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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

防衛強国への道

2022-02-28
  前々項で日本の平和憲法について述べたが、最近の日本では敵基地攻撃能力」が話題になることが多い(2.27「憲法9条をどう見るか?」)。この言葉は非常に危険な側面を持っており、もしこの能力が先制攻撃に使われれば、憲法が有ろうが無かろうが、日本は攻撃国になってしまう恐れがある。また使われなくても中国や北朝鮮に対して攻撃される口実を与えることになる。そこで基本的に防衛にしか使えない兵器はないものかと考えているうちに、いろいろなアイデアが浮かんだ。そのどれもが素人発想ではあるが、一応科学を学んできた者としてその可能性があると考えるものばかりである。そしてそうした攻撃に適さない最新兵器を備えることは、技術立国と称してきた日本には可能であるとも考えた(21.4.3「韓国と北朝鮮の飽くなき兵器開発競争」)。そこで、日本を平和憲法に恥じない防衛強国にしたらどうかという最終的な考えに到達した。以下にその具体的な提案を行いたい。

  まず、兵器を攻撃型と防衛型に分けて考えてみる必要があるだろう。以下にその分類を示す。但し分類基準は、敵国にダメージを与える大きさで分けている。
 1.攻撃型兵器:ICBM(大陸間弾道ミサイル)・中距離弾道ミサイル・地対地ミサイル・核兵器・戦車・迫撃砲・速射砲・機関銃・ライフル・手榴弾・爆撃機・戦闘機・偵察攻撃機・航空母艦・戦艦・巡洋艦・潜水艦
 2.防衛型兵器:レーザービーム兵器(LB兵器)・マイクロ波ビーム兵器(MB兵器)・対戦車ミサイル・地対空ミサイル・レールガン兵器・ドローン兵器(偵察用を含む)・ロボット兵器・AI兵器・哨戒艇・手榴弾・火炎瓶
 3.報復型兵器:ICBM(大陸間弾道ミサイル)・中距離弾道ミサイル・核兵器(SLBM:潜水艦発射型)

  次に戦法を攻撃型と防衛型に分けてみる
 1.攻撃型戦法:弾道ミサイル攻撃(核を含む)・侵攻型攻撃(装甲車・戦車・迫撃砲・短距離ミサイル・機関銃使用)・包囲型戦法(敵国国境への兵器配備)・港湾封鎖・敵首都攻撃・大規模部隊集結
 2.防衛型戦法:ミサイル防衛システム・地雷戦法・パルチザン戦法(市民戦法)・ゲリラ戦報(基地移動戦法)・落とし穴戦法

  軍事態勢について、攻撃型と防衛型に分けてみる
 1.攻撃型体制:独裁国家・専制国家・強権国家・社会主義国家・軍事国家・国民動員法国家
 2.防衛型体制:民主主義国家・平和憲法国家・自由主義国家・国民皆兵国家
  軍事態勢については一般的には国家の中に軍組織を持つのが通例であるが、未来世界では戦争がないため国家の中に軍組織は必要なくなり、代わりに非常時に総動員体制が取られる形となるだろう。その場合、相互扶助的災害対応が主となる。連邦軍は攻撃型に属するが、主たる任務は世界の安定の監視と制御である。

  以上の分類を踏まえた上で、日本が取るべき手段は防衛型兵器の開発であり、中でもビーム兵器は有用であると思われる。その特徴を挙げたい。
 1.レーザービーム兵器(LB兵器):レーザーは直進性に優れており、狙いを付けたターゲットに正確に高密度なエネルギーを瞬時に照射できるため、たとえばミサイルに対して小さな穴を開けるなどして破壊が可能である。欠点は曇天・雨天では効果を発揮できないことがある。これは次に述べるマイクロ波ビーム兵器やレールガン兵器などで補うしかない。アメリカでレーガン大統領が発案したようだが、実用化したということを聞いたことがない。だが必ずや実用化可能である。敵ミサイルが地平線から上ってきた段階で照射するか、軍事衛星から照射するかがあるが、後者では高エネルギーを得ることが難しく、未来世界に可能になるだろう。日本は山岳に恵まれているので標高1500mの山なら60キロ先でミサイルに照射可能となり、ミサイル高度が高ければそれだけ早く照射が可能となり、核兵器であっても損害は小さくて済む。ただしミサイル補足可能な高性能レーダーや追尾装置が必要だが、日本にはそれらは揃っていると思われる。

 2.マイクロ波ビーム兵器(MB兵器):レーザー兵器と同様に集束ビームを照射することで、加熱破壊・電子装置破壊が期待できる。敵ミサイルは制御不能となり、少なくとも目標を外すことは可能であろう。

