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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2023】

結婚制度

2023-08-18
  この項も2023年4月29日に起案されたものであるが、人間に至る一連のテーマの中に前項で取り上げたので、ここに入れることにした。なお、似たようなテーマとして「夫婦の絆と人間界の結婚制度」を書いている(23.5.28「夫婦の絆と人間界の結婚制度」) 

  結婚制度は人間界の他の社会制度と同様、人間の発明品であった。それがいつ頃から始まったのかについては確たる証拠はない。だが人間が集落を作るようになってから、まもなく誕生した暗黙の了解であったろう。もし結婚制度がないと、人間は12歳程度から思春期に入るため、動物で言えば発情期・繁殖期に入ることになり、あちこちで親の真似をして兄妹間などで性交の真似事が始まり、中には子が産まれる事態も起こっただろう(22.1.20「性交同意年齢引き上げ」)。これは生物が近親交配を嫌う本能に反し、性的乱れも起こり、ましてや家族が増えすぎて食べ物に窮するだろう。そこで人間は、集落の長(おさ)を中心に規律を作ることにした。成人式(集落・部族によって異なるがおよそ15歳)を迎えるまでは、性の悪戯はご法度になった。そして成人になっても、長が認めない男女の関係は、疎まれることになっただろう。ここから結婚制度というものが具体的に法なりによって規定されるようになった。

  そこに興味深い事柄が発生した。人間界にのみ避妊行動が発生したのである。動物は繁殖を目的とした交尾を行うため、避妊はあり得ない話であるが、人間の場合は、社会的に認められた男女の性交であっても、無用な人口増加を防ぐために避妊が強いられることになった。といっても、古代からつい100年ほど前までは、食料の豊富な農村部などでは、避妊無しで子を次々に産むことは珍しくなく、最大で15人位、普通でも5人以上の子を産んだ。そして多くは病気などのために、夭逝したのである(21.5.22「病気と介護」)。人間は多産を選択したが、社会制度の中で少数産に移行せざるを得なくなった。昔の避妊方法は恐らく体外射精という方法を取ったと思われるが、これは100%確実ではなく、失敗から懐妊してしまうこともあった。そこで懐胎後の堕胎(中絶)方法としては妊婦が高い所から飛び降りる方法が用いられた。当然妊婦の命の危険を伴った。大昔は女性は出産・子育てが終わると亡くなるのが普通であったという。

  そもそも結婚制度が生まれた理由には大きく2つある。①人口増大の抑制・②性欲の解消、である。だが現代では、貧困国ほど人口増大が起きているという矛盾があり、国家は個人の生殖活動を制御できていない中国はそれを歴史上初めて「一人っ子政策」で行い、かなり成功を収めた。つまり法的規制によりある程度は人口制御は可能だということを示した。一方、婚外子や登録外子が大きな問題になっている。だが現代の競争時代にあって、人口減は国家衰退を意味するため、中国は焦って「三人っ子政策」に切り替え始めたようだ。ノムの目からみると、それはせっかくのこれまでの努力を無にするもののように見える。日本も少子高齢化で悩んでいるが、未来視点からすると、これら人口減少国は未来のお手本となるだろう。

  性欲の解消という点では、結婚制度は大きな矛盾を抱えているが、今なお続いている。家族制度というものが、社会を支える基盤だという意識が強いからであろう。だが男の性欲は女とは異なり、より頻繁で衝動的であるため、浮気というものがつきまとう(23.5.30「人間の浮気の社会学と生理学」)。妻が出産・病気・高齢化などで性生活ができないと、男はそのはけ口を浮気に求める。その解消のために昔は社会的に「赤線地帯」というような売春制度があったが、今日では人権主義の台頭から多くの国でこれは廃止された。だがそれによって多くの性的不満から生じると思われる事件が多発している(20.8.21「政府高官や有名人の性的不祥事」)。未来世界ではこれに代わる社会制度が必要になるだろう。
  
  現代においては常識外れのことがしばしば起こっており、男親が自分の娘を犯す・親戚の叔父が他家の子女を犯す・兄が妹を犯す、という類の事件(?!) が起きている。特にインドでは女性への蔑視がつよいため、強姦を含めて多くの事件が起きている。イスラム系は男の性欲を抑えると称して女に頭巾などを強要しているが、それは逆に男を刺激することになるだろうが、強姦などの事件はほとんど聞かない。実態を知らないだけなのかもしれない。2018年にはイギリスで、6歳の女の子が小学生の男の子に強姦されたが、男の子に対するケアはあったものの、被害者の女の子に対するケアはなかったため、親が司法に訴え出た。10歳以下の性犯罪は問責されないという。イギリスでは2017年に学校内で起きた性的暴行容疑で、加害者と被害者が共に18歳未満だったものは、合計593件に上った。この中には強姦容疑71件が含まれる。これらの容疑のうち、203件の暴行は、被害者の年齢が13歳未満だった。2022年8月には日本のベビーシッター男性(31)が20人の5歳から11歳の男の子20人に性的な暴行を繰り返したという事件が起きている。もはや男女は関係なく、単に性的欲望があらゆる性的事件を可能にしている。この事件では強制性交罪が22件あったという。ほとんどの性的事件は男によるものであるところに特徴がある。

