本文へ移動
【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

水害地に環境シェルターの設置を!

2021-07-17
  
  災害の多い日本では毎年、梅雨になるとどこかで水害が起こる。そのたびに被災地の人は運命とはいえ大変な思いをされているだろうな、と同情の念が沸き起こる。もし自分が同じような被害に遭ったらどんなことを要望するだろうか、と考えたとき、1ヵ月ほどでとりあえず同じ場所の同じ土地に住まいが確保できたら、苦難の1ヵ月も耐えられるだろうと考えた。水や食料などは自治体が用意してくれるので何とかなるが、住まいだけは自分で立て直すかしなければならない。だが国家は多くの予算をつぎ込んで本来不要の老人医療に多額の消費をしており、軍事や科学技術開発のために莫大な予算を注いでいる(20.2.16「世界の軍事費が平均でも4%増 」・20.8.18「米中に見る科学技術開発予算と軍事費の推移 」)。未来世界ではこれらが無くなるので、被災者への給付ができることになる。そうした思いに考えを巡らしているうちに、被災地に環境シェルターを設置することを思いついた。以下では具体的にその構想を述べたい。

  ノムは未来世界のあるべき姿を想い描いて「田園都市構想」というものを37年ほど前(1984年頃)に考えた(2.9「田園都市構想」)。だが当時は日本では地下というものに不安があり、特にそれは湿気の問題であった。当時からアメリカでは地下室は当たり前に作られており、それは乾燥気味の風土であったからであり、ボイラーなどの諸設備は地下に設備し、寝室は地下(一定温度)というものが多かった。日本ではそうした考え方が育たなかったが、筆者が家を建てる頃(1993年頃)に高気密高断熱工法というものが登場してきていたため、これを環境シェルターに応用できないかと考え、実験的な倉庫を小さな建設会社に半地下で作ってもらった。大手のプレハブメーカーでは自由な発想が不可能だったからである。ここに太陽光で得た温水や温風を送り込んで、ある程度の生活実験もできるようにした。太陽光発電は後になって2007年に追加した。

  この実験用環境シェルターは1998年に建ててから既に23年を経過するが、今のところ何の支障もなく、作業場や倉庫として使っており、非常時にはシェルター機能も持つため一時的住まいとしても使えるようになっている。食料品もかなりため込んでおり、コメは2年分ほど貯蔵している。だが資金不足から入口が完全に遮水構造になっておらず、水害にあったら水没する運命にある。これをなんとか水害にも地震にも強い構造にしたいと常々考えてきたが、そのアイデアが今回浮かんだ。地下部分に鋼鉄製の遮水ドアを水平に設け、水害が予想されたらその前に事前に電動モーターでゆっくり遮蔽することで、50%ほどの安全率で水害から逃れることができるだろう。基本的に地下シェルター構造なので地上の部分が津波や鉄砲水で流されたりしても、あるいは冠水しても、地上部分とは分離されているので地下には害が及ばない。浮力で浮かび上がらないように地下地盤には固定されている。仮に浮かび上がったとしても、舟のように水上に浮かんで漂流できる(まるでノアの箱舟のようだ)。地震には90%以上の確率で安全であるが、室内には多少の被害があるだろう。

  重要なのは地下シェルター全体が遮水構造になっていることである。筆者の実験棟も四角い箱型になっており、外部から水が入るような穴はない。コンクリート外面にはスタイロフォームを貼っているので、普段も水の浸透はほぼない。ただ前述したように入口だけは平面的に開放されているので、そこから水が入る可能性は大きい。未来世界のシェルター住居ではこれらの問題点を解決したものがモジュールとして販売され、市民は各種モジュールを繋ぎ合わせた一体型のものとして発注できるだろう。あるいは日本では運搬道路が狭いので、個別モジュールを現場でつなぎ合わせる方が実用的である。モジュールは①台所と風呂・トイレという水を使用するモジュール②居室モジュール③寝室モジュール④水タンクモジュール⑤廃棄物一時ストックモジュール⑥物品貯蔵と食料貯蔵モジュール⑦トイレ廃水と雑排水処理モジュールなど7要素からなるが、レゴのように横に継ぎ足していけるので、最初は①・②・③・⑦だけから始めることもできる。1モジュールの価格は現在の日本の貨幣価値でおよそ1000~3000万円ほどになるので、7要素全部を揃えるとおよそ1億5000万円ほどになる。

  未来の経済は計画経済であり、非競争経済であるので、借金は国家から無利子で借りることができ、何代にも亘って返済が可能であるため、初期投資に500万円ほどあれば、100年ローン(3代ローン)で年間返済額は150万円となる。シェルターは公式耐用年数を500年と考えているので、建設費用というものはほとんど問題にならない。初代には多少の返済苦があるが、残りの400年はメンテナンスと内装費だけで済むことになる。ちなみに筆者はバブルの時に土地を転売して得た資金でこの床面積60坪ほどの倉庫を2200万円で建設したので借金はない。誰もがそんなことは夢物語だと考えるが、それは思い込みであり、世界の経済システムを変えて、建物の耐用年数の概念を一新させれば、それは合理的結論として得られるものである。そして世界の経済システムは連邦制になることで一変させることができる(20.11.28「未来世界の経済を考える」・3.30「未来世界の経済における「相対比按分」の考え方 」)

  水害地に優先的にこのようなシェルター型住居を建設して被災者の救済を迅速化するとともに、それを各市町村で率先してモデル化して普及させれば、世界的に有数の防災集落が形成されるであろう。各国の経済格差は当面どうしようもない問題なので、数百年掛けて徐々に富裕国から貧困国への住宅支援・教育支援・技術支援をする(生活支援は行わない。自給自足原則に従う)ことにより、貧困国でも環境シェルターの建設は可能になると考えている。これは今すぐの問題解決ではなく、数千年・数万年の長期に亘って安定した人間の存在を保証する考え方に基づいており、安易な直近の期待を持つべきではない。だがそれが完成に近づけば、500年シェルターの上にサンゴのように新たな住居を積み重ねていくことで、人類の生存は数万年に亘って長期に安定して可能になる。特に災害の多い日本は、経済力を生かして迅速に100年間で災害強靭化国家になることができるだろう。


TOPへ戻る