本文へ移動
【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

北の挑発に対する日本の腑抜けた姿勢

2021-03-26
  北朝鮮が21日に短距離ミサイル2発を発射したことに続いて、25日に低高度弾道ミサイル2発の非通告実験を行った。これは安保理決議に明確に違反する弾道ミサイル発射であるにも拘らず、政府は菅首相が、「米国や韓国をはじめ、関係諸国と緊密に連携し、国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜く決意だ」と記者会見で強調したが、十年一日のごとく同じ文言の繰り返しであり、AIの方がよほど気の利いた声明を出すだろう(近日中に「AIによる言語理解の進展」を掲載)。二階幹事長はより踏み込んで、「抗議するだけでいいのか国民には政治は何をやってくれるのかという思いがある」と語ったそうだ。その通りでいいはずがない。せめて新政権になったのであるから、無通告ミサイル発射は迎撃して撃ち落とすべきであろう。そうすれば一時的に世界は緊張するが、北に日本を攻撃する状況はないためさらなる脅威はなく、日本の迎撃能力を国民も知って安心するだろう。

  だが菅首相は2020年12月に、安倍政権が提起した敵基地攻撃能力保有の判断を期限を示さずに先送りにしてしまった。防衛力の強化どころか、後退させる姿勢であり、今回の抗議もその延長線上の習わしと化している。北朝鮮側ではこの実験を成功させ、弾頭を2.5トンに引き上げたと自賛している。600キロ離れた目標を撃破したと豪語しているが、日本の防衛省報道では450キロとされており、どちらが正しいか素人には分からない。それ自体が国民には不安である。朝鮮中央通信によると、2発のミサイルは低高度を変則軌道を描いて飛んだとされる。改良型の固体燃料を使用したとも伝えている。ロシアの高性能ミサイルに類似し迎撃が難しい「北朝鮮版イスカンデル」とみられ、1月の軍事パレードでは移動式発射台の車軸を増やした改良型を公開していた。相手が脅威を公然と振り撒いているのに、日本は抗議以外の何の行動も起こしていないように見える。菅義偉首相は平時の首相であって、戦時の首相ではないと以前に書いたが、その通りであることが今回明らかになった(20.12.29「菅首相は平時の宰相」参照)

  情報の面でも今回のミサイル発射報道には大きな疑念が生じている。北朝鮮の21日の発射報道は25日に出されており、これを米韓両軍は把握していたというが、どちらも報道は無かった。恐らくバイデンが事を荒立てないようにと韓国にも情報隠蔽を依頼した可能性がある。日本にも情報がもたらされなかったのか、日本の自衛隊も検知できなかったのか、日本でも報道は無かった。GSOMIAが正常に機能しているかどうかも怪しい。25日に韓国軍が発表したというのは、25日午前7時に2回目の発射が行われたため、これ以上隠蔽はできないと判断したことによると思われる。これでは3ヵ国の国民はつんぼ桟敷に置かれたことになり、戦時中の「大本営発表」と同じことが現代でも多国間で繰り返されているということになる。都合の悪い情報を隠すということが行われるようでは、国民は政府を信頼することはできない。そしてメディアがこのことについて何の疑問も呈していないことから、メディアも信用できないということになる。

  北朝鮮は2016年以降、推定で80発のミサイルを発射(21.1.22の2発を含める)している。1回の打ち上げ実験に掛る費用を平均して100億円と見積もると、8000億円を費やしていることになる。北朝鮮の名目国内総生産(GDP)は1兆8000億円程度(2018年時)と推算されており、国費の45%程度をミサイルにつぎ込んでいる計算になる。これでは国民が疲弊して飢餓に陥るのも当然であり、国家に反乱が起こらないことが不思議であるが、密告制度・公開処刑などによって恐怖政治を敷いていることがその唯一の理由であろう。このまま実験を続けて消耗を重ねていけば自滅するのもそう遠くないと思われることから、北朝鮮の新兵器開発は脅威であるが、心配するほどの脅威ではなくなるかもしれない。だが北朝鮮が自滅すると中国がそこに入ってくることになり、北朝鮮軍120万とミサイル数百基が中国のものとなり、恐らくそれを全面的に日本やアジアに向ける恐れがある。中国軍が日本を支配するよりも、北朝鮮軍が日本を支配することの方が脅威であり、彼らは飢えた獣のごとくに日本を貪りつくし、女は強姦の憂き目にあうことになる(20.11.9「強姦(レイプ)の状況論」参照)。それは第二次世界大戦時のソ連軍によるドイツ女性200万人が強姦されたときよりもひどいことになるであろう。逆らう男はその場で射殺されることになる。

  日本の取るべき態度は明らかである。中国や北朝鮮との戦争が避けられないことから、それに勝つためには高度な戦略を用意しておかなければならない。中国に勝てないことは明白であるが、連合を組むことである程度の攻撃抑止はできるであろう。中国が多国を相手にした場合、核を持たない日本に向ける核兵器を最小限にするという効果が期待できる。そのためには日本が他国と協働して動くことができるように、①憲法改正・②日米安保条約を軍事同盟に切り替え・③無通告ミサイルを全て公海上で迎撃、というようにすべきである。それができるようになれば、国民は国が万全の策を講じているという実感を確信することができる。現在のままでは、滅びたあとに「政府は一体何をしていたのだ」という義憤が出てくることは避けられない。だがこれは本来国民に向けられるべき批判であり、「国民は一体何をしていたのだ」ということの方が正しいであろう。

  未だもって日本国民は「戦争放棄」という理想主義を棄てられないでいる。台湾有事に対して日本が軍事的に支援すべきだという意見は皆無であり、それは同盟が無いことから致し方ないことではあるが、そのためのロードマップも作っていない。本来なら、①中国の台湾に対する「一国二制度」を拒否し、台湾を独立国として承認する・②中国の「一つの中国」という空想を否定する・③台湾と米・日・欧が軍事同盟を結ぶ、というロードマップが必要である。これこそが中国の台湾侵攻を思い留めさせることができる唯一の方法である。それでも中国の世界制覇戦略を変更させることはできないが、少なくとも延期させることはできる。現在行われている中国の侵攻策の進展と連合国の連合策の進展の速度を考えると雲泥の差があり、このままでは間に合わないことは必至である。最大の問題は時間との競争である。

  日本は全方位外交を断念せよ! 幻想的平和主義を放棄せよ! そして対中国包囲網の先陣を務めるべきである(20.7.28「日本は立ち位置を鮮明にすべきである 」参照)。それは危険な賭けではあるが、どっちにしろ第三次世界大戦は避けられないのであるから、最善の道を選択するしかない。現在のままでは中国の核の恫喝だけで、日本は全面降伏せざるをえなくなり、自衛隊7万に対して中国軍20万程が日本に上陸し、自衛隊を配下に置いて対米前線基地とするだろう。自衛隊は政府の管轄下にあるから、政府が降参すれば自動的に中国軍に組み入れられることになる。国民に国を守る気概は全く無く、もし日本政府が音頭を取ればそれに従うであろうが、中国政府が支配すればそれに順応するであろう。その分水嶺となるのは、日本が毅然として北朝鮮のミサイルを迎撃することで、北朝鮮に対してだけでなく、中国にも毅然とした態度を示すことになる。国を守るということは、死を覚悟して初めて成り立つ大義であり、中途半場なものではその大義を貫くことはできない(20.9.1「武士道精神とは何か?」参照)


TOPへ戻る