  LGBTQ(性的少数者)の意見が強くなっている反面、保守的な家族制度を守ろうとする強い流れも起きている。性欲解消という視点からすれば、LGBTQの存在を認めるのは当然のことであるが、それにより結婚制度の良い点が崩れるようでは、少数者のために全体が破壊されるという矛盾を生むだろう。ノムとしては、LGBTQの存在は公的に認めるべきだが、権利(結婚)を新たに付与することには反対である。LGBTQの人々は、遺伝的・心理的状況を運命と思って自覚し、社会に負担を掛けるべきではない(20.11.7「運命論」)。そっと静かに暮らすのが人間界の共生の原理にも沿っていると云えるだろう(21.3.21「性の多様性」・22.11.16「アリとコオロギから共生の在り方を学ぶ」)
  
  人間の性行動は本来本能的なものであり、学習によって人間界の規範を学ぶことになる。物心が付くまでの男児(5歳児以下)が好奇心から女児の性器に触ったり、女児のパンツに手を入れたりする事件(?)もあるようだが、これらを犯罪とする根拠はないだろう。これは男特有の本能であり、幼児には善悪の判断がまだ出来ないからである。加害者に教え諭すことが大切であり、被害者のトラウマを緩和する心のケアが必要だろう。女児が受けるトラウマは深刻であり、大人になって男性を恐れるようになり、精神科でPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され、治療が必要なことも多い。だが5歳以下の幼児に関しては、生物学的に言って本能を制御できない年齢であり、躾の範囲で解決していくのが妥当であり、法に訴えるのは愚の骨頂である。

  このような問題は教育が男女共学で行われるようになってから顕著な問題となったと思われる。どう考えても男女共学にすれば、生徒の間で男女の違いからくる好奇心、および肉体的衝動は避けられない。ノムは中学・高校と男女別学であったが、女子は別世界の存在だと思っていたため浮いた話もないし、問題は全く無かった。高校で初恋をして2人の女性徒と交際したが、キスまでの段階で留まった。機会があれば性交におよんでいた可能性も無くはないが、恐らく自制は働いたであろう(22.3.29「自己制御」)。未来世界では厳格な教育制度の下、男女は別学にした方が良いだろう。大学に入れるのは相当優秀な人材で人格点も高いため、性欲解消施設もあることから、事件になるような性的関係はかなり抑えられるだろう。

  夫婦の性的満足度は国民によってもかなり差があるが、日本の調査では50歳前後の女性が他の年代に比べて満足度が高いという調査結果がある。オーガズムが得やすいからだと言われるが、その要因は子育てから解放されていること、パートナーとの関係が良いことが重要な要因である。逆に60歳前後の女性の満足度が最も低かった。男性側の性的能力の減退も一因として考えられるが、女性側にも義務的に応じている場合や、性感が衰えることなどがあるだろう。一方、男の場合は、性欲は思春期以降の20歳前後が最も強く、加齢とともに弱まるが、性欲が消失することはないようだ。男の性欲原理から考えて、夫婦の性的交わりだけを公認し、その他の浮気に相当する他者との性的関係を犯罪のごとくに扱うのは間違っている。人間は動物的本能から逃れることができているわけではない。動物界を見れば分かるように、オスは遺伝子を多くのメスにばらまこうとする本能に支配されている。人間だけが妻という女性だけで満足できるというのは幻想である(23.5.30「人間の浮気の社会学と生理学」)。だがむやみやたらに男が女に言い寄る世の中になっては、性的秩序は保てず社会の治安が悪化することは目に見えている。ノムはそうした現実がある限り、男の性欲の現実を科学的に認めた上で、婚外性交をある程度許容すべきだと考える。そのためにはもっと穏便な、公的性欲処理施設が必要となるだろう(22.8.3「未来世界の性欲処理施設」)。そこでは女性を相手にせずとも性欲を満足させる設備が整っているため、人権侵害という問題を避けることができる。そして結婚している男女も利用できるし、個別に利用することも集団的に使用することも可能である。成人した独身者も利用できる。

