【時事評論2021】
東洋文明と西洋文明の衝突
2021-12-30
近年、中国がそれまで超大国と言われていたアメリカを追い越し、追い抜こうとして躍起になっている。それは今年2021年3月19日に米中外交トップ会談で、中国の楊潔篪政治局員が感情的になってコンプレックスの裏返しとも言えるような発言をしたことからも明らかである。彼は「中国の中国型民主主義体制はアメリカ型より優位にある/アメリカは一部の国をあおり立てて中国を攻撃している。内政干渉には断固反対する/あなたたちは強者の立場で話しており我々と話す資格はない/我々が西洋人から受けた苦しみはまだ足りないというのか/外国から抑えつけられた時間はまだ短いというのか」という激烈な発言をした。現在の自信と過去のコンプレックスが混じった、外交上ではあり得ないような無礼極まる発言であった。だがそれ故に、米中対立の伏線にある通奏低音のような中国側の本音が聴こえた気がする。日本人にも、意識はしていないが似たような西洋の考え方に対する違和感があると思われる。
アメリカの傲慢さが最も端的に表れたのが、2013年11月に日本に赴任した米国の大使、キャロライン・ケネディの発言に見られた。彼女は着任早々の2014年1月18日、和歌山県東牟婁郡太地町にて行われているイルカ追い込み漁に対して批判を展開した。まだ日本文化や食習慣についてよく理解しているとは思えない時期に、赴任先の国の伝統的漁について米国流の動物愛護の観点から批判したというのは、如何にも素人っぽい軽率な発言であった。世界の白人系非捕鯨国家は総じてクジラやイルカに対して特別な視点を持っており、捕鯨国であったノルウェーやアイスランドでは国際的批判に遭遇して、止む無くミンククジラだけに漁を絞っており、科学的な根拠を基に1993年からは商業捕鯨を再開している。日本も2019年6月30日に国際捕鯨取締条約(ICRW)から脱退し、同年7月、捕鯨を再開している。 ただし、商業目的のための鯨の捕殺頭数はゼロとする方針で、調査捕鯨と称しており、シロナガスクジラなどの絶滅危惧種については対象から外している。
同様な問題は中国・韓国での犬食文化にも近年起こっており、やはり白人国家からの批判が多い。日本では犬食文化は皆無だが、他国の食文化を批判するような馬鹿な真似はしていない。こうした白人世界の価値基準に基づく偏見に満ちた批判がどうして起こるのか、長い事思いあぐねてきたが、その原因が文明の衝突にあるという一般論に辿り着いた(4.11「価値基準と価値評価 」)。概括的な捉え方になるが、初期人類はメソポタミア辺りで最初の文明(5500年前)を興したとされる(河岸文明)。その後エジプト・エーゲ海を通ってヨーロッパに散った。古代ギリシャ文明は4000年前に興ったとされる。世界に散ったフロンティアの周縁でも文明が起こった。3500年前のメソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明、3000年前のアンデス文明、2000年前の黄河・長江流域文明、などがある。ヨーロッパ文明が興ったのはエーゲ海文明が始まりかもしれないが、3200年前に突如滅亡しており、その原因は分かっていない。「前1200年のカタストロフ」仮説がある。最初の文明が興った地域から考えると、それは白人系ではなく、中東系であったと言えよう。
ヨーロッパ白人が近代文明を築くことができたのは、科学的技術(航海術等)を発明したからであろう。白人はこれ以降、ローマ帝国や大航海時代などを経て再度世界に向かって飛躍した。これは20世紀まで続いたと考えられ、拡大・拡張がその特徴であり、多くの植民地を築いた。産業革命を起こしたのもヨーロッパである。科学技術は普遍性を持つため、それが日本・中国などで再度開花し、東洋も大きく飛躍した。特に日本は小さな島国でありながら、大国と言われていたロシアに日露戦争で辛勝し、やはり大国と言われていた清国(現在の中国)に日清戦争で大勝した。第一次世界大戦後に大国になっていたアメリカにも無謀な軍事的挑戦を行い、敗退はしたが、その後の復興は奇跡的なものだと言われ、ついに世界第二位の経済力を持つまでになった。だが日本は敗戦という屈辱を味わったために、軍事には容易に手を出せなかった。アメリカ・日本の経済支援を受けた鄧小平率いる共産中国はめきめき力を蓄え、ついに習近平の時代になって世界制覇の野望を持つに至った。
