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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

環境シェルター住宅の設計指針

2022-02-22
  環境シェルターという構想は田園都市構想の中で生まれたものであり、またその逆であるとも言える(21.2.9「田園都市構想」・21.7.17「水害地に環境シェルターの設置を!」)。いずれにしても、人間が地上で好き放題に活動してきた時代はもう終わりを告げなければならない(20.9.7「人間活動の無駄はどの位省けるか?」)。人間が樹上から地上に降りたように、今度は地中に潜るべきなのである。それはとても大変な事であるが故に、必然的に人間活動を抑制することになり、環境汚染を最小化することに繋がる。そして自然災害に強いものとなり、災害に遭ってもその被害は最小に止められる。おまけに地上を緑の楽園にすることができ、それは自然生態系の拡張に繋がることで地球温暖化を防ぐことになるであろう。最善なことは、冷暖房に要するエネルギーを最小化することにあり、地熱の持つ恒温性を利用してエネルギーの無駄な消費を防ぐことができる。こうした構想を35歳頃から40年間に亘って温めてきて、40歳で建築した自宅の隣に実験シェルターを建設した。その経験も踏まえて、シェルター型住宅の設計指針というものを考えてみた。

  環境保全のためのシェルター型住宅の目的は、以上の利点を追及することにある。それを箇条書きにすると、1.人間生活・活動に要するエネルギー消耗の最小化・2.住宅の箱舟化(密閉性の確保)・3.住宅の積層化(サンゴ構造)・4.住宅の500年使用・5.住宅地上部の緑化(森林化・菜園化)・6.自給自足化(牧畜・昆虫食・ヤマイモ栽培)・7.太陽エネルギー・地熱利用・8.廃棄物資源化・9.廃棄物貯蔵・10.廃棄物浄化、等が求められることになる(21.2.19「人間の時間エネルギー代謝と必要カロリー」)。以下ではこれらを実際に実現するために、どのような設計にしたらよいのかということについて、その指針をまとめていきたい。
  
  シェルターは鉄筋、もしくはカーボンファイバー・コンクリートの構造となっており、その中にプラスチックコーキングした鉄筋やカーボンファイバーを内蔵する。水による腐食を防ぐため、接地部分には耐蝕性断熱材を約10cmの厚さで囲む(高断熱構造)。断熱材はスタイロフォームと呼ばれる発泡ポリスチレンが現在のところ有用で、廃棄物となった時は溶融して再利用可能である。汚れたものを含めて全てを処理することが重要であり、再生品は品質で価格を決めれば良い。コンクリートは石灰系のポルトランドセメントが使われているが、これをシリコン系・アルミ系に代えて強度と耐久性を増す必要があるかもしれない。またコンクリートの敷設時の工法を工場生産にすることで、ポルトランドセメントの場合、加水を少なくすれば現在の3倍の強度が得られるという研究がある。できうれば、砂漠の砂を利用したコンクリート開発ができれば最高であろう。ローマンコンクリートが参考になる。

  この構造の中にあらかじめ使用が予想される配管を埋め込んでおく。配管には水系と電気系もしくは光ファイバー系があり、水系は詰まりを防ぐために余裕のある太さにする必要がある。電気・光系は水の侵入を防ぐために接続部などの防水・密閉性が要求される。少なくとも各室で2ヵ所の口が開口している必要があるだろう。汎用型とするために、その場所も規格化する。そして蛇口・コンセントなどの取り付け位置まで露出配管しないで済むように、構造体の室内側を通る配管路を設けておく必要があるだろう。この部分の強度は落ちるため、最初から強度計算には入っていない。外側から見ていくと、遮水・断熱スタイロフォーム層10cm・構造コンクリート層20cm・配管コンクリート層10cm・内壁断熱層5cm・内装材、という順になる。

  シェルター全体の避難用の出入り口4壁面に合計4ヵ所とし、それぞれ内側から鉄扉で密閉できるが、通路によって地上もしくは隣家と繋がっている。避難用であるため広い必要はない。シェルター躯体は地下地盤と最低1mの深さでパイルを使って繋がっており、岩盤に繋がっていることが望ましい。エレベーター空間を有し、階を上層に重ねていくごとに垂直に上方に伸ばしていけるようにする。最上部は地上であるため、溢水に備えて地上面で遮水できる構造にする必要がある。地上部は地下部とは切り離されており、地上部が失われても地下部は残る。

