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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

世界は人口爆発を脅威と捉えていない

2022-07-12
  自然界では生物の中の1種が異常に繁殖した場合、それは自然界の持つ調節機能で急激に減少して恒常性(ホメオスタシス)を保つという仕組みがある。現象的にはカタストロフィの一例とされる。だが人類(ホモサピエンス:知恵のある人)は知能を持ったが故に、その生存競争の果てに同属である他のヒト属を滅ぼし、唯一地上に生き残った。そしてその知能を用いて自然界を征服し、破壊し、生物絶滅現象をもたらし、ついに自然界に異変をもたらした。それが地球温暖化という現象である。だが国連は、地球温暖化という問題に対しては近年になってやっと危機意識を共有し、SDGsというキャンペーンを繰り広げて温暖化防止に躍起になっているが、このほど国連事務総長のアントニオ・グテレスが、人口が今年中に80億人に達するという見通しについて述べた言葉が異様であった(《国際》7.11・21.12.21「SDGsプロパガンダ」)。すなわち、これは人類が寿命を延ばし、妊婦と小児の死亡率を劇的に減らした医療・保健の進歩の結果であると人類を称賛したのである。即ち人口増大は喜ばしいことであるとしたのである。以下ではその見解に対する反論を試みたい。

  上記したように、地球温暖化は人類の異常な繁殖とその活動によってもたらされた。他の生物は異常繁殖したとしてもせいぜい数十年内に減少し、しかも物質循環の範囲内で済むことから地球全体でみれば問題はないが、人類の場合はその活動の活発化のために化石資源(石炭・石油・放射性物質・メタンハイドレート)を利用し、地球が何千万年も掛けて貯蔵したものを、数百年間放出し続けた。科学的に考えても、大気にCO2が蓄積し、温暖化が地球時間から見て短期間に起こることは自明の理であり、結局温暖化の究極原因は、①人口の爆発的増加・②地球の貯蔵系の短期間消費、にあることは明白である。ということは、グテレスはそうした科学的知識のイロハも知らないということになる。

  グテレスだけに責任を負わせるつもりは毛頭ない。世界の科学者でさえ、温暖化の原因が上記2点にあることを正直に語る人はほとんど皆無である。未来科学者でさえそのことを指摘していない。ましてや世界の政治家も同様であり、世界の人々に至っては、そうした情報すら知らない。なぜ世界が人口爆発を脅威と考えていないのかというと、それは「人間生命至上主義」というものに凝り固まっているからである。科学の成果を「偉大な人類の成果」とし、特に西欧では「人間の基本的人権」を最大の権利だと吹聴している。そうした西欧思想が、日本をも浸食して、日本人が古来から持つ「自然との調和」という理念を破壊した。近代になって日本が戦争に突き進んだのも、戦後になって科学技術を駆使して「公害」をもたらしたのも、すでに古来からの理念の価値が見失われていたからである。

  だがこうした自然界の摂理というものが分かってきたのはつい最近のことであり、21世紀までは人間は科学の力を使ってやりたい放題のことをしてきた(21.5.3「自然の摂理」)。原爆を大気圏内で爆発させるというおぞましい殺戮手段を使い、戦後になっても米ソは競って核実験を繰り返し、ついにソ連は「ツァーリ・ボンバ」という史上最大の水爆を開発したとされる。1961年10月30日にノヴァヤゼムリャで、大気圏内核実験として実験されたが、余りに恐ろしい結果をもたらしたとされ、その後は生産されていないため現存していない。その威力はTNT換算で約100メガトン(第二次世界大戦中に全世界で使われた総爆薬量の50倍)の威力を誇り、実験では50メガトンに制限されたものの、それでもなお広島型原子爆弾「リトルボーイ」の約3300倍もの威力を有し、その核爆発は2000キロメートル離れた場所からも確認されたという。 

