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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

世界連邦の可能性

2021-03-28
  これまで各所で世界連邦について触れてきたが、その構想について簡単にまとめておいた方が良いと考えた。すでに本論として書いてあるので、この【時事評論】ではそれを大まかにまとめた形にして提示する。詳細は以下のリンクから参照していただきたい(006「世界連邦形成の可能性」 参照)

  第二次世界大戦後、アルバート・アインシュタインや湯川秀樹など世界的に著名な科学者たちは、核戦争による人類全滅を避けるために、他のいかなることにも優先して、国連の改革、強化による世界連邦の樹立を断行すべきだと力強く訴えた。各国の熱心な世界連邦主義者達は1946年にルクセンブルグに集まって、「世界連邦運動」(WFM)の前身である「世界政府のための世界運動」を組織し、その第一回大会を翌1947年、スイスのモントルーで開いた。23ヵ国から51の団体代表が集まり、いわゆる「モントルー宣言」を発表し、世界連邦の6原則を明らかにしたのである。以下にそれを掲げる。

1)全世界の諸国、諸民族を全部加盟させる
2)世界的に共通な問題については、各国家の主権の一部を世界連邦政府に委譲する。
3)世界連邦法は「国家」に対してではなく、1人1人の「個人」を対象として適用される。
4)各国の軍備は全廃し、世界警察軍を設置する
5)原子力は世界連邦政府のみが所有し、管理する
6)世界連邦の経費は各国政府の供出ではなく、個人からの税金でまかなう。

  だがこの思想が自由民権運動の延長線上にあったため、筆者の唱える世界連邦構想とは大きく異なることになった。上記の下線を付した部分は共通する事項であり、6)に関しても大筋同じであるが、決定的なのは国家の主権を残したことにある。当時の状況としてはやむを得ない判断であったろうが、これがこの宣言の価値を台無しにしてしまった。この宣言より前の大戦末期(1945年6月)にアメリカで出版されたエメリー・リーブスの『平和の解剖』という本の中で主張された、「全国家の主権放棄と連邦への移譲」という案の方が根源的に正しかった

  筆者はこれまでの歴史を振りかえっても、現代の状況を考えてみても、現時点でこのような理想的な提案が実現するとは露にも思っていない。それは第三次世界大戦後の混沌の中からしか生まれ得ないものであると考える(3.27「第三次世界大戦後の現実 」参照)。それも非常に可能性は低く、第二次世界大戦後においてもたったの51の団体しか支持しなかった事からも明らかである。だがその可能性がゼロではないことから、一縷の希望を託して世界連邦の具体的構想について提言してきた。それはモントルー宣言のような薄っぺらな文言とは違って、その理論的根拠・歴史的必然性・具体的手法・具体的構想、を網羅しており、後世の吟味に耐えられるものだと自負している。以下に筆者の主張する世界連邦構想の考え方の骨子を列記する。

1.市民は義務を果たして権利を得る。基本的人権というものは存在しない(4.3「人権主義の蹉跌」)
2.世界の市民は登録制により管理され、人格点によって得る権利が異なる(20.8.30「未来世界における人格点制度 」参照)
3.市民は賢人を養成・選抜することで賢人に運命を委ねる。
4.市民は決定権を持たず、評価権を持つ。それによって間接民主主義を実現する。
5.市民はあらゆる事象に評価権を持ち、それによって直接民主主義を実現する(3.16「評価主義の効用 」参照)
6.市民は思想の自由を持つが、それが行動になったときには責任を負う。
7.賢人は人格・人徳・実績・能力によって選抜され、社会のあらゆる分野の指導者となる
  (20.10.19「賢人を今から作るために「賢童」を育てよう 」参照)
8.未来社会は四権分立(立法・司法・行政・市民評価)の考え方に立つが、
  最終的には政府(各国政府・連邦政府)が決定権を持つ(3.29「未来世界の四権分立」参照)
9.未来社会は法律主義に道理主義を加えてその不備を補う(20.11.27「権威主義・権利主義からの脱却・法律主義から道理主義へ」参照)
10.判断・判定・裁定にAIを多用するが、最終的判断は人間による。責任を取るのは人間である(20.7.24「AIの適切利用 」参照)
11.連邦は軍事を独占し、国家は警察を保有。だが市民は部分自治を許される。
12.連邦は連邦憲法によって制限を受けるが、その権限の範囲内で強制権を持つ。

  その詳細についてはほとんどすべてのテーマの中で、「未来世界では・・」という表現で述べており、決して単なる着想・単なる絵に描いた餅ではないことを証明している。だがそれでも世界連邦成立の可能性はおよそ5%程度であり、すなわち全世界の指導者の圧倒的多数がこれに反対するだろうと考える。それは人間がまだ未熟で未完成な段階にあり、動物的本能である自己(自国)生存本能を優先させるからである。もし世界連邦が成立するとすれば、それは人類がもう少し高度に大脳的に進化し、より普遍的なものに価値を置くようになってからだと思われる。だが第三次世界大戦後に世界の覇権を握った国なり指導者が、ノム思想と連邦構想に興味を抱き、これを採用するならばもっと早くに連邦形成の方向に歴史が動くかもしれない。


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