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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

真社会主義(3094文字)

2020-12-23
  前項で「真社会主義」について触れた。これまでに書いたことがないので、ここで改めて説明しておく必要があると考えた。これは従来のマルキシズムから派生した社会主義とは異なる発想によるものであり、他の宗教的・民族的社会主義とも異なるものである。その論拠について説明するとともに、その優位性を以下に述べたい。
 
  人は群れ(集団=社会)を作る動物であり、当初はその群れは宗教的(呪術的)縛りによって形成されていたと思われる(洞窟絵などから学者が推定)。しかし社会が狩猟から農耕に生活形態を移すにつれ、私有の概念や支配の概念が生まれ、階級というものが形成された。それはおよそ1万年前のことであったとされる。支配階級と被支配階級の間には強い掟があった。だがしばしばボスの地位を巡って争いが惹き起こされ、次第に人は自由な存在からテリトリーを作るようになり、それは環濠・城郭という防御施設となって表れた。テリトリーは次第に拡大を志向したため、争いは戦争という形に発展していった。支配者は部族や国家というものを形成し、部族同士、国家同士の戦争というものが長い事人類を悩ませてきた。
 
  未来に話を転じると、人間組織というものが自己組織化原理によって生じ、それが最大になったものが帝国と呼ばれる(6.9「自己組織化と自己崩壊化 」)。現代は世界組織として「国連」というものを統一機構として持っているが、これには主権が与えられていないため戦争を防ぐことはできない。現在は「国家」が主権を持つため最大組織は国家であると考えられる。だがそれも組織の拡大原理からすれば、自ずと1つの「連邦」という組織にまとめられるであろう。その段階に至って主権がもし連邦に集約することができれば、戦争というものは無くなる(20.12.26「主権論」参照)。武力は連邦だけが所有するものとなるからである。その段階では世界をまとめるものは何なのであろうか?古代のように宗教であろうか、あるいは厳しい法的縛りなのであろうか?筆者は思想であると考える。もし一つの思想にまとまることができれば、そしてそれが人々に安定をもたらすものであるとすれば、世界はその思想の下に1つにまとまることができるだろう。
 
  かつてマルキシズム・ナチズム・ファシズムという思想がその試みをした。だがいずれも自己矛盾から破綻し、壊滅的災厄を人類に与えた。現代は民主主義が最も広まりを見せているが、これに中国という独裁社会主義が挑戦をしている。いずれその雌雄が決せられることになるが、どちらもやはり自己矛盾を抱えている。民主主義の矛盾はそれが権利主義による衆愚政治であることにある。現代のアメリカに見るように、その矛盾が露わになってきた。筆者は、最終的に採用されるのは「ノム思想」であると考えている(9.7「ノム思想(ノアイズム)とは何か?」参照)。これは科学的法則や原理を基にして編み出されたものであるので、合理的・道理的・理知的であり、自己矛盾を持たない。それによって形成される世界を「ノムワールド」と呼んでいる。形態的には連邦制であり、各国には主権はない。連邦政府が世界を支配し、各国は自治国の形を取ることになる。そして世界をまとめるためにノム思想が用いられる。これは社会主義に立つため、これまでの歴史的社会主義と区別するため、「真社会主義」と称せられる
 
  真社会主義では上位下達方式の命令系統と実行組織が存在する。そして同時に下位上達の評価システムがある。命令の決定は独裁者によって為されるのではなく、賢人集団の叡智とAIの叡智を組み合わせた組織によって下される。各国から賢人が選出され、それが連邦議会の議員を形成し、議員の中から互選で最高指導者が選ばれる。連邦憲法は各国憲法よりも上位にあり、連邦議会決定は各国政府決定より上位にある。宗教は各国政府の支配下にあるが、政府の行政執行に妨げにならない範囲で自由である。真社会主義の最大の特徴は、下位上達の評価システムを備えていることである。これまでの社会主義にはそのようなものは存在せず、社会主義は独裁の傾向を強めてしまった。その失敗を繰り返さないために、全ての人に評価をする権利が与えられる。だがそれは生得的権利ではなく、義務を果たした人に与えられる権利となる。そして人々には、上位命令には絶対服従の義務が与えられる。逆らうことは一切許されない。その一方、評価は常に可能である。評価は批判ではない。単なる評価である。だがその評価によって国家も連邦も動くことになる。賢人はそうした叡智を持つ人であり、決して民が不幸になるようなことは考えない。また自己利益を優先することも考えない。だが社会は賢人を尊崇するため、それ相応の待遇を与えることになる。それは民からの褒美として与えられるものであり、賢人はそれを享受することを拒否できる。
 
  未来世界の連邦制は絶対的存在であり、たとえば国境の変更などは国家の意向や国民の意向を考慮はするものの、その要求には関係なく合理的な国境策定が可能である。国家は民族構成を主体に再構成される可能性がある。同じ民族は同じ国家に属した方が安定であると考えるからである。だが余りにも現代では民族が入り混じっているため、人は国家を選択することができるが、それは必ずしもその国家の領土範囲に居住することを意味しない。世界のどこにいても、自分の所属国家を決めたならば、その法律に従い、その義務(納税等)を果たすだけである。未来のネット社会(ノムネット)はそれを可能にするであろう。もし各国が連邦の命令に従わない意志を示した場合、直ちに連邦軍がその国家指導者を追放、ないし拘束することになり、暫定の仮議会が再構成されることになる各国には武力が存在しないので、反乱や戦争は起こり得ない。こうして未来世界には戦争が無くなる。各国の民の意見や指導者の意見が連邦の命令に沿わなくても、連邦は独自に命令をすることができる。上記したように、各国およびその国民はその命令や行政を評価できる。評価が良くない場合は連邦はその評価を基に善後策を講じることになる。連邦は個人独裁ではないが、連邦の最高指導者の意向は非常に強い権限を持つ。その任期は5年ほどであり、全世界の評価によって継続も可能である。但し定年制は設けなければならないだろう。
 
  未来世界のこのような議決システム・命令の上位下達システム・執行システム・世界民の評価システムは連邦憲法によって定められる。それは随時世界民の評価によって改善が図られることになる。各国に偏在する資源は連邦の管轄下にあり、各国の必要に応じて分配される。各国は連邦の定めた分配に異議を唱えることはできない。議決が為されるまではどのような意見も自由に出すことができるが、議決は一旦下されたら、絶対服従の原則に従わなければならない連邦の最大の目標は地球環境の改善である。二酸化炭素濃度を毎年下げるためにあらゆる強行手段が取られるだろう。それは時として世界民に苦渋を与えることも出てくるだろうが、連邦の裁定・命令には粛々と従うことが求められる。
 
  このような強力な組織であってこそ、地球環境は守られるのであり、各国の合意によるものでは決して目標を達成するのは不可能である。また平和の達成も強力な組織であるからこそ可能になる。世界が平和になり、地球環境がより改善され、人々の生活が充実した満足なものになれば、「結果良ければ全て良し」なのであり、ノム思想の合理性・連邦制の合理性もこの結果によってその価値が測られることになるだろう。(21.10.4追記)
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