  戦後に平和に徹したと言われる日本でも、上記したように公害を引き起こし、米国は繁栄の頂点に達して、世界のエネルギーの半分を消費していると言われた。そうした人類の際限のない競争・贅沢・利便性の追求は今なお続いている。しかも人口爆発はその勢いは多少弱まったとはいえ、なお留まるところを知らない。国連の想定では、世界の人口は2030年に85億人、2050年に97億人となり、2080年代に104億人前後でピークに到達、2100年まで同水準で推移するとみられている。ノムが環境問題に取り組み始めて間もなく、この問題の原因の中で最も重要なのが人口爆発であることに気付き、人口曲線を描いてみた。人類が誕生したのが30万年とされるが、その祖先である原人を含めて300万年を横軸に取ってグラフを描いたところ、現代で底辺から直角に曲がる異様な曲線となった。細かく見れば、産業革命以来の人口急増となっており、人間が技術を得て化石燃料を使い始めた頃が転換点であることが分かる。

  こうした生物数曲線はバッタの異常繁殖では良く知られている現象であり、カタストロフィ現象の典型例としてもよく引用される。人間も同様な運命を辿るとすれば、今世紀内に破局が訪れることは誰にでも予想がつくであろう。そこでノムの属する研究会が主体となって著書が出版された。題名は『人類は80年で滅亡する』というものであり、2000年に出版されたことから、2080年には人類は滅亡していると予想した。これには著名な科学者であり教育者でもある学者(本人にご迷惑を掛けたくないので名は伏せる。だが著書を探せばすぐわかる事である)が著者の一人となっており、この主張は彼の人口曲線からの試算が根拠となっている。

  現在、世界ではプーチン戦争の余波として食糧問題が深刻になっている。だがこの戦争があろうとなかろうと、温暖化による淡水資源の枯渇や農地疲弊、そして旱魃や洪水の多発によって、いずれは地球は人口を支えきれなくなるその限界をノムは、35年ほど前に100億人と考えた。その人口規模に至る前に、人類は各種のストレスの増大により戦争を拡大し、ついには核戦争を引き起こすと予想した。その現実がまさに現代に起こっている。ノムが35年ほど前に予想した大災厄の到来時期は2020年頃というものであった(21.12.13「ノムの予言の意味」)。そして予想通りにまずコロナ禍がやってきた(20.6.6「コロナ禍は未来世界を一部映し出した」)。その収束も目前かと思われた今年になって、プーチン戦争が勃発した。どちらもごく一部の人しか警告しておらず、大半の予想に反して起こった事象である。だがノムにすれば、それは科学的にみて起こらなければならない状況であると判断される(21.1.18「状況理論」)

  最初のグテレスの「人類繁栄の称賛」の話に戻ろう。もし国連のトップがそうした誤った認識に立っているのだとすれば、世界の人々が人口爆発を脅威と捉えていないのはごく当たり前の話になる。世界の国々は、むしろ人口減少に脅威を感じている。それは国力衰退に繋がるからであり、相対的競争力を減少させるからである。だがノムの目から見れば、人口減少は理由がどのようなものであれ、喜ばしい事である。勿論現状でのコロナ禍や戦争での人口減少はわずかなものであり、相対的に喜べるほどのものではない。だが人々の意識が未だに「人類繁栄の夢」の中にあるのだとすれば、もはや人間の努力に期待することはできない。ノムは科学・政治・経済・司法・倫理・道徳・哲学などの観察をしてきたが、どの分野に於いても希望が見いだせるものは無かった。あとは自然が然るべき罰を人間に与えるであろう。ノム思想の中で「運命論」を重視しているのは、現代の諸相からの結論であり、未来世界では人間がより知的に進化すると思われるので、未来世界では運命を切り拓く余地ができるであろう(20.9.7「ノム思想(ノアイズム)とは何か?」・20.11.7「運命論」・21.4.8「ホモサピエンスからネオサピエンスへの進化 」)


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