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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

科学の統合・実用化への転換(1507文字)

2020-12-25
  20世紀以降急激に発展した科学は細分化(境界領域化)・功利化・競争化の方向に向かった。それはある意味で必然であり、学問が深く掘り下げられていった結果、その枝が分岐するとともに重なり合ってしまい、自然界の樹木にはないような枝の融合が起こって境界領域の学問というものが生まれた。それはまたノーベル賞という名誉化手段とともに特許という功利化手段によって、一早く発明・発見を遂げようという競争を生み出した。これらが急激な科学の発展を促進したことは間違いなく、それはまた科学技術を生み出したことで大量生産・大量消費の時代・技術の高度化をも生み出した。
 
  それらは必然過程であるとはいえ、その急激な発展が地球環境を急激に悪化させ、人口爆発を生み出したことが明らかである限り、それは今後、あるいは未来において制御されなければならないことも確かである。それが人間の持つ好奇心という本能を制御することに繋がることから、果たして可能であるかどうかは未知のことであるが、連邦という強力な組織が出来れば可能かもしれない(10.5「人間本能の制御は可能か? 」・12.24「人類の好奇心と冒険心(その2) 」参照)。そして人間の好奇心を制御するためには、それを否定するのではなく、好奇心の方向性を変えるだけでよいのではないかと考える。そこでノム思想に基づいた科学の方向性を示したいと思う(12.16「科学的思考の世界(3295文字) 」参照)
 
  1.科学によって真理を探究するという行為は人間生活より優先させてはならない:具体的には莫大な予算を投入する科学研究を中止する。さらに具体的に言えば、宇宙観測・探査衛星の打ち上げ・宇宙開発・量子原子実験に関わる巨大プロジェクトなどである。これらは全て平和の維持・人間生活の安定のための投資に回されることになる。科学研究に費やされる世界の研究費は主として政府支出と企業支出からなるが、その総額は不明である。1例として2020年10月に打ち上げられたロシアのソユーズ宇宙船の座席の1つをアメリカが購入しているが、その金額は9030万ドル(約95億円)である。その金額があれば貧民の1時救済の大いに役立つことだろう。

  2.科学および技術の進歩は、人間がそれを十分受け入れるに必要な時間を掛けることが必要である:すなわち、科学・技術における競争を無くすことで、進歩を遅らせる必要がある(11.27「権威主義・権利主義からの脱却・法律主義から道理主義へ 」参照)

  3.現在各国で行っている科学上の巨大プロジェクトの重なりの無駄を省くために、世界的な情報の共有化と巨大プロジェクトの統合が必要となる:現代が競争下にあるため、各国は得た科学上の知財を隠し、共有しようという意識が薄い。そのため各国が持つ情報を共有化することでその無駄を省くことができる。その際、発明者・発見者の名誉をどう扱うかという問題が生ずる。それについては工夫が必要であるが、筆者にまだ名案は浮かばない。巨大プロジェクトを統合し、その中に分岐プロジェクトを設けて効率化を図ることができるだろう。それによって避けられる無駄は莫大なものとなるだろう。

  以上3つの改善が為されることで、①世界的な知財の共有化・②同じ研究の重なりを排除することによる効率化・③利益を生む研究よりも、人間生活を豊かにする研究への移行、などが実現される。これらの統合には世界的組織・世界的権威が必要であり、連邦の民間統括部門がそれを担うことになるだろう。各国の研究機関はこの基本方針に従った形で研究テーマを模索し、研究を進める体制を整える必要がある。


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