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【時事評論2021】

評価主義の効用

2021-03-16
   筆者の評論の中にはノム思想の説明に関するテーマが多いが、「評価主義」という考え方がノム思想の根幹を成しているからである(20.9.7「ノム思想(ノアイズム)とは何か? 」参照)。ノム思想の説明は参照に譲るとして、そのほとんどが科学的法則や原理に由来するものであり、必ずしも学問としての哲学や倫理学・社会学などに関係しているわけではない。評価主義という言葉も恐らくどの学問にも位置付けられてはいないと思われる。だがかなり具体的な考え方であり、それをイデオロギーの1つとして位置付けることによって生ずる不利益はないと思われる。つまり派生的なものであるには違いないが、この考え方がノム思想の根幹を成していることには変わりはない。

  要約すれば、人間界の事象は全て人間の価値評価によって定まっており、法律も倫理も価値評価に基づいていると考える。社会の約束事も、それが有用であるという評価によって成り立っている。もし人が評価を棄てれば、全くの無秩序が到来するだろう。無政府主義・虚無主義はそのような価値観の存在しない世界であり、人間の本能とは逆行するものであるため、これまで歴史的に存在したことはほとんどない。そういう状況を作り出そうとしてもできないのである。それは人間が持つ本能がそうした無秩序状況を許容しないからである。人間の本能に「自由への渇望」があると考える人もいるが、確かにそれは本能として存在するが重要なものとは言えない。人間が生存競争をする中で、もっと重要なものがあった。それが集団としての秩序であった。そしてそれが高く評価されたが故に、人間界には法による秩序・常識による秩序・道理による秩序というものが生まれてきたのである。

  そのため人間界では人が他者やモノ、そして事象を評価することが非常に重要であることが分かる。現代は権力・武力・金銭力が大きく評価されているため、古代の仕組みとそれほど大きく変わっていないと理解できるだろう。古代から人の集落・部落・国家というものはこれらの力で動かされてきた。集団のボス(首長・統領・首相・大統領など)はその支配力が評価されたが故にリーダーたり得た。現代でも独裁国家はその原理に基づいている。だがそれは類人猿時代に築かれた価値観に基づいており、現代に至ってもそれが引き継がれていることを知れば、多くの知的な人々は改めて驚くであろう。つまり人類はそれほど進歩していないのである。

  筆者の想い描く未来世界は、そうした動物的本能に基づく力の関係から生まれる社会ではなく、人々が価値があると思う基準によって選ばれた優秀な子らが、良き価値基準のもとで育てられ、諸々の現実世界の経験をして後に、賢人候補として社会のリーダーとして認められ、さらに選抜を経て初めて賢人となることができ、その賢人が社会を導くという世界になるだろう。それは人類が本能から生ずる諸々の邪悪な心を制御することができるようになって初めて実現する世界なのである(1.7「制御思想」参照)。その世界が創られる過程で、絶えず賢人に対する評価が行われる。賢人に対してだけでなく、社会のあらゆる事象・人間界のあらゆる事象に対して評価が行われ、人間の持つ最高の美徳が最高の価値を持つようになるだろう。

  そうした意味で「評価」という行為は未来社会を形成する過程においても、形成された後になっても、最大の有用な手段となる。たとえば、政治はそれぞれの地域の代表として推挙された賢人が執り行うが、その賢人(議員・閣僚・大統領など)は随時国民から評価され、政策も評価され、その成果も評価されることになる。つまり真の四権分立(立法権・行政権・司法権・評価権)が成立することになる。これを真社会主義と呼ぶ(20.12.23「真社会主義」参照)。ここには従来の意味での権力者は存在せず、国民に代わって政治を動かす代理執行者が存在するだけとなる。その評価手段はMD(モバイルデバイス:スマホのようなもの)による随時評価・アンケートによる評価・世論調査による評価・選挙による評価と様々な機会によって行われる(20.11.9「世論調査・アンケートの問題点 」参照)。特にMDによる随時評価はリアルタイムで評価が変わっていくという点で画期的な手法であり、それによって賢人も政治も司法も行政も評価されていくことになる(2.1「ノム世界の情報システムの提唱」参照)。実質的な権力は国民が握ることになり、真の意味での民主主義が実現するだろう。

  これまでに試論として評価主義を応用した事例をテーマに挙げてきた。それを以下に列挙してこの項を終わりにしたい。
 1.2021.3.16「人間の心の評価」
 2.2021.3.8「日本人の特異性の評価
 4.2020.11.1「大坂都構想国民投票の評価
 5.2020.10.18「国格評価ランキング
 6.2020.10.11「評価・認定・資格
 7.2020.10.11「顔相の評価
 12. 2020.9.26「筆者の仕事の自己評価
 13. 2020.8.2「李登輝の政治手腕とその評価 」 以上


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