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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【科学評論】

地球の誕生(【時事評論】「地球の誕生」から採録・改訂)

2023-08-21
  この項は2023年8月8日に【時事評論】に掲載した「地球の誕生」を改訂して【科学評論】に再掲載したものである。

  このテーマは2022年9月26日にNHKが放送した「コズミックフロントΩ」で「地球誕生」を取り上げのを観たことで、改めて取り上げる必要があると思った。なぜなら、我々が存在しているのはある意味で奇跡的なことであり、我々が存在していなかったならノムのブログというものも存在していなかったからである。その奇跡について述べないわけにはいかないと思った。このテーマは前項、およびこれから続く一連のテーマとワンセットで設けることにした。地球が誕生するには宇宙が誕生していなければならなかったからであり、現代の宇宙論はかなり混迷しているということもあり、世界を支配している法則とは何なのだろう、と考えたくもなったからである(8.7「宇宙の誕生」)。以下では、地球の誕生のあらましを述べ、それが如何に奇跡的なことであり、我々はその奇跡という幸運の恩恵を受けていることについて述べたい。

  ビッグバン仮説では、宇宙が誕生してから10-43秒(プランク時間)までをプランク時代と呼ぶこの時期では、4つの基本相互作用—電磁相互作用・弱い相互作用・強い相互作用・重力相互作用、は分離しておらず統一の相互作用であったという(8.7「宇宙の誕生」)。だがその詳細はまだ不明である。この時代では量子効果だけが働いており、一般相対性理論は働いていなかった。量子重力理論が確立されれば、この時代の理解がもっと進むだろうと期待されている。宇宙誕生から10-43から10-36秒後には宇宙の膨張と冷却が始まったとされる(大統一時代)。この時代に磁気単極子が生成されたとする理論もある。その直後、10-36から10-32秒の間にインフレーションという急激な膨張期が起こったとされる(インフレーション時代)。その後もいくつかの仮説があるが、初期宇宙はインフレーション後にクォーク・グルーオン・プラズマで満たされたとされる。これ以降の宇宙については、現代物理学でほぼ理解が可能とされている。あらゆる物質(量子)が質量を獲得し、4つの基本相互作用も生じた(クォーク時代)と呼ぶ。10-6秒後から1秒後をハドロン時代と呼び、陽子・中性子などの重い素粒子、およびその反粒子が作られた。1秒から10秒後にはレプトンがわずかに残った(レプトン時代)。10秒後から38万年後にエネルギーは光子となり、宇宙は明るく輝いた。「宇宙開闢の時」と表現しても良いだろう。3分から20分後に温度が急激に下がったことにより、原子が形成される。ほとんどがヘリウム4であり、それが形成されるのに要した時間はおよそ17分という短い時間だったとされる。24万年から31万年後に原子が形成され、この時期に宇宙マイクロ放射と呼ばれている現象が起こり、その痕跡を現代の我々は観測した(1940年代)。この時は「宇宙が晴れ上がった」と表現されている。

  宇宙は最初、物質と反物質が出来たとされる。だがわずかに物質が多かったことにより、相互が衝突して消滅したあとに物質が残ったとされる。宇宙の始まりは量子のゆらぎから始まったとされ、物質の誕生は偏りから生じたとも云えるだろう。だがなぜ揺らぎや偏りが生じるのかは明確ではないようである。物質(最初はガス状)が残ると、それは次第に衝突により大きな塊となり、宇宙の塵(ちり:0.001mm以下)と呼ばれるものになっていった。現在の宇宙ではガスが99%を占め、チリは1%であると言われる。宇宙の拡大とともにチリは直線的に広がったのではなく、重力相互作用が働いて凝縮し、やがて小惑星→恒星へと大きく成長し、成長し切った恒星はその質量によって潰れ(内部崩壊)、超新星爆発(新たな星が爆発するということではなく、星が爆発するということ。誤解を招きやすい言葉である)を起こして、中性子性やブラックホールを残す。

