本文へ移動
【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

通報・告発・密告・白状・証言の是非論

2022-07-27
  先日22日のニュースの中に、各国首脳の不正蓄財などタックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴露し、2016年に報道が始まった「パナマ文書」の匿名提供者が南ドイツ新聞の元記者のインタビューに応じ、文書で巨額取引が暴かれたロシアのプーチン大統領の側近が、「スクープ者が生きる上で覚悟しなければならないリスク」を告白したというものがあった。「ロシアは私の死を望んでいる」と、報復を危惧していることも明らかにした。この記事はノムも同様のことを覚悟していることからとても共感を覚えた。ノムの書く【時事通信】や【時事評論】は歯に衣着せぬ大胆な物言いに満ちており、ときにはそれは各国首脳を痛罵していることもある。特に中国とロシアはノムにとって目の敵である。そこで、この際、「通報・告発・密告・白状・証言」という似たような事象について、考察してみようと思い立った。

  まず「通報」という行為であるが、これはたとえば火事の通報というような事例である場合は、社会的に奨励されていることである。道路の穴が修理が必要なほど大きい場合は、その役所への通報は善行と見做されるであろうが、財政の乏しい国では不都合な行為とされてしまうかもしれない。ノムの考える未来世界では、職場における明確な不正行為(法律違反)の通報は密告であると見做し、かつ正当な善なる行為と見做す。ただそれが、同僚や上司の足を引っ張る行為である場合もあり、通報者に対する調査も同時に行われる。それが社会貢献の意思から出たものであれば人格点が引き上げられ、職場での地位も保護される。だがいわゆる密告に相当するものであれば、大幅に人格点は引き下げられるだろう。どちらにしても通報という行為の範囲であるならば、それは大方人格点の引き上げによって報い、重大な事故なりを防止することができた場合には、表彰・報償ということも行われるだろう。

  「告発」という行為は、社会的不正義を指摘する場合を意味することが多い。その手段はまちまちで、上記パナマ文書の告発者は匿名で某団体にデータを送ったようだ。その団体は通信社と共同でこれを調査し、真贋を確かめたという。だが結局告発者の名は漏れ出てしまい、彼はプーチンから暗殺されるかもしれないと怯えている。告発を堂々と氏名入りで公表する場合もある。日本では驚いたことに、元首相経験者5人が共同署名した原発反対の意見書が、外国機関に送られた(21.3.13「日本の元首相5人の異常な脱原発思想」)。これは非科学的な迷妄による一種の政治的プロパガンダであり、日本を外国に売ろうとする売名行為であった。告発に値しないものである。多くの日本国民を、「日本はここまで墜ちたか」と慨嘆させるに十分なものであった。やはりパナマ文書の告発者が、これまでで最高の評価を与えられるべき人であろう。世界はこれを表彰するなりすべきである。一方米国の機密文書を暴露したウイキリークスの首謀者は、国賊者として世界から排斥され、ロシアに逃れたが最近は凋落したようである。その意図が明確でないこと、単なる売名行為であったことなどが評価が低かった要因であろう。

  「密告」は、多くは職場における不正に対して行われる通報を指す。戦場では仲間の裏切を指すこともある。これは当然のこととして密告者の氏名等は非公表扱いにされ、メディアに知られた場合でもメディアはこれを公表はできない。通報を受けた役所なり警察は、それなりの調査(密告者と被密告者の双方に対する内偵)を行い、密告として有意義なものであるかどうかを確かめる。あとは上記通報と同様な過程を経るが、表彰や報償はあり得ない。それは密告という行為は本来、人間として裏切行為に等しいものであるからである。だがその裏切り行為が社会にとって大きな利益となるならば、相殺勘定から密告者にはお咎めはないということになる。もし悪意や自己保身のために密告をした場合には、密告者の人格点は引き下げられるが、その幅は事例次第ということになるだろう。27日にはモザンビークで、先天性色素欠乏症(アルビノ)の子ども3人を呪術の儀式用に売ろうとしたとして、父親とおじを逮捕されるという事件があったが、それが発覚したのは匿名の情報提供者がいたからである。この情報提供者は恐らく正義感に駆られて警察に密告したと思われるが、その動機はどうあれ、結果的には犯罪を防ぐことに貢献した。匿名ではあっても、未来世界では密かに人格点付与が行われるだろう。

  尋問や拷問により、無理矢理白状させられる場合というものがある。戦時には特に捕虜に対して行われることがある。米軍は太平洋戦争時の日本人捕虜を丁寧に扱い、思想的に懐柔し、難なく白状させることに成功したという。独裁国では大方の場合、拷問により白状させることになる。ウクライナでは最近、拷問室がウクライナ兵や市民などに対して使われたという報道があった。しかしこれは戦争に付き物の事象であり、国際法(ジュネーブ協定)により禁じられてはいるが、無くなることはないだろう。未来世界ではこうした事例は無くなる可能性が高い。その理由の一つは未来世界では戦争というものが無くなること、二つ目は競争が無くなること、三つ目は尋問者にその責任が問われ、下手をすると人間社会からの追放という過酷な刑(死刑に相当)が待ち受けているからである(20.12.7「刑罰と追放・死刑廃絶に向けて」)。また未来世界では、通常の尋問による白状は白状者(筆者造語)の責任とする。警察における尋問が通常の形で行われるならば、自白した内容は自白者の責任の範囲となる。あとで覆した場合、その人格が問われることになり、偽証罪にも問われる。自白を強要したり、拷問を行った場合は自白内容は全て無過失虚偽と認められ、人格点は多少引き下げられるものの、偽証罪に問われることは無くなる。未来世界は自白の強要に対しては厳しい刑罰を科すが、白状者に対しては状況論から寛大な措置で済ませるだろう(21.1.18「状況理論」)

  裁判での証言や議会での証言というものは、裁判では必ず見られるものであり、最近米国議会で行われた公聴会は全米にテレビ中継されたし、それ以前にも何例もある(22.7.24「米議会襲撃事件の与党による公聴会は公正か?」)。日本でも野党が要求して高級官僚が答弁させられることがある。両者を比較してみると、米議会では真実追及が主たる目的であることであるのに対し、日本では野党が与党を追及するための手段と化している印象がある。野党は官僚から言質を取ろうと躍起になっており、真実を追求している姿はそこには見られない。証言というものが実際にどういう手続きで行われているのかノムは知らないため、証言者が強制的に召喚されているのか、招請に応じて自主的に証言しているのかは分からない。裁判に於いても、弁護側の証人の多くは承諾した上で証人台に立つのであろうが、検察側の証人というものがどういう経緯で証人台に立つのかは知らない。だがどのような場合でも証人になるということはかなりな覚悟が必要なはずである。その証言次第では、世の中の事案への評価が一変することもある。証言者の責任は、飽くまでも真実を述べるかどうかに掛かっており、それを果たしたと判明した場合は人格点を引き上げるべきであろう。逆に、自己の保身のために虚偽を証言したり、真実を隠そうとしたとすれば、人格点は大幅に引き下げられるし、偽証罪に問われる可能性も出てくることになる。

  以上のそれぞれについて論考してきたが、事案に直接関わりのない第三者が、事案について述べることの目的は、全て真実追及という点にあるだろう。そうした意味でこれらに関わる人は、自分の意思であれ招請であれ、真実を語ることに全霊努力しなければならない。それが社会の開明化に必要なことだからである。


TOPへ戻る