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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

温暖化防止手法の評価

2021-12-26
  このところ世界でも日本でも、成長第一主義が相変わらず最高の価値を持っているらしく、資源の節約や消費の削減によって二酸化炭素を減らそうというキャンペーンはどこにも見られない(8.25「国連のSDGs政策の欺瞞 」・12.21「SDGsプロパガンダ 」)。せいぜい中国が贅沢な食事や食事の余りを残すことについて、習近平みずから指導して戒めたくらいである。一方温暖化対策や二酸化炭素回収技術に関しては、それが新たな技術革新を生み出すビジネスチャンスとばかりに、いろいろと紹介されている。だがそれらが荒唐無稽なものであったり、差引勘定からして決して温暖化を防止することにはならないものが多く、報道メディアは善悪の見境いなく、一目を惹きつけることに躍起になっているようだ。そこでこれらの手法や技術を正しく評価してみたくなった。ノムの元には正確な評価を出すために必要な基礎的データがないため、多くは直観によるものか、原理的に推察した評価しかできないが、素人なりの評価を出すことに意義があると感じている。

  二酸化炭素の排出量は1950年から急激に増加しており、現在毎年335億トンを排出しているという。日本は10.8億トンで世界で5番目に多い。日本での排出源のランキング1位は発電所で39%、工場25%、自動車18%、その他家庭などから18%ほどが出ている。現在の大気中には0.04%のCO2があるが、これまでに人類は産業革命以来、累積では1兆トンものCO2を排出してきたという。既に森林や海洋、あるいは地殻にある程度は吸収されており、残ったCO2が現在の濃度を示している。それを回収するというのは無謀な取り組みであるとも考えられる。だがこれから排出するものについては、まず真っ先に削減の必要があるだろう。セメント製造(カルシウム系アルカリ反応)におけるCO2排出は全体の約7%と言われており、まずその工程を見直さなければならない。ローマンコンクリートの技術(アルミニウム系・珪酸ポリマー系:火山灰・骨材使用)を再考すべきだろう。これは粉砕するだけのエネルギーで済み、1400℃の高温で焼く必要はない。

  今回は温暖化防止の観点からその手法について、手に入る情報から網羅して並べてみた。この他にもあるはずであるが、勉強不足のため紹介できなかったものについてはご容赦願いたい。11月28日に視聴したNHK放送の「サイエンスゼロ」を参考にした。表にして分かり易くしたので、以下のエクセル表を参照してもらいたい。

  参照リンク:《温暖化防止手法の評価》 

  この中で有望だと考えられているのがコンクリート廃材再資源化技術であるという。世界生産の半分を再生コンクリートで代替すると、CO2を21億トン削減できるようだ。だが藤川教授も述べているように、普及させる時間が必要であり、間に合うかどうかはかなり怪しい。日本は2050年までにカーボンニュートラル(排出量=回収量)を達成する目標を掲げているが、これにはCO2排出権買い取りも含まれており、また回収したものが再度大気に戻るような回収方法では原理的につじつまが合わない。日本独自に国内でのカーボンニュートラルを実現することを目標にしなければならないであろう。

