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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2024】

第一原因者

2024-04-18
  「第一原因者」という考え方については2021年に書いた項で取り上げた理念である(21.3.18「受益者負担・貢献者優遇」)。その中でもある程度説明しているが、これを明確な理念として取り上げるために、新たに書き加えることにした。

  上記した項で取り上げた事例として、米国の黒人容疑者殺人事件を挙げている。別の事件である2011年に起きた双極性障害(躁鬱病)患者の黒人(ケネス・チェンバレン)殺人事件では、患者が誤って非常ボタンを押してしまった。駆け付けた警官に患者は「間違いだ。帰ってくれ!」とドアを封鎖して怒鳴ったが、警察はドアを蹴破って侵入し、武器を持っていない患者を射殺した。事件の発端を作ったのは患者であり、それは通常は救急車の出番であるはずだが、どういう訳か警察が最初に到着した。90分間に起きた事件だったが、地元を含めて大々的に報道されなかったので知らない人が多かった。映画化されて初めて全米に知られた。患者は第一原因者であるが、悪い動機ではなく、単なる錯誤操作であったため、罪に問われることは無かったであろう。映画で知られたこともあり、市は12年後の2023年8月に遺族に500万ドル(7.4億円)を和解金として支払った。

  黒人のジョージ・フロイド殺人事件は余りにも有名だが、なぜフロイドが逮捕されたのか、詳しいことは知らない。防犯カメラ映像は友人らのスマホカメラ映像が有るにも拘らず、逮捕時までの経緯は詳しく報道されていない。どうも車の中に友人らと一緒におり、車から降りるように警官から指示されたことに逆らったようだ。これにカッと来た警官が粗暴になり、地面に伏せさせて手錠を掛けたにも拘わらず、さらに首根を膝で押さえつけた。「息ができない!」と訴えたが、およそ10分間にわたり押さえつけられ、窒息死か、脳貧血死したと見られる。米国ではこうした拘束の仕方が許されているのかどうかの報道もないため、警官の措置の妥当性については不明である。だが事実、そうした拘束により死者が出たことから、米国の警察のやり方は非難されるべきだろう。

  だがここで問題としたいのは、この事件での第一原因者が誰なのかということである。もし黒人側に、警察の指示に従わなかったという事実があるとしたならば、黒人側にも大きな責任があるということになる。もう一つの問題点は、これらが訴訟の対象になり、莫大な和解金や賠償金が支払われているということにある。これは恐らく米国に特殊な事例であると思われる。少なくとも日本では、そうした賠償というものを聞いたことが無い。遺族が一生働く必要がないほどの賠償がなぜ必要なのか、それはむしろ悪なのではないか、とノムは思う。ミネアポリス市が支払った示談金は約29億円であった。これは勿論市税から支払われるが、市税を納めている市民が訴訟を起こしたというニュースはない。つまり人権に対してはもはや絶対的な主張の力が存在していることを示唆している。これに矛盾を感じない人、不条理を感じない人はいないと思われるのに、誰一人として声を上げることはなく、メディアも批判をしていない。その金額の膨大さに、世間はまるで人気野球選手の契約金と同じような反応を見せている。人権に関することについては誰もまっとうな意見を出せなくなっている

  ノムは米国の司法制度に矛盾を感じるし、警察の在り方や警察官の訓練の仕方にも疑問を感じる。米国では犯人が射殺されるということはしばしばあることだ。その都度疑問に思うのは、なぜ犯人の脚を狙うなどして、殺害をしないように努力していないのか、ということである。警察での射撃訓練では、頭と心臓を狙うように指導されているように思われる。本来ならば、犯行の全貌を明らかにする上でも、犯人を生かしたまま逮捕するのが最善の方法である。たとえ銃器を持っていたとしても、脚を撃たれれば銃器を使うことなどできないだろう。各国でもそれは同様であり、銃器犯罪ではほとんどの場合、犯人は銃殺されている。だが日本ではそうした対応はしない。警察官が死傷する可能性がある場合であっても、警察が犯人を狙撃することはほとんどない。もしそうした事態が起こったら、日本では蜂の巣を突いたように、警察に対する批判が殺到することだろう。ノムは日本の警察の対応の仕方にも疑問を持つが、米国の警察の対応の仕方の方が遥かに疑問が大きい。

  未来世界では、事件についての判断に於いて、第一原因者に最大の罰を与えるという考え方になるだろう。事件が凶悪な場合、犯人の射殺を含めて、警察側が銃器を用いて犯人の抵抗を無くす措置を取ることは仕方のないことだと思う。だが上記したように、射殺してしまった場合には警察もその責任を問われることになるだろう。裁判に於いては、第一原因者に最大の責任を取らせることになる。マクドナルド熱傷事件では、やけどの原因となった珈琲をこぼした本人に最大の責任があると考える(4.17「被害者責任」)。上記例で言えば、逮捕されるような行動をフロイドが取ったとすれば、フロイドに最大の責任があると考える。国家の場合でも同様であり、先に仕掛けた国家に最大の責任を負わせる。ウクライナに侵攻したロシアに最大の責任があり、ウクライナの責任はほとんどゼロに近いだろう。ガザでハマスがイスラエルに対して大規模攻撃と殺戮をしたことについては、その事件自体がハマスの先行攻撃によるものであることから、ハマスに最大の責任があると考える。中国が台湾海峡やフィリピン領海で行っているいやがらせの行動は、中国に最大の責任があると考える。その背景にある動機は余り重要ではない。とにかく第一原因となる行動を起こした者や国家に最大の責任があると考えるのである。

(2.27起案・起筆・4.18終筆・掲載)


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