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【時事評論2024】

育ての本能

2024-04-23
  本日23日に、畑のビワの木にしつらえた野鳥の巣箱の傍に、水場と餌場を作った。野鳥がこれに惹かれてやってきて、ビワの中に隠している巣箱に気が付けば良いと考えたからである。そして巣箱のすぐ近くに餌と水があれば、野鳥としては素晴らしい場所となるだろう。まるで豪華マンションを用意してやっているようなものである。だがふと、なぜ野鳥を育てるのにそんなに夢中になるのだろうか、と考えて、もしかしたら人間には子を育てるだけでなく、ペットや野鳥を育てるということも含めて、「育ての本能」があるのではないかと考えた。これはこれまでに述べてきた人間の本能である「生存本能・生殖本能・知的本能」とはまた別なものである気がする(21.11.18「本能論」)。本質的には生殖本能の中に含まれるのかもしれないが、人間とは別の生き物を育てるということは、もしかしたら何万年も前から人類が家畜を育て始め、作物を栽培し始めた頃から身に付けてきた別の本能なのではないかと考えた。

  話は少し飛ぶが、スコットランドのハイランド地方に棲むコバシチドリという鳥は、面白いことにメスがオスを巡って闘争をするという。メス同士が争い、勝ったメスが傍観していたオスと交尾をする。卵を産むとさっさと飛び去り、小鳥の養育はオスに任せる。オスはせっせと巣作りに励み、卵を抱き、小鳥に餌を運ぶ。つまりオスにも立派に育ての本能を持つものがいるのである。勿論、人間を含めて、多くの種ではオスも子の養育に関わることが多い。だがコバシチドリはメスが年に3回も産卵するのに子育てはせず、もっぱらオスが子育てをするという珍しい習性を持っている。

  生物の全てが子育てをするわけではない魚類の多くは受精卵を産んだあと、自然の成り行きに任せるものが圧倒的に多い。昆虫類もそうである。哺乳動物だけは、その名の通り哺乳の必要があることから、メスが主に子育てをする。また鳥類は、卵を温めて孵す必要があることから、やはり子育てをするが、オス・メス協働が多い。そう考えると、育ての本能を持つのは、生物の中の限られた種だけなのだろう。だがそれは生物の中の一部ではあっても、本能的な行動には違いない。人間は哺乳動物であり、また成人するまでの期間が最も長い動物であり、しかも人間として社会に順応できるために教育ということも行う。成人するまでに18年も掛かるというのは極めて特異的なことである。生物的には思春期には生殖を行うことが可能であるため、5歳7ヵ月と21日で子を産んだという記録もあるそうだ。

  育ての本能を持つ人間は、知的本能も加わって、他種の生物を育てるということに興味を持つことがある。小学生頃には昆虫を飼ったり、金魚などの魚を飼ったりすることが多い。ペットとしてのイヌやネコを欲しがるのもこの頃である。そして多くの大人は、自分の子育てに関わる。最近の事件に子育て放棄の事例が増えてきたのには諸々の要因があるが、子育てよりも楽しみを他に求めてしまうという社会的要因が増えてきたからであろう。晩婚化や非婚化が増えてきたのも、社会的要因が原因していると思われる。それは個人的にいいの悪いのという問題ではなく、既に社会現象となっており、社会的状況がそうさせている面がある(21.1.18「状況理論」)

  大人になると、他人を育てるということに興味を持つ人も多い。ノムが教員になったのは偶然のなせる業であるが、元々教育には関心があった。また教えるということに喜びも感じていた。学校だけでなく、会社においても、後輩を育てることに喜びを感じている人は多い。人材養成ということもまた、人間が持つ本能的なものなのかもしれない。だが全ての人にそうした関心や喜びがあるわけではない。中には自分中心主義に凝り固まった人もおり、他者を押しのけて自分が出世したり、金儲けに走る人もいる(23.12.26「利己主義の跋扈」)。だがそうした悪い心掛けを持つ人でも、自分の味方をする人には良くするものである。味方を作るという本を人間は持っているが、それもまた育ての本能の一部、もしくは同類項なのかもしれない。

  育ての本能をうまく使えば、社会はより良いものになるだろう。未来世界では、他者への貢献・社会への貢献が最大の評価を受けるため、人々は争って他者を育てるということに関心を持つようになり、相互扶助ということも頻繁に行われるようになるだろう(21.10.2「国際的国民相互扶助」・21.12.29「社会貢献」)。それは共生社会の実現に、最大の効用をもたらすことになると思われる(23.8.22「競争から共生へ」)

(4.23起案・起筆・4.24終筆・15:00掲載・19:30追記)


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