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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【現代寸評】

海業(うみぎょう)

2023-09-20

  【現代寸評】では暗い話題が多いので、今回はノムが良い話題だと思った新聞記事(産経新聞)を取り上げる。

  海業(うみぎょう)という聞きなれない言葉を創ったのは、三崎漁港(神・三浦市)の1985(S60)年当時の市長、久野降作である。市役所には今でも「海業水産課」があるという。彼がどこまでの構想をこの言葉に込めたのかは、残念ながら分からない。だがその広がりは確実に全国に広まり、2022年3月には水産庁が基本計画に「海業」という言葉を使うことが決定された。2023年3月には全国12地域を選定してモデル地区とし、駿河湾に面する戸田漁港(静・沼津市)もその一つに選ばれた。この漁港はまき網・底引き網漁などが盛んで、静岡県内では漁獲量トップを誇る。大型のタカアシガニが名物となっている。

  だがこの漁港の周辺のホテルや店には廃業したものが多いという。そこで漁港と沼津市は、この漁港や産物を観光資源として利用し、地域活性化を目論んだということである。国の後押しもあって、2014(H26)年まで使われていた浮桟橋を利用することを考えた。沼津漁港・清水漁港とも連携して、魚三昧の観光での旅客船が立ち寄れるようにしようという計画だ。ヨットの寄港もできるように桟橋を整備したいと考えている。

  2023年5月に成立した来春施行の「改正漁港漁場整備法」で、漁港施設の貸与期間が10年から30年に延長された。これにより長期投資を呼び込み、漁港に食堂などを設けやすくした。宿泊施設やマリンレジャー施設も整え、漁業体験や海洋学習などの場の提供も視野に入れている。こうした計画には幅広い知見が必要だが、水産庁は支援パッケージとしてコンサルタント派遣を入れており、今後の振興策についての企画立案が地元で進められているという。

  折しも中国が、日本の福島原発処理水の放出開始を機に科学的根拠のない言いがかりをつけてきて、日本産海産物の全面禁輸という暴挙を行った。日本を貶めようとするこの中国の卑劣なやり方に、日本国民の怒りが沸騰した。これまで中国に高級食材として輸出してきた漁業関連業者は、3割以上の市場を失うことになった。そこで東南アジア諸国に海産物を送り、そこで加工をして米国やヨーロッパなどの富裕層向けに輸出しようというアイデアも生まれているが、その整備には時間が掛かる。食材を欧米が取り入れていくのにも時間が掛かる。むしろ国内需要を喚起して、日本国民や外国からの観光客に漁場に来てもらって、海産物を味わってもらう方が、内需の拡大にも繋がり、一挙両得である。

  ノムも以前から思っていたことだが、漁場に行くと余った魚などが、バケツ単位で地元の人にタダ同然に引き取られているのを見てきた。そうした新鮮な魚などを、なぜ観光客にその場で提供しないのか、不思議であった。つまり漁業者の方にも工夫が足りなかったのではないだろうか。最近が漁港でカニの釜茹でを味わうツアーなども盛んになってきたようだが、もっと早くから観光ツアーとしてこうした漁場巡りを組み合わせたものがあっても良いように思う。ツアー料金に組み込むのではなく、食べたい人が安い料金で食べたいものを食べるという方が良いと思うが、売れなかった場合の残りの処分などを考えて、地元の人も入れて、売れ残りを格安に地元の人が手に入れられるようにした方がいいだろう。

  できるだけ、施設を最初から作るというやり方ではなく、まず漁場見学のあと、少し離れた風光明媚な場所でカニの釜茹での実演をして、観光客にゆっくり食べてもらうというのも一興だろう。魚臭い漁港で食べるのではあまり食欲が湧かない人もいるかもしれないからだ。

  こうした観光を組み入れる場合、旅行客のマナーが問題になることが多い。ポイ捨てをしないことなどを、旅行業者が観光客に徹底させることも必要だろう。また実際に漁業関係者が仕事をしているのに邪魔になるようでは意味がない。取引所全体を見まわせる2階の見学廊下を設置することも必要になるだろう。場合によっては、観光客だけによるセリを真似た販売をし、冷凍便で自宅に届けるよう配送業者に依頼するというのも一興かもしれない。観光客は話題が欲しいのであり、家族らにその余波が与えられれば、大いに盛り上がるであろう。こうした時間限定の仕事には、ボランティアの活用も有用であり、また学生などのアルバイトとしても有用であろう。恐らく準備を含めて1時間程度の仕事になるため、得られる労賃はごくわずかであるが、地域振興に役立っているという意識は貴重な体験とともに、忘れられないものとなるだろう。夏休み中の学生などが、こうしたアルバイトをする機会が地元にあれば、多くの学生が貴重な体験をすることになる。

  未来世界でもこうした地域の住民全体が一体となって取り組む事業が盛んになるだろう。これまでの産業は効率のみの視点から専業業者が行ってきたが、未来世界では全ての職種が学習の場となると思われる。外国からの観光客というものは未来世界では無くなるため、むしろ国内観光客向けの漁場解放となるだろう。初等教育での社会見学に相当するものが多く行われるようになり、あらゆる職場が見学対象になるだろう。さらに大学生などは、ガイド役としてアルバイトができるだろう。そしてこうした社会貢献によって、人格点に加点が行われることになる。

  さらに重要だと思うのは、国内観光の活性化に繋がることであり、国外観光に費やされてきた莫大なエネルギー消耗が無くなり、国内での省エネツアー(電気バス・鉄道)が盛んになるため、地域ごとに魅力を高めるための努力がなされる。道の整備だけでなく、雑草が少ないということも美観の重要な要素となる。そうした地道な地域の努力が、国内観光を支えることに繋がっていくであろう。

(9.20起案・起筆・終筆・掲載)


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