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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

物品購入で環境問題を考える

2022-08-11
  先日補聴器を紛失し、ネットで同じ製品を別の通販会社から購入した。値段はほとんど同じだが、訳の分からない袋がおまけに付いてきて戸惑った。また過剰包装と考えたくなるほど、いろいろな包装材が使われていた。これらの無駄を省くことで環境への負荷が小さくなると考えたが、それは食料品を含めて物品購入の際にいつも感じることである。今回は日常的なこうした問題に目を向けて、環境問題を考えてみたい。

  補聴器は今回は紛失の可能性を考えて、左右両耳用の2つを購入した。価格は5万8700円で、アマゾンを通して通販〇〇本店という通販会社から買った。段ボール箱に入って届けられたのは良しとしよう。日本の段ボール再生率は95%以上を誇っていると言われているので、決して無駄ではないと思われる。緩衝材には大きな枕状のポリ袋が3つ連なったものと小さな丸いプチプチと呼んでいる緩衝材が一枚入っていた。これはストレス解消に仕えるので、多少の役には立つがプラスチック廃棄物になることに変わりはない。付属品の空気亜鉛電池(水銀不使用)が2セット、合計12個付いてくる。これは余計な透明プラ袋に入っていた。この透明袋は不要なはずである。補聴器本体は不必要なほど大きなプラ容器に入っており、これは不透明(黒)なので不便なために使わない。他の利用法も考えつかず、無駄な廃棄物となる運命にある。そして他の商品の広告チラシが1枚入っていた。2商品を紹介しており、室内空気清浄機(滅菌)であるとともに、1商品は涼風機でもある。電気代が1時間1~1.5円であるのが魅力的である。他に保証書と取り扱い説明書が入っていた。問題はネット模様のファスナー付き透明袋である。これは商品を入れるためとは思えず、何のために使うのかがさっぱり分からない。単なるオマケとしか思えなかった。何かの用途には使えると思うが、将来プラゴミを増やすことになる。

  こうした余計な無駄をはぶくことによって、今回の商品配送の場合、たとえば緩衝材を再生紙などを使うことなどによって、プラスチックを90%減らせるだろう。食品などでも、流通の都合から個別包装(大部分がプラスチック使用)されていることが多く、これも昔のように裸販売されれば、恐らく50%のプラスチックを減らせることができるだろう。特に幼児のための玩具などは最大のプラスチック廃棄物を生んでおり、その多数を金属・木製に替えて、リユース(再使用)すれば、プラスチックゴミは激減できると思われる(21.3.10「プラスチック汚染の考え方」)

  今日では買い物をする度にプラスチックのゴミが発生し、プラスチックゴミ専用のごみ袋はたちまち一杯になる。かさばるものが多いため、質量にしてみればわずかなものであるが、塵も積もれば山となるの例えのように、各家庭から出される「燃えるゴミ」の5%程度がプラスチックとされる。食品の包装用プラスチックは現代文明の象徴のようなものであり、これが無くなると輸送・商品展示などに決定的な支障を生じる。もはやこれらは欠かすものができないものになっているが、無駄を無くせばそのうちの10%くらいは減らせるような気がする(4.26「人類の原始生活と文明生活」・5.26「世界に誇る「もったいない」精神」)

  ノムは保存食品としてフルグラ(乾燥果物+乾燥穀物+各種ビタミン)を買い溜めているが、それは金属コーティングを施したプラスチック袋に入っており、チャック付きなので便利している。公称賞味期間は6ヵ月程度のようだが、実際には何年経っても食べられると思われる。この袋は丈夫であるためセメントを小分けしたりして重宝しているが、太陽光に当たるとやはり劣化して、1年程度で表面の透明フィルムが剥げてくる。一方、土の中に埋まっていたプラスチックゴミは、25年経っても劣化していなかった。プラスチックに酵素を加え、一定条件下で生分解が起こるようにした生分解性のバイオプラスチックも開発されつつあるようだが、一刻も早く石油系プラスチックからこのようなバイオプラスチックに転換していかなければ、地表には「人新世」と呼ばれる地質学的地層が形成されていくことになり、その最大の特徴は大量のプラスチックゴミが見つかることになるであろう(6.19「生分解性プラスチックの欺瞞と希望」)

  時間が数万年を経ても変わらないものとして、金とダイアモンドが挙げられる。これらは貴重な資産にもなり得るものであり、希少であるため高価だが、プラスチックは未来世界にとっても何の価値もないどころか、汚染物質として認識されるようになるであろう。プラスチックは人工的に合成された物質であるため、自然界にはこれを分解できる微生物はまだ存在しないとされている(もしかしたらそうした微生物が進化によってどこかに生じているかもしれない)。プラスチックが流通し出したのは19世紀後半と言われ、セルロイド・ベークライト・レーヨンなど、懐かしいものがもてはやされた。市販品から工業品に用途が拡大し、建築業界でも欠かせない資材となった。これらは最終的に燃やされるか埋設されるが、何%かは細かく砕けてマイクロプラスチック(5mm以下)となり、環境(特に海洋)に拡散する。さらにマイクロ化されてマイクロプラスチックになると人体からも排出が難しくなるとされる。母乳にもこれが検出されたことから、プラスチックに添加される耐候剤(紫外線吸収剤)・難燃剤が大きな問題となってきた。母乳に含まれる難燃剤は、子供の知能指数を低くするとの研究もあるらしい。

  結局人間は物質循環というマクロな自然界の仕組みからは逃れられないようだ(1.10「循環型社会・再使用・再利用」)。「ブーメラン効果」という言葉もあるし、「自業自得」という言葉もある。人間がやったことは、自ずと人間に還ってくるのである。ノムは科学に携わった者の一人として、以前は「科学技術が全てを解決する」と信じていた。確かに「公害問題」は科学技術で解決されたが、「環境汚染」と「地球温暖化」は残念ながら解決できないことを悟った。今では、人間が創り出したものが人間を滅ぼす、とさえ考えている。自然界に無い物質を現在人間はあまた作り出しているが(医薬・農薬)、それらが人間に災厄をもたらす可能性すら危惧されるようになった。ノムは現実主義に立つため、短時間で害が出ないものであれば、利便性や有効性を優先させて使用するのは仕方のないことだと考えるが、だからと言って無駄な使用や贅沢な使用を許容するものではない(21.6.2「現実主義」)いつかはそれらの報いが自分に還ってくると分かっているからである。

  改めて政府や産業界に要望したいのは、大局的視点から、生産と消費について考える際にはその後の影響を100年単位で考えてほしいと思うのである(21.10.5「企業環境問題意識アンケート」)。ノムの視点からすれば1000年後をも考えて欲しいものである。科学者・実業家・政治家はこれまで、目先の利益しか考えてこなかった(21.10.4「環境問題意識アンケート」)。それが日本では公害をもたらした。だがその知見が広まったお陰で、公害というものは余程の貧困国か独裁国でしか見られなくなり、先進国はこれを克服したと自惚れてしまった。だがその先進国が、地球温暖化や地球汚染の最大原因者であることを素直に認め、脱化石燃料・脱人工物質を押し進めてほしいものである(20.11.23「地球温暖化と動物窒息死の問題」)。ある意味で、プーチン戦争はその良い切っ掛けに成り得るのかもしれない(2.27「日本政府は国民に呼びかけよ!」)


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