  宇宙誕生から1000万年経つとガスが無くなり、星の周りを回っていた原始惑星の軌道が乱れ、再び合体が始まった。地球サイズの惑星になると安定する。ここまで1億年掛かったという。恒星の周りにはガスがあり、それが円盤状に集まるとその部分に質量の大きい部分ができる。これも揺らぎや偏りとみてよいだろう。その部分に回りのチリガスが重力で引き寄せられ、乱流を起こすことで凝縮が進み、やがて惑星の種ができるという。その軌道にはガスやチリが少なくなることから、地球から観測すると円盤の溝として見える。溝の中に惑星の種が存在する。惑星は徐々に成長し、やがて小惑星から惑星へと成長する。太陽系では、太陽という恒星の周りに軌道の異なる8つの惑星があり、地球は太陽から3番目の惑星である。内側にある水星・金星・地球・火星は岩石惑星と呼ばれ、木星以降はガス惑星と呼ばれるが、木星以降の惑星も最初はチリからできたので、中心には岩石や氷からなる核があるが、表面は厚いガスに覆われている。地球の大気もガスであるが、それは極めて薄く(上空1000キロほど)、リンゴの皮に例えられる。

  地球が誕生したのは、太陽が誕生したときとほぼ同時期と考えられる。正確に言うと45億4000年前とされる。その中心核は圧縮熱が維持されており、中心から核・マントル・地殻と大別されるが、マントルは液状化している。初期の地球に、火星ほどの大きさの小惑星が大衝突した。これをジャイアント・インパクトと呼んでいる。その際に生じた破片が宇宙空間に飛び散り、それがの元になった。地球が他の太陽系惑星と大きく異なるのは、地表に大量の水が存在することである。これは太陽からの距離、および地球の大きさが関係しており、地球より太陽に近い惑星では太陽熱で水は蒸発してしまい、遠い惑星では凍ってしまう。また地球より小さい惑星では水分子が宇宙に拡散してしまい、保持できない。地球の軌道と大きさが、水を表面に蓄えるに最適であったのである。そのため生命の誕生と進化が起こった。それはある意味では必然であるが、奇跡であったともいえるだろう。そして地球の水は衝突した隕石や小惑星からもたらされた。現に現在地球に降り注ぐ隕石の中に水があることが分かっている。それだけではなく、日本の中野英之(桐蔭横浜大学教授)が、衝突によって高温・高圧の中で水が合成されることを再現実験で示している。原料は隕石中の水素と酸素であった。

  地球がその表面積の7割を海が占めるということは奇跡である。元々灼熱地獄であった誕生当時から、地球は熱を宇宙に放出し続けた。大気中の水蒸気は温暖化物質の1つであるが、その放射熱を取り込みながらも、赤外線として宇宙に放出し続けた。その結果地表面温度が下がり、ついに水蒸気の露点に達した時に、大気中の水蒸気は一気に液化し、それが雨となって地上に降り注いだ。これはおよそ1000年続いたとされる。この理論は日本の松井孝典(たかふみ:千葉工業大学学長)が1986年に発表した。ジャイアント・インパクトがあった時に地球に水が既にあったとしても、この衝突により蒸発してしまったと多くの学者は考えていた。だが日本の玄田英典(東京工業大学教授)は、ジャイアントインパクトによって海水は失われなかったとシミュレーションで示した。こうして地表の7割が海で覆われることになった。隕石・小惑星によってもたらされたアミノ酸などが海に存在したため、生命の材料になったと考えられている。生命はまず海で誕生し、豊かな生態系を作った(21.6.9「自己組織化と自己崩壊化」)。そして陸上に上がってさらに多くの生物を作り出した。現在、細菌やウイルスを除いて870万種の生物がいるとされる。

  地球内部では核分裂反応はあるものの、太陽のように核融合反応はないため、地球は永遠に今の状態を保つことはできない。今後40億年間、太陽の光度は絶えず増加を続けると予想されていることから、地球が冷却する速度は遅まる可能性もあるが、だがそれ以前に、6億年後にはCO2がほぼゼロになることが予想され、植物の全滅とともに動物も絶滅するだろうと予測されている。残るのは特殊な細菌やウイルスだけであると思われる。この後の項で生命の誕生とその進化について述べる予定である。

(7.21起案・起筆・8.6継筆・8.7終筆・8.21・改訂・掲載)


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