本文へ移動
【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

未来世界における人格点制度

2020-08-30
  前項を書いていて、「賢人」という用語を用いたのだが、これについてまだ説明していないことに気付いた。賢人は未来世界の構想において最も根幹となる「人格点制度」によって定義される資格の一つであり、最高の人智を持つ人のことを指す。だが賢人は決して少数ではなく、およそ10万人に1人という割合で選抜される。このことを説明する必要があると考え、この項を設けた。これは【時事評論】には相応しいテーマではないが、未来世界の仕組みを説明する必要から設けたものである。改めて本論(【論文テーマ一覧】参照)の方で触れることになるであろう。
 
  未来世界はこれまでの世界と科学技術の点からまるで違う世界になる。現代においてもつい20年位前には想像もできなかったことだが、ほとんど全世界で人々がスマホを用いて情報のやり取りや金融上の決済を行っている。それが当たり前になったというのに、人々はさらに20年後の世界を想像しようとはしない。一部の専門家が未来世界を想像しているが、現代の延長線上に技術革新を付け加える程度の発想しかしておらず、世界の仕組みを根本的に変えるという発想をしようとしていない。ノムは100年以上先の世界を想像しているが、その世界では人間の叡智がかなり高度に発達し、新人類と呼べるほどに大脳が深化・進化を遂げているであろう。それは現在AIの進化に見られるものと匹敵させることができるが、それがやがて短期間に人間の脳の進化となって表れると予測するのである。進化は予想以上に速く進む可能性が高い。
 
  そのような世界ではこれまで不可能であった「人格点評価」という手法も可能になる。これまでは人間が人間を評価してきたが、未来世界ではセンサー・監視カメラによって人の行動が評価可能になり、AIによって人の発言・論文が評価可能になるであろう。それらに加えて、MD(モバイルデバイス=スマホのようなもの)によって人が人やテレビ番組・新聞記事・組織を評価することも可能になり、特定の組織や人物についての総合評価が可能になる。未来の価値基準である、共生・協調・融和・創造の視点から、人(政治家・経営者を含む)や組織(国家・自治体・企業を含む)の評価をすることで、未来世界を安定で健全なものに変えることも可能になってきた。人格点制度というものはそれらを総称するものであり、評価を、誰にも一目瞭然・簡明に点数で表そうとするものである。これはガウスの正規分布に基づく相対評価であり、絶対評価ではない。
 
  人格点評価の手法を大まかに示すと、人や組織の公的な場における行動・発言などをセンサー・監視カメラ等により記録し、それは瞬時にAIによって、共生・協調・融和・創造の視点から評価され、ネット上の個人や組織の情報にリンクされて人格・組織格の点数に加算・減算される。これは幼少時(3歳以降)から記録されることで、幼年期(6~12歳)の賢人候補選抜のために用いられる。選抜された子らは特別クラスに配属され、一般の子よりも厳しい試練に晒される。それは忍耐力を養うだけでなく、高度な判断も求められ、健康維持にも配慮できるように教育される。エリート集団の中で人格点の向上を競わせる。だがそれは単なる学業成績ということだけが評価対象になるのではなく、自己犠牲精神・全体への奉仕精神・リーダーシップという観点からの評価が優先される。この選抜と特別訓練は地域によっても為される。地域は彼らを特別扱いせず、一般の子よりも厳しく指導する。このような選抜と訓練は大学まで続き、大学院に進学した時点で訓練は終了する。鍛えられた賢人候補生はあとは自力で自らの使命を探る旅にでることになる。 
 