  性欲解消は健康のためにも精神の安定のためにも必須である。男は3日に1度、女は少なくとも1ヵ月に1度のセックスが生理的に必要であるが、現実生活から実現が難しいことや、男女が意気投合するタイミングの問題もあり、現実には週に1~3回が最も多いようだ。新婚の場合は1%余が毎日性交している。およそ性交している夫婦の半数以上が満足しているようだ。驚くべきことに、半年以上夫婦の交わりがないという人が25~40%ほどいるということである。新婚夫婦でも全く性行為のない事例が4.4%あるそうだ。その理由には、①夫婦不仲・②性欲欠如・③性的関心がない、などがあるようだ。また子どもができてから交わりが少なくなる傾向が強い。結婚制度がもはや子どもを作ることだけが目的ではなくなっていることを意味するのかもしれない。日本では2002年に離婚件数がピークに達したが、その後減少している。「無理に結婚する必要はない・無理に結婚を続ける必要はない」という考え方が定着してきている。多くの若者・中年世代に、結婚しない男性が増えていることはそのことを象徴しているだろう。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出が進み、これに連動して「専業主婦家庭」から「共働き家庭」へ主流が変わっていったことも背景にある。2018年のNHKの調査では「必ずしも結婚する必要はない」と答えた人の割合は68%に上った。一方、結婚するのが当然、と答えた人は27%にまで落ちている。1993年でもすでに結婚制度を否定する人は半数を超えていたという。この頃が結婚制度に対する認識が逆転した時期と思われる。

  結婚にどのような意義を感じているかという女性へのアンケートでは、一位は子どもができたことが挙げられている。精神的安定や経済的安定も多く挙げられている。これは年代によっても変わっていく可能性があり、また老後にしみじみと悟ることになる。財産を受け継ぐ者がいないという不都合があるからである。生物として、命を繋ぐことが重要な使命でもあることから、せめて一人だけでも子を残すことは、人間として本来的な願望であろう。

  未来世界に於いても結婚制度が有効かどうかについて、ノムにはまだ定見はない。それは結婚制度というものが、人間界の秩序維持のために作られたという側面があるからであり、結婚制度が無くても秩序が維持できるということになれば、結婚制度が崩壊していくことになるだろう。現代では若者が、生活上の不便が無くなってきたことで、結婚を否定する世代も出てきた。あるいは経済的理由から結婚したくてもできないという若者も多い。家族という単位集団が未来世界でも有用であるとすれば、その家族の秩序が壊されないかぎり、性的自由度は高まると考えている。日本人は欧米人ほど気楽に男女交際ができるとは思えないが、ある20代男性が「女遊び」に生きがいを感じるというようなことをインタヴュアーに対して言ったのを聞いた感じでは、日本人もかなり自由にセックスを楽しんでいるのかもしれない。だがそれは未だ社会的公認を受けたものではなく、飽くまでも個人の秘めた趣味の範囲にとどまっていると思われる。ノムのイメージでは、男女は思春期までは厳格に別教育を施し、大学生からやっと自由な性的交際が可能になれば良いと考えている。思春期にある少年・少女は厳格で普遍的、かつ自己責任的性教育を受け、自慰で性欲を満たすようにさせる。だが人格点が高い者には性欲処理施設の一部利用を認めても良いかもしれない。それは特権であり、人格点の価値を高めることに繋がるだろう(22.1.30「人格点高位者の優位性」)。多くの青少年が人格点を高める方向に努力するようになれば、この制度は成功したと云えるが、ヒガミ・妬みを生むようであれば、失敗と言わざるを得ないであろう。高校を卒業して就職した成人(15歳以上を成人とする)や大学生には、自由な性的交際を認めるが、必ず避妊しなければならず、懐胎した場合は犯罪行為と見做される。社会的が認めないからである。夫婦の間には3人までの子が認められるが、それ以上産むと両親、もしくは男女は人格点が大きく引き下げられ、多くの特権を失うことになる(20.8.30「未来世界における人格点制度」)

  結婚制度が再定義されて確立されることで、人口は抑えられる可能性が高い。現代を見れば分かるように、教育費が家計に占める割合が未来世界では極めて大きくなり、自ずと人々は子の数を減らしていく。既に先進国では、白人・日本人・中国人・韓国人などの間で、経済的理由から結婚や子をもうけることを避ける雰囲気が出てきている。未来世界では人口を減少させる方向にもっていく政策が取られるため、多くの人が子孫を残すことに意義を感じるか、自分の欲求を満たすことに意義を感じるか、の選択を迫られることになるだろう。恐らく結婚制度は残るだろうが、それは任意的なものになり、誰も非婚者を特別視することは無くなる。同様に子のない夫婦やLGBTQの人々に対する特別視も無くなっていくかもしれない。だが逆に、結婚して子を持つ家族は優越的なステータス意識を持つようになるかもしれない。だがそうした未来を受け継ぐ世代には、大きな責任が掛ってくることを覚悟しなければならないだろう(21.12.4「自己責任」・23.1.23「国民(連邦民)の義務と責任・そして権利」)

(4.29起案・8.17起筆・8.18終筆・掲載・追記)


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