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【時事評論2021】

民主主義を社会主義にしなければならない理由

2021-12-07
  ノム思想では、人間界の発展には一定の原理・原則があり、それを歴史から学んで理解すると、未来が見通せることを示している(20.9.7ノム思想(ノアイズム)とは何か? )。ただし、その未来は人間がまだ地上に生き残っていれば、という仮定の下に考えられる未来であり、人間が生存していなければ、再び知能を持つ生物が現れるには数万年以上掛かるであろう。もし人間が第三次世界大戦による核戦争や、温暖化による窒息死を免れたとした場合、その未来にはこれまでに無かった新しいフェーズ(相)が生じることだろう。それは世界が統一されるということである(6.8「新・進化論 」)

  物質界や自然界では、自己組織化という仕組みがあり、エネルギーから物質が生まれた時点から、相互作用によって物質は量子→原子→分子→アミノ酸・タンパク質→高分子→生命へと進化してきた(6.9「自己組織化と自己崩壊化 」)。その生命の歴史は40億年以上とされるが、ホモサピエンスが誕生するにはほとんどそれと同じ時間が必要であった(6.7「生命進化は巨大な犠牲の上に成り立つ 」)進化は極めて遅いが、それが高度な進化に入ると急速化される。人間組織の在り方は集合体(村落・部族・民族・国家)のせめぎ合いという形で続いてきたが、その中で繰り返されてきた闘争・戦争というホモサピエンスにとっては不都合な状況が、最終的に1つの組織「世界連邦」に統合されることで解消されるであろう。だがそれが生まれるためには、人間が最悪の絶滅寸前の状況に追い込まれることで初めて希求される動機がなければならない

  その動機を持つ人間は、知能が高度に進化した新人類と呼ばれるものになっているであろう。筆者はそれをネオサピエンスと名付けた(4.8「ホモサピエンスからネオサピエンスへの進化 」)。人間の生活形態が進化してきたように、人間の思考も進化してきた。現在の民主主義という体制が最善というわけではなく、現にほころびを見せている。ノム思想からするとこのほころびは必然的なものであり、科学的な理解が可能である。すなわち、自由で束縛のない個の集団は結束することができず、自己組織化はある程度まで(国家レベルまで)は進むものの、自己崩壊に向かう(4.22「全体主義と個人主義 」・6.9「自己組織化と自己崩壊化 」・8.24「未来の全体主義と現代の個別主義 」)。ホモサピエンスはアニミズム的祭礼によって一つにまとまったことで、より屈強なネアンデルタールを滅ぼしたと言われる。同様に未来世界では、知(ノム思想)によって結合した集団が最終的に世界を統一するだろう。その過程には無慈悲・冷徹な殺戮が予想される。すなわちサバイバル時代(戦国時代)がある。それを経て知的に統一された集団が勝利し、世界を統一するだろう。

  集団が統一されるには思想ないしは宗教が必要である。現代では宗教はその役割を果たせないことは、キリスト教とイスラム教の対立などから明らかであり、相互に敵対意識と憎悪しか生んでいない(2.2「宗教における時代錯誤な教えと掟」)。思想もまたこれまでに出てきたものでは、普遍性や科学性が不十分であった。マルキシズムが世界に希望を与えた時期もあったが、間もなくその思想が階級闘争という闘争原理を含んでいたため、自己矛盾から有害なものに変じた。元々経済理論から生じたイデオロギーであるため、その限界が露呈したということである。筆者の説くノム思想は考え方を示したものであり、それは科学的普遍性を根拠にしている。決して固定観念的体制を意味するものではない。ノム思想から考えれば、民主主義という体制はフランス革命から発した「自由・平等・友愛」という理念を基にしており、それは科学的根拠のない理想的イデオロギーであって、いずれは崩壊すると考える(6.21「イデオロギーの本質 」)。なぜならば、自由な「個」は束縛を嫌うからである。

  その現象をアメリカに観ることができる。米国では銃器による犯罪が頻発しているにも拘らず、社会は「自由」の理念の下にそれを野放しにしている。子どもでも銃器を使って犯罪に及ぶところまで来ている(《アメリカ》11.30・12.3)。一方中国や日本ではそうした犯罪はあり得ない。政府が徹底して銃器を管理しているからである。だが中国は徹底した個人管理によって、反体制派を弾圧しており、それは人間の持つ「自由な意思・自由な思考」を抑圧している。これを理想の体制と観ることはできない。日本はその歴史と民族性から協調社会であり、庶民は何時の時代も比較的自由であった。ノム思想を受け入れやすい民族であると言えるのかもしれない。欧米の白人社会は押しなべて個人主義であり、世界一幸福度の高いフィンランドでは鬱病リスクが高いと言われる。日本も西欧化に伴って個人主義が蔓延し、鬱病が増えている。これは体制如何にかかわらず、不幸なことである。

  未来世界の体制がどんな形のものであれ、結果として人々が結束していなければならない。そうでないと、自然災害(温暖化はその典型)などに対して一致して対処できず、国家間・個人間に不満が生まれ、ついには闘争に発展してしまうからである。そして幸福感が高いことが望まれる。そのような体制を創ろうとして、これまでも第二次世界大戦後に機運はあったが、あいにく科学者が提唱した「世界連邦」には何の科学的根拠も無かった。ただ理想的理念を打ち出しただけに終わった(3.28「世界連邦の可能性 」)。ノム思想は、人間界の発展段階の収束地点では、自己組織化が最大化して連邦が形成されることを科学的に推論する。そのためには個人・国家を結びつける何かが必要であり、それは上述したように思想しかないのである。かつてヒトラーはナチズムという思想(イデオロギーと言った方が良い)を生み出して破綻した。現代は習近平が中国中心の中華思想を基に、新たな「習イズム」を唱えている。それも間もなく第三次世界大戦で崩壊するだろう。最後に残るのは、固定された観念に依らずに普遍的科学性に基づいた思考によるノム思想である(4.23「全体主義は果たして「悪」か? 」)。だがその思考を人類が身に着けるにはまだ数十年・数百年の時が必要である。