  賢人の条件は極めて厳しい。まず年齢は30歳以上とするのが望ましいだろう。人生経験は全ての年齢を経なければ完全とは言えないが、年寄りに社会の指導者を担わせるのは適切とは言えない。人格点は85点以上であることを想定している。これは前述したように、人口10万人に1人の割合となる。そのまえに賢人補という資格があり、人口1万人に1人の割合で選抜される。その場合は年齢制限はない。人格点は80点以上を想定している。これらの条件は実際に施行してみて臨機応変に変えることができる。国家の議員になるためには賢人の資格が必要であり、タレントやストリッパーは選挙候補の資格がないことになる。また一定規模以上の大会社の社長も賢人資格を必要とする。社会の指導者の一人と見做されるからである。市長や学校長にも賢人要件を求めることが望ましい。だが賢人補や賢人の人数は限られるため、果たして先に述べた人口割合が適当であるかどうかはまだ分からない。これらについても今後検証していく必要がある。
 
  賢人は私心を持たず、公に尽くす覚悟を持っている。贅や華美を求める気持ちもないだろう。彼らを特別扱いする必要はなく、一般市民も分をわきまえた上で対等に付き合いができる。未来世界では組織犯罪というものが皆無になっており、また狂人も排されていることから、賢人にセキュリティー上のガードマンは必要なく、彼らもいつ死んでも良い心構えが出来ているのでそれを望まないだろう。国会という建物すら存在せず、議員宿舎というものも存在しないため、政権というものを維持するための費用は激減して、国民の税金はもっと国民生活に密着した部門に回されることになる。国防というものも必要なくなるため、その分は連邦組織や連邦軍の維持に回される。科学技術開発は推奨されなくなるため、そのための予算というものも無くなる。だがだからと言って税金が劇的に減るかどうかはノムにもまだ分かっていない。それが連邦と国家の維持という2つの必要に跨ってくるからであり、またストック経済の観点から連邦・国家の備蓄にも多くの予算が回されるからである。議員歳費は最小限に抑えられるが、議員には分相応な立派な邸宅が与えられるだろう。それは貸与という形であるため、辞職した場合には国家に返還される。議員の私邸はできるだけ一般庶民のレベルに近いことが好ましい。田中角栄の目白の豪邸は過去の話になる。
 
  現代では賢人というものを想定することもその養成も不可能であり、結局派閥論理によるサル社会と同じボス型指導者しか生まれない。その指導者が良い場合には国民は幸運であるが、独裁的な場合には多くの場合不幸である。中国は独裁によって発展し、国民はそれを支持してきた。だが欺瞞と策謀による見せかけの経済発展が破綻したときには、中国国民は簡単に政権を見捨てて民主化を求めるであろう(21.10.1「中国の経済破綻は間近か? 」・21.11.12「中国天罰論 」)。未来世界では国民もノム思想によって合理的判断が個々に下せるように成長しており、国家が困難な状況に陥ったときにも自分達の力で解決する方向に向かうことになり、そこには革命というものはない。未来世界は革命を克服できるのである(20.9.7「ノム思想(ノアイズム)とは何か? 」・「改革・改善の手法 」)
 
  議員となった賢人の生活を一例に取り上げてみたい(20.10.22「日本の議員の質の低下と未来の議員の在り方 」)。従来の議員は支持者のために奔走しており、結婚式・会社の記念会・葬式などへの儀礼的な挨拶などの活動を重視している。地域視察を行っているという議員はほとんど聞いたことがなく、いつも主賓招待という晴れの舞台を楽しみにしている。それに対して未来の議員は支持者確保活動は行わない。講演会というようなイベントは未来社会では制限される。全て新聞・テレビなどで自論を展開し、議会活動報告が中心となる。また論文を出してネットに積極的に投稿する。それ自体が評価されるため、いい加減な誤魔化しは効かず、毎日を読書やネットでの現状解析、そして論文執筆や記者インタビューへの対応、さらに現地視察に追われることになる。議員の時間は外部の要因で拘束されることは少なく、現地視察や記者インタヴュー、テレビ出演だけが時間を拘束することになる。ネットでの意見交換などにも多くの時間を割くだろう。議員の生活は地道で創造的な仕事に費やされる。議員の評価はもっぱらそれぞれの活動のAI評価、および発言・論文に対する人々の個人評価によって決まるものであり、党は存在しないことから、党などの役職で判断されることはなくなる。 (21.11.13追記)

 
 
 
 
 
 
TOPへ戻る