  以上のビーム兵器と並んで有効とされるのがレールガン兵器であり、日本はこの開発の既に乗り出した。以下にその有用性と欠点を挙げておく。
 .レールガン兵器(電磁加速砲):レールガンは、金属物体を電磁気力(ローレンツ力)により加速して撃ち出す装置である。原理的には古くから知られており、米国が最初にこの開発に取り組んだ。発射エネルギー源として大電流が必要になるため、発電所に併設するのが最良である。駆動力(ないしは破壊力)は電流の2乗に比例するため、大電流が要求される。発電所は敵国に依る最初のミサイル攻撃目標になることが予想されている。特に原発は狙われやすい。レールガンは近距離ミサイル防衛にも適しており、攻撃型・防衛型兵器の両方に属する2019年現在、米国・ロシア・中国・トルコ・日本などがレールガンの軍事研究を進めているとされる。米国では艦艇での実験も繰り返している。トルコ軍は多種の兵器応用能力を備える電磁砲を開発し、国際防衛見本市で販売しているそうだ。利点は弾丸がミサイルと比較し安価であり、火薬による砲弾の限界を遥かに超える高速度、かつ長射程を得やすいことにある。また速射も可能である。欠点は上記したように電源要求が大きいことにある。だが日本の技術力を最大限に発揮しやすい兵器であろう。射出速度は秒速8kmのものが開発されているそうだが、これは戦車砲の1.8kmと比べて格段の速度である。速射は毎分6~12発が可能だという。370km先のターゲットにマッハ5の速度で着弾させることができるという。使い方によっては攻撃兵器にもなり得る。

  他に上記に挙げた防衛兵器の中で、有用と思われるものについて追加説明を加えておく。
 .ロボット兵器・AI兵器:ロボット兵器にもAIは組み込まれるが、AI兵器と言った場合は、判断にAIが使われると考えるべきだろう(21.7.12「戦争の技術革命・AI兵器の登場」)。たとえば敵兵であるか味方兵であるかを見分けて道端の自動小銃が射撃するという場合はAI兵器と考える。これらは無人という点から、人的損失を減らす効果が最大の利点であり、また大きさに制限がないことから、埋設・隠匿が容易である。思わぬところから攻撃されるため、侵攻してきた兵士は恐怖に駆られることになる。ロボット兵士(ロボット警官)は未来の武力制圧に多用されることになるだろう。特に日本の場合は、侵略者に対する無人・自動の武器として有用となり、ゲリラ戦で最大の効果を発揮するだろう。日本はロボット技術の先進国であり、平和利用だけでなく軍事利用すれば、防衛強国になり得るのである。

 5.対戦車ミサイルにもカメラとAIが搭載され、敵認識追尾方式が取られることになる。すなわち見えない位置から戦車に攻撃を加えることができる。敵は容易に攻めてくることはできなくなるだろう。ウクライナに供与された対戦車ミサイルはそれほど高度なものではなかったと思われるが、それでも非常に効果が大きかったようで、ロシアの戦車や装甲車がかなり打撃を受けたことが報道された(25日のウクライナ軍報道では160台以上破壊)。

 6.地対空ミサイルは米軍のパトリオットや国産のものが多数あるが、日本の地形に合わせた山岳に設置できるものを開発する必要がある。日本は山岳地帯が7割を占めるため、ゲリラ戦に適しているからである。都市防衛という観点からだけでなく、侵攻空軍に対抗するために設置場所の分かりにくい山岳地帯に設置することが望ましい。日本は地形的にそのような設置場所はいくらでも考えられる。日本は戦闘機の数を増やすよりも、同じ費用で多数の伏設地対空ミサイルを用意すべきだろう。

 7.ドローン兵器:山岳におけるゲリラ戦、あるいは敵基地への局所的攻撃が可能である。敵要人の殺害にも使える。何と言っても価格が安く、個人でも所有可能となるだろう。未来には鳥型・ネズミ型ドローン殺傷兵器が登場することが予想されている。遠隔制御もしくはAI制御で近距離で攻撃を行う。これは侵攻軍に対してだけでなく、占領軍に対しても有効である。だがこれは侵略軍側にも有利な兵器だとされている。中国では既に、監視カメラ搭載のドローンが開発されており、それが監視・偵察を行いながら、AIによって敵かどうかを識別し、敵であった場合は自動的に攻撃するか突っ込んで自爆するという(21.9.22「AI兵器の脅威・中国のドローン偵察攻撃機」)。最近では安上がりな手法として中東や西アジアでの紛争にも多用されるようになった。未来の戦争はドローン同士の決戦となるかもしれない(21.8.10「東京オリンピックで使われたドローンの恐怖」)高性能なものを多数保有している方が有利であるので、日本は自衛手段として今から軍事予算にこれを加えて用意しておくべきであろう。

 8.手榴弾・火炎瓶:これは民間防衛手段として有効である。平時には自治体が厳重に管理し、戦時に全国民に渡すことができるようにしておくことが肝要である。

  最後に未来世界での戦争が無くなった時点での防衛について触れてみたい。戦争が無くなれば防衛の必要も無くなるわけであるが、万が一民族同士・異教徒同士の衝突があるかもしれない。そうした場合、シェルター構造の各戸住居はそれ自体が防衛に適しているため、騒乱が広範囲に及ぶことは考えにくい。騒乱が起きた地域には、各国の機動隊が出動して治安の維持が保たれることになる。


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