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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2024】

【時事短評】イスラエルによる戦線拡大の可能性

2024-04-15
  イスラエルがイランに報復する可能性が高まっている。そしてそれは全面的戦争に発展する可能性が高いと言われている。イランは報復があれば、イスラエルに対して10倍・100倍にして返す、と荒唐無稽な強がりを発言している。迎撃に参加したヨルダンをも標的にすると息巻いている。パレスチナのハマスがイスラエルに侵入攻撃して以来、中東ではイランが後ろ盾になってイスラムによる西欧への過激派による攻撃が一段と激しくなり、今度はイスラエルによるシリアにあるイラン領事館に対する攻撃があったことで、イランが初めてイスラエルに直接報復攻撃を行った(23.10.14「イスラエルとハマスのどちらに大義があるか?」)今度はイスラエルは初めてイランに直接報復攻撃をすることになるだろう。それにより、イスラエルにはかねてから脅威となっていたイランの核開発を阻止するため、ウラン濃縮施設などを攻撃する可能性が高まっていると言われている。勿論これは1つの可能性に過ぎず、イスラエルにそこまで戦線を拡大する能力があるとも思えないことから、イスラエルによるイランへの報復は限定的なものに留まる可能性の方が大きい。だがイスラエルがイランを叩く格好の口実を得たことは確かであり、そのことによるイスラエルの再報復の可能性を探ってみたい。

  イスラエルは1981年6月7日、イラクがタムーズに建設中だった原子力発電所を空爆・破壊した。これはイラクが核兵器製造を目指していたと疑ったからであると言われている。同様にイランも核兵器製造を目指して、ウラン濃縮をしている。これは世界的に批判されているが、イランはそれでも濃縮を止めようとはしていない。報道はされていないが、イスラエルはイラクに対して行ったのと同様な攻撃をしたいと思っているはずである。だが1981年と2024年では状況が異なる。当時でさえイスラエルの攻撃は世界に衝撃を与えた。国際法を無視した一方的攻撃で、しかも唐突であったからである。しかもこの攻撃は米国製のF-16戦闘機8機を用いて行われた。国連安保理は非難決議案を採択している。イスラエルは今、ガザでの空爆を世界中から非難されており、そのような中で再び同じようなことをするとは、常識的に考えればとても思えない。

  だがイスラエルは国家の存亡を賭けてこれまで周辺のイスラム国家群と戦い抜いてきた(23.12.8「イスラエルとパレスチナの和解についてチャットGPTに聞く」)。現在の首相のネタニヤフは保守強硬派に押されて強行路線を歩んでおり、米国のバイデン大統領による制止勧告をも無視してきた。だがバイデンが業を煮やして、対イスラエル戦略の変更の可能性を伝えたことで、やっとネタニヤフも米国の意向を汲むようになった。今回のイランの攻撃によってバイデンは再びイスラエル擁護に傾いたようである。米英仏だけでなく、ヨルダンも迎撃に協力したという。米政府ではイランへのさらなる制裁が検討された。

  今回のイランによる報復攻撃(13日夜)は350発のミサイルとドローンを使用したと言われ、ある意味でイランの総力を挙げた攻撃であったのかもしれない。米政府高官は、イランの攻撃が想定よりも大規模で「困難な作戦だった。(全機撃墜の) 成功は準備のたまものだった」と語っている。革命防衛隊はかなり強力な戦力を持っているとされるが、勿論核兵器やICBMを持っているわけではなく、せいぜい中距離ミサイルやドローンで脅威を与えている程度である。イスラエルがイランの核施設、およびドローン生産施設に対して全面的攻撃を行ったら、恐らくひとたまりもないであろう。そしてそれはイランの対ロシアへのドローン輸出が停止することにもつながり、経済的打撃は計り知れないものとなるだろう。今は反イスラエルで熱狂的になっている一部のイラン国民が、ハメネイを永続的に支持するとも思えない。15日の深夜に入ったニュースによると、イランは今回の攻撃を「自衛」だとし、「(イランの) 自制的行動を評価すべき」と言い訳した。世界からの批判が予想に反して強かったことに反発・反応したものとみられる。

  米国を含めてほぼ西側世界がイランの報復攻撃を非難している。一方、イスラム側では一部に喝采も見られる。そのためもあって、イランは報復は1回限りであることを匂わせた。だがイスラエルの戦時内閣は「報復」で一致したという(22.11.13「エスカレーション原理」)。イスラエルはイランに直接攻撃の矢を向けることで、イランの支援と指示の下に動いているイスラム過激派のヒズボラなどへの武器供与を停止するためにも、イランのドローンやミサイル製造拠点を叩く必要があると考えているだろう。特に核兵器開発を密かに続けているイランの核施設、ウラン濃縮施設を叩かなければ、いずれイランは核兵器を持つようになるだろうと考えているそれができるのはイスラエルしかないし、かつてイスラエルはそれをやったそして今回、イランを攻撃する口実を得たのである。イスラエルがこのチャンスを逃すとは思えないのである。

(4.15起案・起筆・終筆・掲載21:10・4.16訂正追記)


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