念の概要を知っている人が改めて似たような思想を創り出すでしょう。そして人々は子供らにその理念を教え、社会に貢献する人になるように育てるでしょう(№190「ノム思想」)

  時間が経つに従って、人々は生存闘争から協力による文明復興へと転換を図り、さらにノム思想に則って次世代に新しい社会を築くように期待するでしょう。少なくとも1世代・30年を過ぎれば社会全体に競争ではなく協調の精神が定着し、それがさらに進展して共存の思想に繋がっていくと思われます。ノム思想では科学的な根拠を持った思想の展開をしているため、それはすんなり人々の間に浸透していくでしょう。そして徐々に指導者に人格と人徳の優れた人を選ぶようになっていくと思われます。ノム思想が定着するには3世代を経なければならないと考えていますが、その頃には人間の知能に変化が見られるのではないでしょうか。動物的な生存本能や生殖本能よりも、人間的な知的本能(大脳本能と呼んでいます)がより強くなり、脳の構造にも変化がみられるようになるには数百年は必要だろうと思われます(№078「脳の仕組みと働き」・№248「人の本能」・№484「脳の進化」)。そしてその時に明らかに前時代とは異なる様相を持つ新人類が誕生することになるでしょう。動物では数十年で環境に適応した進化が見られた事例があることから、人類の場合にはもっと早くその進化が進む可能性を否定できません。その人類を筆者はネオサピエンスと名付けました(№819「新人類(ネオサピエンス)の登場」)。これが学問的に適切かどうかは分かりませんので、その時が来たら学者が最適な名前を付けてくれるでしょう。ホモサピエンスからネオサピエンスへの進化が数百年で起こったとすればそれは奇跡的なことですが、あり得ない事ではありません。都会に暮らす動物には数十年で進化したものがあるそうですから。人類が経験した数百年間の文明の進展と人々の容貌の変化を考えれば、それは人間にだけ起こり得る奇跡なのかもしれません。(完)
 
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