【時事評論2020】
AIによる歴史検証(2121文字)
2020-12-15
NHKの大河ドラマの『麒麟が来る』も、12月に入って最終段階にきた。途中コロナ禍で抜けた部分を補いながらの撮影は大層苦労が多かったことだろう。その中で明智光秀が宮中に参内し、天皇の言葉を聞くという場面があった。本当にそんなことがあったのだろうかとウイキペディアで調べたが、そのような記述はない。それ以上調べようがなかったので、記事を検索しながらいろいろ勉強させてもらった。その中に、光秀が山崎で百姓に殺されず、生き残って天海になったという物語があった。この物語(仮説)を取り上げた作品が沢山あるところを見ると、結構人を納得させる根拠があるのかもしれない。そんなことを考えていて、歴史学的諸説について客観的な信憑性を示す指標をAIを使って作れないかというアイデアが浮かんだ(7.25「「世界安定度指数・World Stability Index」の提唱」参照)。
もともと歴史というものは文献や考古学的発見によって推論されて作られるストーリーであり、言ってみれば人間による創作である。多くの諸説が生まれるのは当然であり、その中の信頼度の高いものが定説となる。筆者は学校で歴史を覚えるものだと教わり、「なぜそのようなことが起こったのか?」という疑問を一度も教わらなかった。そのため歴史嫌いになり、理系に進むことになった。理系では全ての事象になぜ?が付きまとう。それを科学的知見で説明しようとするのだが、説明できないことも多い。最近書いた記事の中で、「まつ毛はなぜ適切な間隔に適切な数だけ同じ角度で生えるのか?」という疑問を書いたが、そんなことすらまだ分かってはいない(12.1「自然の叡智と人間の叡智」参照)。歴史であればなおさらそうなのであるはずだが、どういう訳か学校では「正解」だけが教えられ、疑問を持つことはタブーになっている。日本のノーベル賞科学者が「教科書を信じるな」と言ったときは、喝采して感銘を受けたものである。
そこで筆者が考えたのは、歴史的記述に全て専門家による評価を与え、AIにその記述の信憑性を比較させようというアイデアである(8.17「人間とAIの知能における比較とその役割」参照)。たとえば日本に、日本史に関する一次文献を読み込んでいる学者や郷土史家が1000人いるとして、1つの事柄についてその信憑性を評価してもらう。対象は何百万あるいは何億ほどもあるだろうから、一生かかっても終わらない作業となるが、その評価を基に、二次文献の評価を行う。その際には一次文献をどの程度参照しているか、どの程度根拠にしているかなどが計量されて二次文献(論文・研究書)の評価が定められる。同様にして三次文献や歴史小説などの評価をしていくという手法である。膨大な歴史資料をAIに読み込ませて比較させ、なおかつ歴史的法則や原理、そして他の事例との比較、また人間心理や行動原理、さらには社会学的法則や原理をすべて織り込んでAIに学習させ、その上で上記の歴史学者や郷土史家の評価を加えれば、自ずと信憑性の高い学説を生み出してくれるだろう。
当然のことであるが、この世紀の事業は汎用AIを数台使って実施され、そのAI同士の議論が行われることも含む。丁度囲碁のAIで次の一手について多くの可能性(歴史で言えば学説)が示されるとともに、その勝率(歴史でいえば信憑性)が示されるのと同じである(11.2「囲碁のAIに学ぶ」参照)。「アルファGOゼロ」が何のデータも与えずに、AI同士の対戦により棋士に100戦100勝するようになったのとは異なり、同じデータをあらかじめ複数のAIに記憶させて思考させ、人間の評価も加味しながらそこから出てきた可能性と信憑性の確率を、今度はAI同士の議論によってさらに勝敗を決めていくやり方となる。議論の合理性が保たれるとすれば、より信憑性の高い結果(仮説)を出したAIが勝者となり、その仮説が歴史的定説となるだろう。勿論それは真実ではなく、飽くまでも解釈の可能性の正しさの確率で表現されなければならない。
これが実現すれば、中国や韓国が行っている歴史の捏造や歪曲はたちどころに否定され、その根拠をAIが与えてくれるであろう(9.20「将棋の藤井聡太に見る 「人間とAIの共存」」参照)。その評価や根拠は客観的であるため、世界はその評価を最大に支持するだろう。日本は折角「富岳」という世界一のスパコンを開発したのであるから、くしゃみの飛沫がどう拡散するかなどというシミュレーション的な計算をやらせるよりも、この「歴史のAI評価」を武器にして、世界に日本の歴史認識の正しさを証明すれば良い(7.24「AIの適切利用」参照)。そうすれば、富岳開発に掛った費用以上の価値が生み出されることになる。そしてこの歴史評価は、未来を考えるに当たっても大いに役立つに違いない。未来をAIにシミュレーションさせれば、より安定でより平和な未来世界像を描いてくれるかもしれない。多分その未来像はノム世界とかなり一致するだろうという予測を筆者はしている(11.7「AIに期待する」・11.12「ローマ帝国と中華帝国、そして未来世界」参照)。