本文へ移動
【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

国連のSDGs政策の欺瞞

2021-08-25
  日本では世を挙げて「SDGs」の呪文が唱えられている。この新しいイデオロギーは意識革命をもたらしたと最大の評価を与えることができるものであるが、それが産業界の温存、あるいは新たな発展を企図したものであるように見えるのは筆者の錯覚なのであろうか。そこに挙げられたいくつもの基本政策は尤もらしく見えるが、最大の目標であるべき経済成長率の鈍化や低下、あるいは一時代を風靡した「ゼロサム」という思想、そして人口の縮小というものを全く取り上げていないところに、大きな欺瞞を感じる。そして世界の人々がこの呪文に騙されてこれを実行したとしても(実行できるはずもないし、その根拠もない)、現実はそのような欺瞞とは関係なく悪化の一途を辿るであろう。以下の自論でそのことを論証し、本来あるべき政策を掲げてみたい。

  「SDGs」という言葉をある芸人は「1ヵ月前に知った」とある番組の中で喋ってしまった。それが実態なのであろう。何人かの人と話していても、その言葉を聞いてはいても中身を知らない人が圧倒的に多い。筆者自身がその17にも及ぶ政策を知らない。知っても無駄だと思っているから頭に入らないのである。改めてここで、それを整理してみよう。

  開発アジェンダ(目標)の節目の年、2015年の9月25日-27日にニューヨーク国連本部において、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。元々開発目標を討議する会議であったから、人間の開発に科学的な根拠を与えようとする意図が働いており、決して地球温暖化を食い止めるための方策を討議した結果、導き出された結論ではない。だが国連は全世界の各国の同意を得る必要があったため、大義名分を整えることに全精力を注いだのである。その努力の結果、それ以前に掲げられたミレニアム開発目標(MDGs)の後継目標として、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」が考え出された。この目標は、人間・地球・及び繁栄のための行動計画としてまとめられたものである。

  ここで重要なのは、まず最初に「人間」が位置付けられていることにある。そしてその「繁栄」のための行動計画であるということも、ノム思想と根本的に異なる思想であることを示している。確かに地球環境に影響を与えているのが人間であり、それを改善するかしないかも人間次第であるから、人間を主体的に考えざるを得ないという意味に於いては、人間を最初に持ってくるのは間違いではない。だがその「人間の繁栄」のための行動計画であるとすれば、それは完全に地球温暖化を促進させてしまう可能性を含むことになり、とても受け入れられるものではない。つまりこの計画は、国家とその繁栄を支える企業体の大義名分作りのために作られたのである。そして2020年に報告書が出され、現在2030年までの目標が掲げられている。それは2030年が地球環境の将来の明暗を分ける分岐点と考えているからである。NHKの番組もこの「2030年の分岐点」という考え方に沿って作られている

  その17の目標を以下に示す。
 1.貧困を無くそう
 2.飢餓をゼロに
 3.全ての人に健康と福祉を
 4.質の高い教育をみんなに
 5.ジェンダー平等を実現しよう
 6.安全な水とトイレを世界中に
 7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
 8.働きがいも経済成長も
 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
 10.人や国の不平等をなくそう
 11.住み続けられるまちづくりを
 12.つくる責任つかう責任
 13.気候変動に具体的な対策を
 14.海の豊かさを守ろう
 15.陸の豊かさも守ろう
 16.平和と公正をすべての人に
 17.パートナーシップで目標を達成しよう
という内容になっている。理想主義の最たるものであり、いずれも実現不可能なものばかりであることは誰の目にも明らかであろう。だがこれに異を唱える人が少ないことも確かであり、それゆえに各国は反対できなかった。

  問題はこの目標を達成するための前提条件が挙げられていないことにある。また罰則もないことも決定的欠陥となっている。たとえば中国が外洋に巨大漁船をたくさん送り込んで乱獲をしていても、国連は表立って何の非難声明も出さないし、罰則としての経済制裁などを行う法的根拠も作れていない。最も優先しなければならない項目は13番目の気候変動対策であるが、これについても各国を規制できる法的根拠は皆無である。これらを実現するには、各国から主権を取り上げるしかないことは明白であり、また強制力を確固たるものにするために、各国から軍事力も取り上げなければならないことも明らかである。それは世界を1つにまとめて連邦制にするしかないことを示唆するが、それについては何も述べられていない。むしろ目標にするべきなのは世界統一なのであり、それを度外視して絵に描いた餅を17個も並べるという役所的な発想はどこからでてきたのであろうか?

