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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

田園都市構想(3121文字)

2021-02-09
  「田園都市構想」というものは、およそ1984年頃から考え始めたものである。その後これを何とか自分の家で実験したいものだと考えたが、その構想の一部である「環境シェルター構想」でさえ全く見通しが立たなかった。だが天はそのチャンスをくれた。バブルが起こったからである。東京の土地を高く売って地方に500余坪の土地を手に入れ、両親共々引越した。億単位のカネが動いた。だがそれでも実験設備を整えることはできなかった。それは両親の生活と住まい、そして我々家族の生活と住まいを優先したからである。だが実験に使えそうな大きくて立派な納屋を手に入れた。その後その土地が河川改修のための収用対象であることが分かり、再度引っ越した。これは千載一遇のチャンスとなり、半地下の実験室を建てることができた。地下部分は鉄筋コンクリート造であり、遮水工法を取り入れた。年間の温度変化や湿度変化などを記録し、十分に実用的であることを確認した。現在も作業場として役に立っている。

  この新しい土地(約300坪)で畑(約100坪)を造ることもできた。自家菜園としての機能を果たせるかどうかを試した。最大で年間500キロを上回る収穫を得たこともある。だがサラリーマンには広すぎると感じ、田園都市構想では1世帯当たりでは50坪で十分であろうと思われる。もし熱心な園芸家であれば、もっと広くても管理可能かもしれない。勤務先を変えなかった(転職しなかった)ため新幹線通勤となり、夜の帰りは9時を過ぎるのが当たり前であったので、菜園管理は夜中の作業となることが多かった。照明設備を施したことで、「ナイター園芸」と称して管理に没頭した。現在はむしろ果樹・花卉に主体を置いているが、山芋だけはずっと続けている。これは最小面積で最大の収穫を与えてくれて、しかもその栄養価は非常に高く、近年健康食品として人気が出てきている。こうして田園都市構想の基本的概念である、地下生活・家庭菜園、という2つの要素については自分で納得したため、自信を持って推奨できるのである。

  実験では稲作も行った。3年ほど続けたが、成果はまあまあの出来であった。その時に作った稲の籾は今でも保存している。また自家廃水を蒸発散浄化方式で処理しようと、中古浄化槽を埋め込んで処理実験を行ったが、これは目詰まりで失敗した。だがもっと計画的にやれば可能になるであろう。そのことで、自家廃水(トイレ廃水・台所廃水・風呂廃水)を全て土壌浄化することで、栄養化することが可能になると思われる。本当ならば、トイレを改造して糞尿を分別処理し、人糞はメタン発酵させて燃料化することができるだろう。だが時間が無くてその研究にまでは手が届かなかった。現在の地では27年住んでいるが、これまでに炭焼きを習い、これからヒントを得て学術論文(提言)も書いた。それは雑草・籾殻・ホテイアオイ(河川浄化に使用)を処理工場で一括処理して燻炭を製造することで、大気中の二酸化炭素循環を貯蔵系にもっていくことで地球温暖化を防ごうという提案である。他にもいくつか環境関連の論文を書いた。また2000年にはゴーストライターとして著名な著者らによる一般書に寄稿した。その書名は諸般の事情から伏せる。こうした経験を基に、2010年から「メモ書き」と称してテーマ別小論をまとめ始め、「田園都市構想」というテーマについて書いたのは2014年9月である。頭の中の構想は36年の年月を経てきたが、書いたのはおよそ6年前ということになる。

  田園都市構想は、人類が地球と共存していく上で欠かすことのできない生存スタイルを指す。化石燃料を原則使用せず、鉱物資源の無限な採掘を慎み、物質循環・エネルギー循環を重視した生活をシステムとして形成することでその実現を図ろうとするものである。まず重要な点をいくつか先述しておこうと思う。①人口は20億人以下に減らす②化石燃料は原則燃料としては使用せず、回収再生可能プラスチックの原料製造に用いる・③エネルギーは自然エネルギー(再生エネルギー)・原子力水素エネルギー(高温ガス炉)を主体とし、もし核融合エネルギーが実現したならば、それに一部は転換することになるだろう。送電は直流でロスを少なくし、変電所で交流に変換する(直流送電)。④人は住まいの場所を地下に移し、地上は道路も緑で覆われるようになり、一見すると上空からは緑化された大地のように見えるであろう。地下住居は冷暖房に使用されるエネルギーを大幅に減らすことができる。⑤各家には菜園として150~300㎡ほどの土地が割り当てられ、主として雨水と地下水で野菜などの栽培が行われる。⑥交通機関としては地下鉄が主体となるが、郊外では陸上輸送(鉄道)となる。航空機はほとんど使用されない。⑦陸上交通手段としては自転車が最優先され、その次に電気自動車となる。電気自動車の使用はコストが非常に高くなる。⑧物流手段としてはニューマティック輸送システムが主体となるだろう。これは原則として地下に埋設されるが、都市間では地上にあっても構わない。同様に遠距離輸送では地下式電動輸送システムも開発されるかもしれない。リニアモーターを使用するかどうかはそのエネルギー効率次第である。⑨各国との貿易は原則無くなる⑩資源は連邦の管理の下に置かれ、各国に適切に配分される。そのための輸送船舶・輸送航空機のみが使用可能となる。⑪職住接近となるため、ほとんどの人が徒歩通勤・自転車通勤となるだろうが、遠隔地への通勤の場合にのみ電気自動車の使用が許可される。⑫事務処理系の仕事は在宅勤務となる。現在流行りのテレワークが主体となる。⑬会議・商談などは全てネット上で行われる。それは全て記録される。⑭本人認証は指紋・顔・体内埋め込みICのどれかで行われる。⑮全ての人の行動は体内埋め込みICまたは監視カメラにより把握可能となる。よって犯罪は激減する。

  以上が田園都市構想のコンセプトである。詳細をここで全て説明することは不可能なので、各論の中で述べていきたい。このような人類の生き方は、おそらく産業革命以前の生活スタイルに未来的技術を加味させたものになるであろう。それは決して自然環境に負荷を掛けるものではなく、完全に環境との調和が図られるものとなる。簡単に言えば、人間は生物種の1つとして、ささやかに地球という場所に生かさせてもらうという非常に謙虚な考え方に立つことを意味する。政治体制をここで述べることはできないが、人間世界には技術格差などにより不平等は残ることになるが、餓えや貧困からは解放されるだろう。また自然災害に対してもかなり強力に対抗できる。住むには適さない土地からは人間は撤退することになり、自然生態系が大幅に増えることになる。コロナ禍などのようなウイルス・細菌による攻撃からも強靭であり、家族・地域までの被害で済むであろう。田園都市には密集という状況や遠隔地への人的交流というものがないからである。人は生まれて3歳ほどで言葉を話すようになって初めて人として社会に認められる。また足腰が立たなくなった時点で寿命を迎えたと判断され、安楽死を認められる病魔による苦しみからは解放されるであろう。そして何よりの朗報は、生殖本能から生じる性欲から解放されることであろう。これまでタブーとされてきた事柄はもはやタブーではなくなり、人は生存本能・生殖本能・知的大脳本能の全てに亘って快適さを享受することができるようになる。それはノム世界の最大のメリットであり、また永遠に追及されるべき理念である(20.9.7「ノム思想(ノアイズム)とは何か? 」参照)


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