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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【科学評論】

土壌による臭気の除去(土壌脱臭)

2023-07-12
(本項は【時事評論】の2023.12.02の論文を転写したものです」)


  本項は前項で述べたことを補足する意味で付け加えた。すなわち、便器で発生する臭い、もしくは便の回収に使われる装置から発生する臭気を除去するために、花壇を利用した臭気除去を述べたが、その詳細について説明する必要があると思ったのである。これについては、ノムが教員として在職中に実験を行ってきたこともあり、多少はアイデアとして自信を持っている。以下では土壌による脱臭という内容で、その詳細を述べたい。ただし、この研究は定年退職により中断されてしまっており、データも十分ではないため、考え方を中心に述べることになる。

  ノムは退職後もこの研究を継続するつもりで、実験的な設備を作った。面積はおよそ2.5m×5m=12.5㎡で、コンクリートブロックの上に厚さ5cmのスタイロフォームを置き、これに穴を開けて台所で使うプラスチック製の丸いザルを乗せ土を被せた。土壌の厚さは10cmとした。ドラフトチャンバーという排気設備によって、この土壌層を通して有害ガスや臭気をどの程度除去できるかを実験しようと思ったのである。だが、退職後は園芸を含めていろいろな趣味に時間を取られ、本格的な実験はできなかった。だが現在もこの土壌脱臭設備は使用可能な状態にある。在職中はU字を逆さにしたようなアクリル製カラムを使った装置で実験を行った。詳細は省くが、学内研究誌に2報を出している。1つは『土壌による空気の浄化』であり、もう1つは『各種炭素化物による二酸化イオウの吸着特性』である。1報目は粉塵除去について報告し、2報目は有害ガス除去について報告したものである。2報目では桐炭・竹炭・木炭・活性炭・備長炭・おから炭・シリカゲルなどを吸着材として用い、土壌での実験は行っていない。有害ガスとしてSO2を用いたが、桐炭が最も良い吸着性能を示した。

  花壇を同様な形で臭い成分の吸着装置として用いることを考えている。それは吸引どちらにも使えるようにすることが望ましいが、トイレ臭気の脱臭という使い方の場合は、排気からの脱臭ということになる。土壌に通気させるためにはある程度の加圧が必要で、シロッコ型送風機が適しているが、これは多少高価である。全世帯が使用することを前提にすれば、かなり格安に生産することが可能だろう。花壇の土壌に連続的に通気させるか、トイレの使用時だけに限定して通気させるかにより、使用電力に大きな差が出る。ノムとしてはトイレ使用時だけに限って使用するだけで十分だと考えている。だがそのためにはかなり花壇の管理をよくしなければならず、全ての世帯にそのような負担を強いることができるかどうかは今後の課題となるだろう。

  花壇の手入れとして次のような項目が考えられる。

1.通気を良くするために、土壌が密にならないよう、時々かき混ぜてほぐす必要がある。
2.土壌が乾燥しないように、点滴なり水噴霧が必要であり、これを自動的におこなう装置を設置する必要がある。これには市販品があるが、決して安いものではない。数千円は覚悟する必要があるだろう。
3.できればこうした土壌による空気浄化用の最適土壌が市販されることが望ましい。あるいは土壌を使わず、半水耕栽培のような形で花壇を作ることも可能だろう。この場合は水道圧を利用して水を点滴させる方法が望ましい。

  以上のような工夫によって、管理の手間を省くことも考えられるが、故障した場合の対処など、気を配る必要はあるだろう。

  ノムの考えでは、トイレもしくは回収糞尿からの臭気は、花壇の土壌中の団粒に含まれる水分に臭い分子が吸着され、さらに団粒表面の細菌により分解される。およそ10cmの土壌層を通気すれば、全ての臭気は除去することができるだろう。同様の考え方に基づいて、浄水場から出る臭気を、浄水場の屋上に設けた公園の土壌により、土壌脱臭している実例があるようだが、実際にそれを見学する機会は無かった。またその土壌をどうやって管理しているのかについても知見はない。

  この設備は逆に応用することも可能である。火災などに見舞われた場合、環境シェルターとしての機能を持つ未来型地下住居に有害ガスが入り込まないように、花壇による浄化装置を用いれば、酸素の供給と有害ガスの除去の両方を同時にやってくれるだろう。そのためにも花壇には葉を茂らせた植物を植えることが望ましい。だが洪水の場合、この装置を通して水が地下に入り込まないように、通気パイプを逆U字型のトラップで防ぐように設計する必要がある。パイプの長さに応じて通気抵抗が増し、それだけ送風のためのエネルギー消費が大きくなる。だが命を守るための装置であることから、多少のエネルギー消耗の犠牲は止むを得ない。できればこうした装置を動かすためのエネルギーとしての電気は、全て太陽光発電で賄われるべきである。

(7.1起案・起筆・終筆・)


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