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【科学評論】

科学者の言うことを真に受けてはならない

2023-07-12
  NHKはよく科学番組を制作したり、海外からも取り入れて放送している(22.6.17「正しい科学主義」)。科学主義に立つノムとしては非常に有難い存在である。いろいろと文句も付けているが、NHK以上の放送局は今のところ少ない。未来世界でのテレビ放送はもっと遥かに良くなるだろうが、現在のところはNHKの恩恵を受けている。だがその科学番組がしばしばテーマのストーリーに合わせるかのように、あるいは視聴者に驚きを与えるかのように、科学的にみておかしいことを専門家が語ることがある。番組の制約された時間の中での説明には限界があることは十分承知しているつもりだが、誤解を与えないような表現は可能であると思うことから、今回は科学番組の1つを取り上げて、その「おかしな解説」について批評してみたい。勿論ノムは素人であり、専門的知識はないことを承知しているが、それでも素人として、あるいは科学を学んだはしくれとして、「おかしいものはおかしい」と言いたいのである。最初に結論を述べるようだが、番組の中の専門家の言うことや、科学記事の中の科学者の言うことをそのまま真に受けてはならないのである。

  5月30日にNHKが放送した「ヒューマニエンス選(再放送)」では「粘液」が取り上げられた。その中で「鼻汁は1日に1~1.5Lも出されている」、という説明があった。だがこれには驚かされるとともに違和感があった。あくまでも経験的なものであるが、鼻汁が病的に多いノムであっても、いくらなんでも1Lもの鼻汁が出ているようには感じられない。そこで科学者の言うところをよく解析してみた。恐らく科学者は、人工呼吸器において、空気中の湿度(たとえば60%)を100%に引き上げるために、加湿器が必要とする水の量から計算したのだと思われた。だが鼻汁と水を同じだと表現すること自体が間違っており、鼻の中でどのように水分が補給されているのか、という説明は無かった。

  ノムが想像するに、鼻の中では粘膜に絶えず水が染み出て供給されており、それが粘液(鼻汁)となっているのだろう。それは加湿器に於ける水の供給と似ている。そして鼻の中では純水に近い状態の水だけが絶えず供給されているのであり、他の粘液成分はそれほど多くは供給されていないと考える。そうすれば、水だけが蒸発して肺に送り込まれる空気の湿度を100%に保つことができるし、鼻汁が垂れてくることも、嚥下によって飲み下す必要もなく、鼻くそが貯まることも無いわけである。

  だが番組では、「1日に鼻汁(鼻水)は1~1.5L出ている」と説明した。するとこれだけの量の鼻汁が出てきて、しかも水だけ蒸発することになり、鼻の中はカス(鼻くそ)で固まってしまうことになる。もし粘度の高まった鼻汁を排除するとすれば、絶えず鼻をかむか嚥下していなければならないことになる。だが少なくとも他の人を見ていてもそんなに鼻をかんでいる人は見かけないし、長い時間付き合っても、鼻をかんだ人はほとんどいない。こうした経験から分かることは、鼻甲介の粘膜では絶えず水が供給されているが、鼻汁そのものが供給されているわけではない、と考えるのが妥当だろう。あいにくノムはそうした事についての知識もないし、実験で確かめることもできない。専門家の言うことにケチを付けるのはおこがましいことではあるが、ぜひとも専門家には医学的に検証をしてもらいたい。

  この番組を見た人は、おそらく聞きかじりの知識をあちこちで吹聴するに違いない。実はノムも家内に「人間は1日に1Lもの鼻水を出しているんだって」と言ってしまった。だが後から考えて、それでは鼻くそが鼻の中に溜まってしまうことに気付いて、「おかしい」と思い返したのである。解説者や番組は、うっかり言葉の使い方を間違えたために、視聴者に多大な誤解を与えてしまったのだろうと思う。こうしたこともあって、日頃からノムは科学者・医者・専門家の言うことを鵜呑みにしないように心掛けている。まして経験的な実感と合わない事柄については、他の人に「耳学問」を吹聴しないようにしている(21.8.5「発見の科学と検証の科学」)

  昔観た番組は、民放であったかNHKであったかは覚えていないが、歯の磨き方についての番組であった。「試してガッテン」という番組だったかもしれない。司会者の女性が老齢で今にも死にそうなヨボヨボした歯科学の権威に質問したところ、「歯磨きは30分行いなさい」と答えた。これにはノムも驚き、司会者の女性も狼狽した。現代の知識では歯は磨き過ぎると表面のエナメル質が薄くなって反って良くない、という常識になっており、これに反すると思った。またそんなに長く磨いていたら、歯茎などの組織も痛め、歯周病の原因になるとも思った。実際にやろうとしても、とても30分という長い時間磨いていられるわけもない、とも思った。この学者は昔のやり方に固執しているのだろう。ちなみにノムの歯は76歳で全部揃っており、歯周病も無くがっしりしているが、歯磨きはおおよそ1分で済ませるようにしている。時には歯磨き剤を使わずに磨くこともある(6.26「正しい歯の手入れ」)

  よく言われることだが、人から話を聞いたときには「話半分」だと思った方がよい、という。これは昔からの箴言であり、教訓である。科学者だから正しいことを言っている、と考えるのは、科学に対する理解が不十分な人の言うことであり、科学的事実であっても、それには前提条件があり、その条件が異なるとまるで反対のことも起きる、ということを知らなければならない(6.3「科学論と科学技術論」)。つまり科学は断定的に言うべきものではなく、前提条件を踏まえた上で検証や経験との比較が必要なのである(22.6.17「正しい科学主義」)。以上のことから、「科学者の言うことを真に受けてはならない」を座右の銘としておきたい。

(7.12起案・起筆・終筆・7.13掲載)


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