ここに明らかな東洋文明と西洋文明の衝突が始まったとノムは観る。中国よりも日本の方が遥かに先に現代文明を確固たるものにしていたが、中国は民族の持つバイタリティと知力、そして悪辣な手段(知的財産略取等)によってそれを凌駕し、ついに2010年に日本を抜いて世界第二の経済大国に躍り出た。それからたった4年後の2014年に習近平は世界制覇の野望を抱いたというのであるから、昇龍の勢いのすごさには驚かざるを得ない。購買力平価を使った経済規模では、この年2014年にアメリカと中国のシェアはすでに逆転し、中国経済は16.5%とアメリカの16.3%を抜いて世界一となっている。中国文明復活は中国人に自信と傲慢を与え、中国人は金権主義に陥った(1.27「中国・韓国の若者に見る金権主義」)。目の上のたんこぶであるアメリカを追い越そうと躍起になっているのは当然の成り行きであろう。
問題は民主主義を掲げる白人系西欧諸国が、キリスト教を根底に持つ伝統から、人権主義を掲げて中国を批判し始めたことにある。上記したように中国は自国文化と自国文明に誇りを持っており、それは西洋よりも優れていると自信過剰になっている。2008年の北京オリンピックでは自国文化を誇るショーを繰り広げた。だが米国やヨーロッパなどの西欧列国は習近平時代になってからの人権弾圧を、他国のことであっても許さないと息巻いており、それは実は中国の強圧的外交や世界制覇を恐れていることに根差している。価値観の衝突だとも言われているが、それよりも最終的に軍事衝突に発展することが目に見えているからである。ノムは従前から西欧的民主主義から来ている「人権」を盾に中国を批判するのはおかしい、と指摘してきた。むしろ中国を非難するならば、「人道」に反することをしていることを批判すべきである(7.15「西欧は「人権外交」を止め、「人道外交」に切り替えよ 」)。人権というものは各国で異なるが、人道は普遍的価値概念であるからである(7.15「「人道」とは何か? 」)。
そして中国の人道違反は他国に及んでおり、それはいずれ世界にも及ぶ。彼らは核兵器ですでに他国を脅しており、先制使用も宣言している。現在は核兵器を持ち出すまでもなく、経済報復という手段で済んでいるが、間もなく領土占領という侵略を開始するであろう。その対象は当面台湾と日本の尖閣諸島であり、通常兵器で島嶼を占領することから始まる。アメリカは最後に自国にICBM攻撃の危機を自覚するまで、結局は手をだせないだろう。そして第三次世界大戦勃発はいきなり来ることになる。中国が先制攻撃するからであり、それは核兵器の性質上、アメリカの主要都市・主要軍事施設に同時攻撃することになる(6.22「宣戦布告なき第三次世界大戦 」)。世界は東洋文明と西洋文明の衝突どころか、人類生存の危機に一気に陥ることになる(6.11「人類文明のエントロピー的解釈 」)。
人類にとって大災厄が2020年頃に訪れるとノムが予言してから35年以上経った(12.13「ノムの予言の意味 」)。それは予想とは違って中国のウイルス兵器研究過程での漏洩という形のコロナ禍で始まった。そして中国は事前の準備もあって目下のところその制圧に成功しており、西欧諸国のみならず、世界はそれこそ大災厄を被った。日本は東洋国であり、また細心の注意を払ったことで災厄の規模は小さかったが、経済的打撃は決して小さくはない。それはこれから表れてくることになるだろう。最終的に第三次世界大戦で東洋国である中国が勝利を収めるのか、西洋主導国家群(アメリカ・ヨーロッパ・日本・インド)がその総力を挙げて反撃することで中国に勝利するのかはまだ分からない。そもそも核戦争に勝利者はいないとされていることからすると、人間の文明そのものが存亡の危機に遭遇するということになるだろう。歴史を俯瞰して観れば、国家同士の戦争や東西文明の衝突などを経て、最終的に人類全体がそれらの闘争の報いを受けることになるのである。