  それは恐らく、科学者が書いたにせよ政治家が書いたにせよ、思想家が書いたにせよ、全ての人に受け入れられる甘い言葉を連ねることによって反対意見を忖度することで封じ、自己保身を図ったからに他ならない。現実を直視してもっと厳格な対処を求める科学者がいたとしても、それはこのSDGsをまとめる委員からは外されている。筆者は国連および世界の政治家、そして世界の大企業から受け入れられる御用学者が主となってこの餅を用意したのであろうと思っている。それは役人が無難なプロパガンダ、あるいはアドバルーンを作るのと似ていて、害はないが益も無いものに化している。筆者の人間本能の考察から出てきたノム思想からすれば、これらのどれ一つとして実現されることはないであろう。結果的に国連は世界の民を騙していることになり、それは欺瞞を超えて犯罪的であるとも言える。なぜなら国連はこのプロパガンダによって全人類を滅びに縁に導こうとしているからである。ある意味では詐欺行為と言っても良い。

  これに対してノム思想では全く異なるアプローチをとる。そのプロパガンダは以下のようになるであろう。

  「人類はおよそ300万年前から進化を始め、10万年程前にホモサピエンスが唯一残りました。その後人間は大脳を進化させ、知的好奇心から生み出された科学技術により、地球で大繁栄を遂げました。ですがその繁栄が地球環境を変えるまでに大きくなったため、わずか数百年で滅びる危機に直面しています。これを止めるためには人類が一致して人口を減らし、資源・エネルギーの消耗を最低限に抑えるしかありません。それを実現するためには多種多様な意見を統一できる思想が必要であり、世界組織を1つに集約するしかありません。他の選択では間に合わないのです。恐らく2000年頃にその転換点がありました。既にそれを過ぎてしまったことで、自然現象の慣性力から後戻りするには数万年かかるかもしれません。生き残る生物はごくわずかであり、大部分は絶滅します。ですが人類は知能をもっているために、どのような環境変化にも対応するかもしれませんが、生き残れるのはごくわずかです。そしてその間に環境変化に適応して人類に進化が目覚ましく起こるでしょう。そうして誕生した新人類(ノム思想では「ネオサピエンス」と呼んでいる) が、叡智と技術を以て未来世界を築くでしょう。それはSDGsに示された目標のほとんど全てを実現できるようになります」というプロパガンダである。

  その具体的方策として以下に掲げる政策が採られる。

 1.世界は統一され、連邦を最高決定機関とする各国属州体制となる。
 2.各国は軍事を放棄し、連邦にのみこれを置く。
 3.各国に偏在する鉱物資源は連邦によって管理され、適切に各国に配分される。
 4.各国の人流は厳密に抑制される。国内移動は徒歩を原則とする。
 5.人口を20億人を目標として時間を掛けて下げていく。
 6.経済規模を現在の1/10を目標に下げていく。
 7.技術開発は生活技術の向上・効率化に限って進めていく。
 8.人類の棲家は地下に移行し、産業の多くも地下に移行する。
 9.連邦規定に反対の者・国家は人間界から追放される。

  この方策により、自然界は自ずと元の状態に数千年を掛けて戻っていくであろう。その間人類は「生かされていることに喜びを見出し、平和であることに連邦と国家に感謝する」であろう。そして着実に人間界の秩序と安寧は世界の隅々にまで行き渡るだろう。


TOPへ戻る