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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

AIの人工増殖

2022-11-03
  現代の技術では、人間の脳の記憶や思考パターンは子孫に受け継がれない(20.8.17「人間とAIの知能における比較とその役割」)。人間に定められた死の宿命は、個人の脳の継承を許していない。それに比べて、AIは人間による人工増殖が可能である(21.1.6「私のAI」)。同程度の能力を持つ多数のAIに、特定のAIのデータの蓄積とその思考パターンをコピーすることができる。もしAIに知能が生じていたとすれば、その能力の継承性が人間界全体の能力を必ずや追い越すであろう(9.23「AIは思考が可能か?」)。こうした視点から、AIの能力を改めて考え直してみたい。

  たとえば7月2日に「AIによる世界統計」を提案したが、現在は独裁国家や全体主義国家などで情報が操作されていることから、客観的なデータを得ることは極めて難しい(7.2「AIによる世界統計」)。だがAIは統計指標を国家が発表したものに依らず、それと関連する項目から推定して修正することが可能になるだろう。具体的な事例を示すと、中国が高度成長を遂げていた2014年頃、一時的に経済に変調を来したことがあった。だが中国政府発表のGDP成長率にはその翳りが見られなかった。だが専門家の一人が、貨物輸送の減少を別な統計から検証し、それによって経済減速を傍証したことがある。AIは国家の全ての統計を掌握していることから、一部に不正な改竄があった場合には、その異常性を指摘できるであろう(20.12.15「AIによる歴史検証」)

  また現在はGDPが経済発展の指標のようになっているが、GDPには国民の満足度などがふくまれておらず、近年になって指標としては適していないとする専門家の意見が出てきている。AIはそうした意味でも全ての統計を把握しているため、GDPと国家の発展の相関性について科学的検証を行うことができるだろう。そうすれば近未来のうちに、AIによって国家の発展を示すのに最適な指標が提示されると思われる。

  そして重要なことは、特定の国家がそうしたAIによる新たな指標を作り出すという「知」の寡占化が進むのではなく、世界各国に人工的に増殖された同じデータ・同じ論理解析を行うAIが広まることにより、「知」の寡占化・独占化が防げることにある。人間で言えば、天才がある国にいたとしても、その天才と同じ能力を持つ天才が全世界に存在するということに例えられるだろう。勿論人間ではそうした知能クローンはまだ不可能となっており、今後を考えても原理的にそれは不可能であろうと思われる。現在でも人間のクローンは既に誕生しているとされるが、それは能力という点では最初から学び直さなければならない存在であり、天才と同じ能力を持つことは考えられないからである。

  こうしたことから、AIの人工増殖という考え方は、「知的資産」の世界的流布に繋がると思われる。未来世界では現状の世界の貧富の差、知的財産の格差を継承せざるを得ない部分があるが、それを如何にしてゆっくりと焦らず、世界的に均一化していくか、ということを考える。その手法として、資本主義の廃止・連邦による知的財産支援・各国間における知的財産の譲渡・支援、等によって均一化を図るが、各国に性能の似たようなAIを人工的に増殖(人工生産)させて配布することで、格差の解消により速く取り組むことが出来るようになるだろう(20.11.7「AIに期待する」・21.2.28「技術進歩における先進国・後進国のメリット・デメリット」・「中国の知的財産略取の手法」)






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