  換気という配慮が重要である。排気は可能ならば室内壁(炭吹きつけ)を通して排気を浄化しつつ、保温性を高める(入出気熱交換・ロスナイ換気)ことがエネルギー損失を防ぐ上で有効であろう。シェルターの構造壁の内側は空間をもたせた構造にした方が良い。筆者は実験シェルターにおいて太陽光集熱装置からの排気(熱は温水製造に使うのが主目的)を地下シェルターの床下部分に通気させた。だがその下のコンクリートを断熱しなかったため、ほとんど暖房効果は無かった(熱容量の問題)。薄くてもコンクリート内面も断熱した方が良いだろう。室内には2ヵ所に排気口を設け外気に直接排気したが、これでは機密性を保つことができないため、排気は全て内壁空間を通してまとめて外気に排気できる構造にすべきであろう。排気通路を殺菌するために銀配合燻蒸剤で年に1回通路を燻蒸するか、チタン配合燻蒸剤とLEDで殺菌分解すると良いかもしれない。銀資源・チタン資源はこの用途のために優先的に使われるべきであろう。だが資源的に足りるかは試算していない。

  家庭における人間生活に必要なエネルギーは基本的に太陽と地熱を主体とし、①冷暖房(地熱・電気)・②給湯(太陽光・薪・メタンガス・アルコール)・③調理(炭・薪・メタンガス・電気)・④照明(LED・太陽光グラスファイバー誘光)・⑤機器動作のための電力(コンセント使用のインフラ電力)・⑥移動のための機器燃料または電力(水素燃料・アルコール燃料・バッテリー使用)を用いる。全てのエネルギーが太陽光などの自然エネルギー由来でなければならない(21.4.26「未来世界における再生可能エネルギー」)。将来は植物の臨界水熱分解やメタン発酵菌によりメタンにまで分解され、そこからプロパン・エチレンというような原料物質が効率よく生成される時代が来るであろう。細菌の生化学反応を利用した物質変換が主流になるだろう。動物はミンチ処理して食用にする時代も来るであろう。無駄を出さないこと、自然界でのメタン発酵による温暖化もしくは酸化(燃焼・火事を含む)によるCO2増加を防ぐことが肝要であり、植物は可能な限り炭化するか、人工的にメタン発酵させてエネルギー化する。。

  ①の冷暖房は地熱利用を原則とし、どうしても必要な部分にだけ電気利用の冷暖房設備を設置する(21.7.21「高温大気下における人間活動 」)。その設備が必要な住宅部分は居間・書斎(ON/OFF切り替え可)・トイレ(切替可)であろう。ここでは人間は動かないため暑さ寒さを感じやすい。冷暖房設備は効率は悪いがアンモニア利用が良いだろう。漏れの検知もしやすい。フロン関連物質は代替と称するものを含めて一切使用できない。地熱利用の場合は地熱交換機を地中の適度な深さにまで埋めて、パイプにステンレスフィンが多数付いている熱交換器により熱交換する。使用液体は水で良いだろう。パイプの腐食を防ぐための塗料を塗るか、プラスチックをコーティングすることが望ましい。光のない場所での耐用年数はおよそ50年から500年を目標とする。交換できるようにしておくことが重要である。

  ②の給湯は太陽光集熱で行うのが良い。およそ15~45℃の温水が得られる。ノムの実験では倉庫屋根の垂木の上に強化ガラスを張り、屋根のカラー鉄板で熱せられた熱風を換気扇で誘引して熱交換を行い、温水は給湯タンクに溜めている。風呂を沸かす用水として使っている。熱交換器は25年前に75万円で製作してもらった。うまく機能していると思っている。集熱装置は屋根と一体工事となっており、61万円となっているが、貯湯設備等を含めて太陽光利用貯湯姉システムは全体的におおよそ200万円であった。これらの費用は政府から借り受けることができ、無利子返済で500年という長期の返済になるため、微々たる返済となる(20.11.28「未来世界の経済を考える」)

  ③の調理設備は残念ながら都市ガスに頼った。④の照明⑤の電力も都市給電に頼った。⑥の移動手段もまだ電気自動車が登場していなかったので、ガソリン自動車に頼った。これについては既に現在、各種の電気自動車が登場しており、太陽光発電・蓄電による短距離使用の小型自動車が未来世界の主流となるであろう。

  地上部には、①屋外作業倉庫(物置)・②太陽光パネル・③小動物(鶏・兎)飼育スペース・④菜園・⑤堆肥場・⑥休憩室、などが配置されるため、1世帯の占有面積は最低でも7000㎡(200坪)~1000㎡(300坪)は必要であり、現在の都市部平均敷地面積を1600㎡(50坪)とすると、4倍は必要となる。未来人口が20億人と想定すると、現在の78億人の約1/4になる計算から、既存開発面積内で計算上は賄えることになる。

  以上はあらましの環境シェルターのアウトラインを示したものであり、より具体的な図面を用意したいところであるが、あいにく頭の中には構想があるが、それを図面化する能力に欠けているので、これ以降は専門の方々にお任せしたい。


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