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【時事評論2021】

状況理論(1839文字)

2021-01-18
  状況理論と呼ばれているものには既に1968年にスタンフォード大学の心理学者のウオルター・ミシェル(1930ー2013)が「状況論」を提唱し、1960年代後半から1970年代前半にかけて「マシュマロ実験」と呼ばれている実証実験を実施した。これをさらに実証しようと同じスタンフォード大学のフィリップ・ジンバルドー(1933年-現在)が1971年に行った「スタンフォード監獄実験」により、人の行動が状況で決まるという画期的な理論を展開した。だが筆者はこれらを知らずに2011年10月に同タイトルの論文を書いた。しかも発想はより拡大させており、ジンバルドーが人の行動にこれを当てはめたのに対して、筆者は全ての事象にこの理論を適用させた。

  最初は理論と呼べるほどの骨格をもっていなかったので、「状況論」という一般論で考えようとしたが、理論と考えた方が良いと判断して2019年9月に「状況理論」と改題した(20.10.25「人は状況に左右される(状況理論) 」参照)。これは因果律と極めて類似・関係しており、副題として取り入れている。量子力学では根本的に因果律は成り立たないとされ、それをマクロ領域にまで拡大して考える学者が多い。だがそれは全くの誤りであり、ミクロスケールの状況をマクロスケールに当てはめることは間違いである(筆者自論)。それを筆者は「スケール理論」で説明したが、これは数式的に証明できたわけではないのであくまでもアドホック仮説の域を出ない(記491「スケール理論」)

  前置きはともかく、状況理論の骨子「事象はその直前の状況によって起こるものであり、それは確率的事象となる」というものである。事象を惹き起こす要因は無限大であるが、その中に主要な法則も入っている。たとえば弾道は簡単な物理法則で計算できるが、その時の風の強さと向き、そしてその揺らぎ、弾道の空気摩擦抵抗と空気粘度などを計算にいれなければ正確な着弾点を決めることはできない。それをやったとしても不確定な要素から着弾点は1mmの差よりもはるかに大きくなる。つまりこのことは、未来の予測は確率的にならざるをえず、人間はその範囲でしか予測はできない、ということも意味している。「確率論」についてもノム思想の中に組み込んでいる(№481「確率論」)

  これをさらに適用したものに「運命論」がある。人間が運命を変えられるというのは常識的に言われていることだが、将来起こる事象を予測して運命を変えられるというところまでは不可能であり、突発的な事故や戦争などは個人の努力では変えることができない。そうした個人の力や努力の及ばないことを運命と呼ぶのである。上記のジンバルドーは人間行動が、その時の状況によって大きく左右されることを「監獄実験」で証明した。どんなに真面目で平和的な青年であっても、監視役を与えられれば囚人に過酷に当たることが実験で明らかになった。教育や環境が人に与える影響がいかに大きいか、人間の意思というものが如何にひ弱なものか、ということがこれで分かったのである。

  幸運な人にはそれなりの状況論的な理由がある。不幸な人にも同様である。虐められる子にはそれなりの虐められる理由があるのであり、虐めに関しては両者の責任を問い、またそれを科学的に追及する必要がある。これは人間の関わる全ての事象にも当てはまることから、政治・経済・司法に状況理論を適用してその以前と以後を比較検証する必要がある。特に歴史においては、ある事件が起こる前の状況と起こった後の状況を比較することが重要であり、それによって何に変化が生じたかが、その事件を起こした要因の解明に繋がるであろう。

  筆者はこうした考えのもと、これらはノム思想を形成する重要な理論だと考えたので、これを取り入れた。当然のことであるが、関連する「運命論」や「確率論」も入っている。こうした論によってほとんどの事象が説明可能であるし、予測も正確度を増すことになる。だがどんなに人間が頑張っても不測の事態というものは起こり得るのであり、それを筆者は運命論的な「不可知論」としてもまとめた。これは人間がどんなに知能を深化させたとしても、事象の状況を全て書き表すことはできないことから、将来の予測に関しても全て不可知であると考えたからである。これもまたノム思想に取り入れた。つまりこれらは全て同質のことを表現を代えて言い表したものであり、理論的には同質である。


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