  現代は民主主義と社会主義のせめぎ合いの時代に入った。というか、民主主義と独裁主義のせめぎ合いと言った方が良いであろう。本当の社会主義は決して独裁ではないが、賢人の集合体が決定したことは絶対性を持つという意味では独裁に近い要素を持っている(20.12.23「真社会主義」)。独裁はトップの個人によって作られる体制であるが、本当の社会主義は社会が基本であって、いわば集団指導体制である。だがその集団に愚民は含まれない(9.26「愚民論 」)。愚衆は自分の利益を優先して社会の利益を考えないからである。社会の利益を優先する思考方法を身に付けた賢人の集団が、社会の最適化を図ることのできる唯一の存在である(11.20「賢人とは? 」)。間違ってはいけないのは、ただ一人の賢人による独裁ではないということである。知の統合を基本とした真社会主義では、AIもこの陣列に加わることになる(20.12.23「真社会主義」)。下層の民の要求・要望を汲み上げて何段階もの検討を加え、それらに対して合理的な判断を下すのが賢人であり、その賢人の集団が切磋琢磨して政策を生み出す。最終的に総統と呼ばれる最高位の賢人が最終決断をすることになるだろう。社会主義は議論の段階で下位上達の組織であるが、最終決定権は総統にあり、決定の時点では上位下達となる。全世界はその命に従わなければならない

  体制が比較的安定しているのは、頂点にを持つ国宗教的背景のある国である。だが王の権威が失墜する事例が多くなり、王制は近代になってほとんど滅びた。現在残っているのは日本・イギリス・サウジなど、数十に過ぎない。だが日本が建国以来同じ血統で繋がる皇室を持っていることで、非常に安定した政治が営まれていることは大いに参考にすべきである。イギリスは個人主義によってその王室は衰退せざるを得ない運命にある。サウジはその権威主義によっていずれは崩壊するであろう。未来世界が王を戴くことはあり得ない権威(皇室・王室)の継承はあり得ても、それが権力を持つことは良くないことだからである。日本は世界でも特殊な建国の父を皇室の血統として2000年以上に亘って維持している。しかもその皇室は権威を維持する最低限度の費用は使っているが、決して豪奢に振る舞ったり、贅沢三昧になることは無かった。皇室は何時の時代も国民の安寧を祈る存在であった。そのため国民はその意義を知っており、近年の若者に対する教育不足にも拘らず、敬愛を集める存在である。

  ノム世界が社会主義であるということは、以下に掲げる項目から明らかである。
 1.連邦が世界を統御するが、その目的は地球環境を生物にとって最善の状況にするためである。
 2.あらゆる組織において、人格点の高い人(最高位は賢人)がリーダーとなる。連邦は賢人の集団指導体制
   となる。
 3.唯一の権力行使集団として世界連邦・国家(主権はない)を持つ。
 4.各国政府は連邦憲法に従って運営され、独自の政策決定は連邦憲法に反しない限り可能である。
 5.連邦は資源と武力を独占し、各国に配分する。その執行権は連邦のみにある。
 6.経済・通貨は統一され、各国は自給自足原則で運営される。
 7.各国は連邦決議に従わなければならず、反乱を起こした場合は殲滅されるか、連邦軍監視下で連邦政府
   直轄となる。まっとうな政府が成立した時点から10年を経て、自治権を取り戻すことができる。
 8.各国はその歴史的背景・民族構成・宗教的背景などによって独自の文化を持ち、それは他国の干渉を
   受けない。

  ノム世界は次のような特徴を持つ
 1.世界から戦争が消滅する。
 2.人口は20億人程度で安定し、化石燃料使用から解放され、地球温暖化に伴う生物界崩壊を最小限に
   止めることができる可能性が大きい。
 3.競争的経済(資本主義・グローバリズム)は無くなり、計画的経済に移行する。
 4.人々の生活は物質主義から精神主義に移行し、精神的満足度が最高となる。
   (10.12「精神文明の優越性 」)

  以上の議論から結論を明確に示したい。個を重視した社会は意見の相違から分裂を招く体制を統一しようと民を弾圧すれば社会は不安定になる。個の要望を思想によって変え、最適で安定した社会形成の貢献を最大の価値とすることで、社会全体が安定して個人の満足度も最大化される(4.11「価値基準と価値評価 」)そうした社会を形成するためには、組織の統一・思想の統一が必要であり、組織が統一されたものが「連邦政府であり、思想が統一されたものが「ノム思想である(10.12「精神文明の優越性 」)。この2つの条件に、さらに統治方法として「人格点」というものに最大価値を持たせることで、人々は社会に貢献することを人生の目的とするようになるだろう(20.8.30「未来世界における人格点制度 」)。これらは荒唐無稽な空想論や理想論ではなく、すでに日本において不完全な形ではあったが、江戸時代に二宮尊徳によって、明治時代に渋沢栄吉によって実現の可能性が示されている(3.5「二宮尊徳の思想と精神 」・11.27「渋沢栄一という英傑 」)。当時は「論語」による儒教思想がその根底にあったが、未来世界はノム思想がその根底となるであろう。(12.8追記)


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