本文へ移動
【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2023】

日本が恐れるべき電磁パルス攻撃(EMP攻撃)

2023-01-04
  以前から北朝鮮が暴発してキム・ジョンウンが日本に向けて核ミサイルを発射する可能性が高いことを懸念してきた。ロシア発の世界核戦争が起これば、恐らくそれは必至のことになるだろう。そうした場合に備えて、核シェルターとまではいかないまでも、シェルター家屋の開発を急ぐことを提言もしてきた(2.22「環境シェルター住宅の設計指針」・8.2「地下駅のシェルター化と住宅のシェルター化」)。そんな折、2017年8月号の「SAPIO」に「北朝鮮の核ミサイルから身を守るための具体策」という記事を見つけた。古い雑誌などの処分をしていた時のことである。そこで改めてこのことを特に取り上げておく必要があることに気がついた。だがこれはネットで調べると、2017年7月11日の「NEWSポストセブン」の記事と同じであり、SAPIOは転載したらしい。それは兎も角、この記事を参考に自論を展開したい。

  北朝鮮が暴発するという事態は、いくつかのシナリオの下に有り得ることであり、或いは絶対に起こると言ってもいいほど確率の高いことであると思われる。その理由は、北朝鮮で誇ることのできるのは核戦力だけであるからである。絶対貧困国と言ってもいいほどの困窮した国家が、不正に得た資金を全部核開発に注いでいることはもはや常識となっている。つまり核戦力だけが北朝鮮の唯一の鉾となり得るため、通常兵器の開発には目もくれず、北朝鮮の通常兵器はほとんど更新されていないと見られる

  その事情はロシアと共通しており、ロシアは軍事大国と言われていながら、いざ戦争を起こしてみると、その体たらくがあからさまになった。つまり核戦力だけは米国に勝るとも劣らないものであり、また極超音速ミサイルの開発にも成功しているようであるが、通常兵器にはカネを掛けなかったことが浮かび上がってきたのである。また通常兵器(非核ミサイルを含む)の備蓄も、戦争継続には不十分であることが明らかになりつつある。戦車も最新鋭のものは少なく、1970年代の古いT-72を改修して戦争を始めた。失った戦車の数は3000輌とも云われる。

  北朝鮮の軍事の保持状況については全くといっていいほど情報がないので、それを論じることすらできないが、北が核兵器依存状況にあることは誰の目にも明らかである。つまり戦争になれば、北は核兵器を使うしかない状況にあるということである。これまでは、核兵器が使われれば、広島や長崎のような惨状が繰り広げられる、というイメージが日本人には強い。だが北は恐らくそうした使い方はしないのではないかと思われる。なぜならば、核兵器を使って日本を有無を言わさず無条件降伏させ、直ちに漁船などを使って日本に大量の飢えた人民を送り込み、手あたり次第に略奪しまくることが予想されるからである。核兵器を地上爆発させれば、その放射能の影響は侵略のために日本にやってくる上陸軍にももろに及ぶことから、北はそうした核兵器の使い方はしないであろうと思われる。

  ではどういう使い方をするかというと、過去のミサイル実験でもしばしば行われた、ロフテッド軌道を描くミサイルの発射を行い、日本の東京上空100キロほどの高高度で爆発させ、日本全国を電磁パルス攻撃(EMP)する手法が取られるだろう。これは人間を含む生物や建造物には直接被害を及ばさないとされ、ただ核爆発によって生じるガンマ線(γ線)は空気中の分子と衝突することで電子を発生させ、最終的に強烈な電磁波となって地上に押し寄せる。電磁波は、人体に直接の影響を与えないものの、その電磁波は回路や電線に誘導電流を起こすとされ、全ての電子機器や電力網・通信網に障害を生じさせると云われる。これが電磁パルス攻撃と云われているものである。北の国営メディアは2017年9月3日、6回目の核実験を強行したあと、「電磁パルス攻撃」という聞き慣れない言葉を使って日本やアメリカを威嚇した。つまり明らかに北はこの手法を使って日本を無能化しようとしているようだ。

  日本がEMP攻撃を受けた場合、どのようなことが起こることが予想されるかというと、まず最初に上空で恐らく閃光が見えることだろう。だが音もせず、その閃光は一瞬で消える。それがEMP攻撃の印である。爆風や熱線はほとんど感じられない。だが人々は大規模停電が発生したことに気付く。鉄道は止まり、帰宅困難者で東京・大阪などの大都市は大混乱となる。その原因が何かを知ろうにも、テレビ・携帯電話は機能せず、全ての官公庁は国民に必要な情報すら提供できない状態になる。そして最大の懸念は、原子力発電所(原発)が機能を停止し、制御不能に陥ることである。「3.11福島原発被災」の再来となり、原発がメルトダウンして水素爆発を起こす恐れもある。

  2004年に米議会に提出された専門家委員会の報告書「電磁パルス攻撃の合衆国への脅威評価」というものがあるという。これを日本に当てはめると、東京上空高度30キロで核爆弾が爆発した場合、中国地方を除く本州が被害を受けるとされる。高度100キロでの核爆発では全土が被災すると推論されるという。初期の帰宅困難者・エレベーター停止による閉じ込めなどの問題が解決したとしても、物流がストップすることで、特に都市部の食料・燃料の不足と衛生面の悪化により、深刻な疾病および飢餓が発生し、1年後には9割の人が死ぬ、と米報告書では述べている。当然、銀行のATMが機能せず、そもそも預金データが消失してしまう可能性すらある。警察や消防などの職員も動きが取れず、治安の悪化も懸念材料である。コンビニ・スーパー・デパート・商店の商品が強盗に遭う可能性すら日本でもあるだろう。

  これは現在のウクライナの状況よりももっとひどいことであり、停電という事態を超えて、電子機器全てが内部破壊されることで、文明が消滅することを意味する(3.28「シェルター籠城におけるサバイバル術」)。そしてその復旧にはとてつもない長期間が必要となるだろう。修理するための技術者は歩いていかなければならず、電子機器の予備や在庫すら機能しないからである。こうした事態が発した場合、被害を受けなかった海上船舶や国家にしか文明は残らない。もし世界的な核戦争が起きれば、何度も警告してきたことだが、現代文明は崩壊して都市住民はほとんど死滅し、人類はおよそ5割程度の地方在住の住民しか生き残らない可能性すら出てくる。

  EMP攻撃の最も恐ろしいところは、人や物には一見何の被害もないように見えるが、文明が破壊されて人々が飢えて死ぬことにある。この被害を最小限に食い止めるには、住居と生産施設を地下に持っていくしかないと思われる。電磁波は大地で拡散され、地下構造物の中にある電子機器などには届かない。電線で地上送電線と繋がっていない限り、安全に保たれると思われる。もし地上の通信機や電源と接続する場合は、雷ガードと呼ばれる電流遮断器を設ければ良いだろう。ノムが何度も地下シェルターの構築を呼掛けてきたのには以上に述べた理由もあった。日本は太平洋戦争で空爆を受け、広島・長崎に核爆弾を投下された経験を持ちながら、戦後になってそうしたことに対処できる国家作りを怠ってきた。そのツケがもうすぐやってくると思うと、とてもいたたまれない恐ろしさを感じるのである。


TOPへ戻る