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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2024】

【時事短評】AI規制の状況論

2024-04-26
  AIについてはその可能性が無限であり、文明を根底から変える可能性すら秘めている(22.9.23「AIは思考が可能か?」・23.10.1「AIは感情と意思を持てるか?」)。特に生成AIが誕生してからは、その応用は著しく、良い面にも悪い面にも使われるようになった(23.6.20「現代の生成AIは有害・改善の方途はあるか?」)予想外の弊害も多々発生しており、主として金儲けを目的とした企業が開発したアプリなどに使われている。悪意がはっきりしているものもあれば、善意から開発したアプリが思わぬ被害を人々に与えている場合もある。AIがもたらすこうした影響を状況論から判断したいと考えた。

  24日には国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが公表した世界の人権状況をまとめた年次報告書で、人工知能(AI)の急激な発展が、法の支配をより速く崩壊させる恐れがあると警告。「規制の遅れが続けば人権侵害を助長させる危険性がある」と強調し、各国政府に強固な規制を整備するよう求めた。報告書は、民族対立にフェイスブックのアルゴリズム(計算手法)が使用されたり、少数派の抑圧に顔認証技術が乱用されたりしていると指摘した。これをいち早く察知して、別な意味で早々に規制を掛けたのが中国である。中国では人権などという概念はなく、国家体制の維持が最大の目的であるため、AIが中共政権が主張していることを否定してしまうことを恐れたのである。つまり人権状況の崩壊を恐れたのではなく、情報が客観的に周知されることで、中共政権が主張する欺瞞が暴かれてしまうことを恐れたのである。

  中国はAIがもたらす影響を明確に予想していた。それに比べて西側諸国はAIの善なる部分だけを見て、商売になると考えたその差は歴然としている技術が革新的変化を遂げる時、世界は一変する状況がまるで変わることにより、それまでの概念が役立たなくなる。現代ではもろもろの分野でそれが起きており、①電脳(コンピューター)の誕生・②核兵器の誕生・③情報通信の変革(インターネットの登場)・➃AIの誕生・⑤遺伝子工学の誕生などがそれに相当する。①のコンピューターの誕生は技術を革新的に変化させた。リレーが回路に取って代わられたからである。②の核兵器の誕生は戦争の概念を変えた。既にそれはアメリカによって使われ、日本を敗戦に導いた。単に早めたということではなく、戦争の概念が変わったのである。それは間もなく起こるだろうが、人類の文明を崩壊させるだろう(22.6.30「人類史から観た第三次世界大戦の必然性」・2.27「文明の同時崩壊」)③の情報通信の変革は、市民に力を与えることになった。SNSがそれを象徴している(21.3.29「未来世界の四権分立」)➃のAIの誕生はチャットGPTの登場でその本質が明らかになった。もはや人間はこれを制御できないのかもしれない。⑤の遺伝子工学の誕生は、生命観を変えた。遺伝子改変技術が登場したことで、人間は不老不死を求めてさらなる挑戦を続けるだろう。

  AIを制御できるかどうかは、世界の体制で決まる(21.1.7「制御思想」・23.5.29「中国の政治体制」)。今日のように、各国が主権を持つ状態では、その進歩を止めることもできなくなるし、悪用を止めることもできない(20.12.26「主権論」)。たとえ国連が規制を決めたとしても、どの国もそれを守らないだろう。もし守れば、それだけ技術の進展が遅れてしまうからである。これは核兵器でも同様なことが言える。一部の国の間で「核拡散防止条約」が取り決められたが、イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮など、次から次へと核兵器は拡散している。韓国も核装備の議論があり、日本にもそれは波及しつつある。AIだけが制御可能であるとは誰も考えない。状況というものが変化すれば、それに応じた新たな状況が生まれるからである(「状況理論」)

  1950年代にAIが誕生して以来、AIを制御できるかどうかの議論が熱く語られてきた(22.11.3「AIの人工増殖」)。だが今もって、それに明確な解答は出ていない。規制が破るためにあるのだとすれば、AI規制も破られる運命にある。これを解決するには、ただ1つの方法しかない。世界を統一することである。世界が統一されれば、法は有効なものになるだろう。違反者は厳しく罰せられ、場合によっては人間界から追放されることになる。誰もそうしたことになることを望まないことから、規制はその段階で初めて有効となる。だが現在の状況では、世界を統一することは不可能である。ということは規制にしても法にしても、AIを制御することは不可能だということになる。今後の成り行きを見守りたいが、ノムとしては規制は不可能だという結論以外のものを見出すことはできない

(4.24起案・起筆・4.25終筆・4.26掲載)


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