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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2023】

デマ百遍、事実自ずから変ず

2023-12-25
  中国が自国の領海を一方的に拡大した地図を発表し、自国の戦略であったはずの九段線という戦略ラインを領海としてしまった(8月28日)。それ以来、「領海」と称する公海に入ってくる外国船に対して脅しを掛けていたが、特にフィリピンに対しては強硬姿勢を取っており、フィリピンが自衛のためにEEZ内に沈めた船を基地代わりに利用しているのを、執拗に妨害している。現在のところは放水銃による資材搬入船への攻撃だけだが、いつ実弾を使用して攻撃してくるかもしれない。フィリピンは米軍や日本の支援を受けて防戦に明け暮れているが、これは南シナ海における偶発的戦闘の開始にも繋がりかねない

  中国共産党の機関紙・人民日報は25日、フィリピンが南シナ海で中国の領土を繰り返し侵害しているほか、偽情報を拡散し、外部勢力と結託して問題を引き起こしていると指摘する論評を掲載した。これは全く事実に反するものであり、挑発しているのは中国側である。論評は、フィリピンが米国の支持を頼みにして中国を挑発し続けており、そのような「極めて危険」な行動は地域の平和と安定に深刻な害を与えているとした。事実は逆であり、中国が一方的にフィリピンの領海を自国の領海と主張し、軍事的な威嚇を繰り返しているのである。だがニュース報道ではそうした中国の一方的主張を記事にしているのみであり、背景については説明していない。こうした説明や善悪の判断抜きの記事が繰り返し報道されることで、視聴者の国民は、いつの間にか「中国の言うことにも一理あるのではないか?」と思い始めるであろう。これは中国が情報戦における飽和戦略で、日本の国民を洗脳しようとしているのを、日本のメディアが後押ししているということになる。

  ノムはこのニュースを見たとき、また中国が不条理なことを言っている、と思ったが、果たして日本国民がノムと同様な判断をしているかどうかが気になった。昔から「読書百遍、意自ずから通ず」という諺がある。その意味は、分からない文章も、百遍も繰り返して読んでいるうちに、解るようになる、ということであるが、これは洗脳にも通じることである(7.7「人間の洗脳やホルモンによる制御は可能か?」)。中国は「孫子の兵法」を現代でも用いていると言われる(20.5.28「中国の世界制覇戦略に見る孫子の兵法」)。その中に情報戦についての記述もある。「用間篇」では情報の重要性が強調されているようだ。中国では、どんなに無理難題な事であっても、繰り返し洗脳すれば、それは事実になると思っているし、そういう戦略を取っている(1.29「事実と真実」)。そこでノムは、上記した諺を借りて「デマ百遍、事実自ずから変ず」という新しい諺を捻りだした。

  現代戦は「ハイブリッド戦」とも言われる。その最初に位置するのが情報戦であり、プロパガンダ戦であるとも言える。近年ではこれにサイバー戦が加わった。実際の武器による戦闘が始まる前に、既に戦争は始まっているとも言われている。であるからこそ、メディアはニュースを伝えるとき、その背景や意味を簡明に解説しなければならないのである。ノムの【時事通信】では、各社のニュースの後に、字色を変えてノムの解説を試みている。読者が誤解しないように、あるいは騙されないように、最低限度の評価を下している。一般のニュースにそうした評価が含まれていれば、わざわざノムが解説をする必要はないはずであるが、残念ながら現代メディアは敢えてそうした解説を省いている。表向きの理由は、ニュースは中立的でなければならないと考えているからであろう。だがそれが、多くの人に誤った印象を与えていることは、最近のパレスチナ報道を見ても分かることである(10.14「イスラエルとハマスのどちらに大義があるか?」)

  現代の人々がニュースを誤解したり、騙されたりしているのは、必ずしもフェイクニュースが増えたからだけではない。悪者の方が多くの情報を発信して自己主張を繰り返していることや、メディアが中立を装って正当な評価をしていないことが原因であると思われる。たとえば25日のロイターの報道では「南シナ海でのフィリピンの行動「極めて危険」と人民日報が論評」というタイトルの記事があったが、ノムはこれを「中国が自国の危険な挑発を棚に上げてフィリピンを非難」と書き換えた。記事自体は書き換えてはいないが、ノムのコメントとして「だが挑発しているのは中国側であり、フィリピンは防衛に専念している。論評は身勝手なものに過ぎない」と書き加えた。昔から言われてきたことだが、「間違った情報に騙されてはならない」のであり、そのためにも、「デマ百遍、事実自ずから変ず」という新しい諺は、自戒のためにも役立つことだろう

(12.25起案・起筆・終筆・掲載)


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