  評価表では第1位が「植林等によるCO2吸収」であった。素人評価とはいえ、無視できないと思われる。だが世界でも日本でも植林に関するニュースは全く無く、逆にアマゾンの熱帯雨林の消失や各国の森林火災による森林消失が報じられている。なぜ植林を大々的にアピールしないのであろうか?
  2位に「生活様式の転換」が上がったのは意外であった。まず取り組むべき課題であると考えていたが、その効果のほどには多少の疑問があったからである。評価が正しいとは言えないが、ノムの直観が当たっていたことを傍証している。無駄を省く生活様式の教育・普及が要であり、ノムは①水道使用法・②風呂入浴間隔・③節電・④包装材不使用・⑤計量販売・⑥一括大量購入・備蓄・⑦自給自足。⑧物品の長期使用・⑨ディスポの廃止、を事例として挙げた。たとえば水道の使い方をこまめに水を止めるという方法に改善すれば、水道の使用量はおよそ半分に減らすことができるだろう。風呂の湯は少なくとも2回使用し、夏は湯の温度を下げるために排熱し、冬は室温を上げるための給熱に使用できれば、トータルの冷暖房費を減らすことができるだろう。だがまだそうしたシステム改善はなされていない。
  3位に「産業様式の転換」が登場する。これは規格の統一と差別化による分散生産を目指す。①野菜の格付け販売・②農・牧畜業の小規模化と分散化・③工業製品の小規模無人生産化、を提案項目として挙げた。①の野菜の格付け販売とは、スーパーなどで規格に合った野菜だけを売るのではなく、規格外の等級の低い野菜を廉価で販売することで、廃棄という無駄を省き、貧困層に優しい社会にすることを意味する。農・牧畜業の小規模化は効率的には悪いが、リスク(大規模ウイルス被害)に対して対応が可能であり、大地を有効利用することに役立つ。人手を多く要することから市街地農地・市街地牧畜が推奨される。工業製品の小規模無人生産とは、小規模工場を自動化することで、生産拠点分散化を図ることを意味する。これも効率的に悪いものであるが、災害などに対してリスク発生を軽減することができる。経済競争のない未来だからこそ可能な手法である。

  ノムの独自提案である、「バイオマスの炭素固定化・永久固定」・「ローマンコンクリート技術」・「直流送電」・「建築物構造による風力発電」・「海水のアルカリ化」は、実証がまだなため評価は低いが、原理的には非常に有効なものである。特にバイオマスのほとんどは再び数十年内にCO2となって大気に循環されてしまうが、その10~20%は炭化して永久固定が可能であると考える。世界のバイオマス量は12.7億トンと推定されているが、9割が木質系であるとされる。仮に12億トンのバイオマスから10%の炭素が得られるとすると、年間4.4億トンのCO2が永久固定可能である。実際にはその1/4程度しか処理できないであろうから、1億トンくらいに見込んでおきたい。

  世ではCO2に注目が集まっているが、地球温暖化物質は他に、水・亜酸化窒素・メタンがあり、二酸化炭素濃度は観測が始まった1980年代以来20%の増加であり、20倍以上の温暖化をもたらすメタンは8%増えているようであり、その上昇率が2010年以降上がっている。そこでメタン対策を同時に進めていかなければならないと考える。特にメタンハイドレート崩壊が起きたときには一気に大気中のメタン濃度が上昇するため、その緊急対策をも考えなければならないだろう(3.17「巨大地震によるメタンハイドレートの崩壊の可能性」)。メタンは大気中で徐々に二酸化炭素に変化するとも言われている。

  ノムは先進国の生活様式の転換で約半分にまず減らすことができると考えており、残りを原子力の最大活用と小型化、植林と促成栽培、セメントのローマンコンクリートへの回帰、田園都市への都市構造改革などによって補えば、100年の間には可能かもしれないと考えるが、とても各国間で経済競争のある現代において30年でそれが可能になるとは思えない。現実的には表にある技術の全てが時間との競争にあり、ノムは既に地球環境が臨界点を超えたと考えることから、時間的に間に合わないという結論に達せざるを得ないのである。

  本項は温暖化防止手法の評価が主題であるため、これらの技術によってカーボンニュートラルが可能かどうかという視点でみれば、これらの技術では原理的にも不可能であるという結論を出さざるを得ない(11.2「カーボンニュートラルとSDGsは可能か? 」)NHKの番組では希望を持たせようと、小学生の素朴な提案をも否定せずに好意的に受け入れた。女子小学生は「電気自動車にすれば二酸化炭素を出さないで済む」と発言したが、現状では電気を生み出すのに大量のCO2を出しているという矛盾を司会者や専門家は説明しなかった。この番組自体がプロパガンダ番組であることを図らずも証明してしまったのである。男子小学生は「木を植える」という最良の方法を提案した。NHKは技術よりも生活様式の変更や、植林の可能性についての番組を制作すべきであるのに技術に頼ろうとし、そこに希望を見出そうとする人間の愚かさを露呈してしまっている。


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