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【科学評論】

動物の眼は痛みを感じないのか?

2023-03-01
  世の中には科学的なことで素人には分からないことがたくさんある。それらについての多くが、すでに研究されてある程度の知見を得ていたとしても、それが民には知らされていないことが多い。義務教育でそうしたことが教えられているとは限らず、また学習する機会もそう多くはない。幸い現代はネットがあるため、多くのことをネットで知ることができる。しかも素人の疑問に答えてくれるサイトもあるので、素人でも脇に書籍が無くても何でも調べられるようになった。ある意味でノムはその恩恵を最大に受けている一人であり、ネットが無ければこのブログも作られることは無かったであろう。今回は眼に入ったゴミの痛みについて書くことにしたが、これからも同様な愚問について書くことがあると思う。

  人間の眼は非常によくできているが、動物の眼には人間の視力を遥かに超える能力を持つものがある。だが自然界に棲む彼らは、眼に入るゴミをどのように除去しているのか、あるいはゴミが入った時に、痛みを感じているのか、動物に聞くわけにもいかないことから、あまりはっきりとは分かっていないのかもしれない。このテーマを考え付いたのも、朝顔を洗う際に、眼になにかしらのゴミが入ったようで、多少ゴロゴロ感があった。目をしばたいて涙で流そうとしたり、水道の水流で流そうとして、ほとんどの場合はそれで問題解決となるが、動物では水道で洗い流すという方法は取れないそもそも動物が目のゴミを取る仕草を見せることはほとんどないようで、記録画像にそうした場面が出てきたのを観たことが無い明らかに目にゴミがついていても動物は平気なように見える。こうしたことから、タイトルにあるような疑問を持つに至った。そしてそれが視力と関係があるのかについても考察してみたくなった。

  動物の眼には昆虫のように固い外膜を持つものもあり、複眼であることから今回は考察対象から外す。だが面白いことを知ったので、一寸書いておこう。カマキリはドーム状に飛び出た複眼を持ち、後ろも見える360度の視野を持つという。こちらを見ている個眼は黒く見えるそうだ。また昆虫の個眼はそれぞれ機能が異なっているようだ。哺乳類に限ってみれば、眼の構造はほぼ似てはいるがやはり多様性がある。鳥類は最高の視力を持つ動物であり、ダチョウは中でも最大の眼を持つことから、その視力は20もあり、40m先のアリを見つけられるという。鳥類の視細胞は150万個ほどあり(人間は約20万個)、視野は眼が左右にあるため軽く300度を超える。その上、人間には見えない紫外線まで認識するため、鳥たちが見ている世界はとても鮮明かつカラフルである可能性が高いという。魚が陸上に上がって、その後の哺乳類などに進化していくのだが、多くの陸生動物が紫外線を感知することは無くなった。それは紫外線が有害な光線だからなのであろう。霊長類以外の哺乳類は多くが二色色覚のままであり、イヌやネコも二色しか見分けられず、赤色を識別できないため、セピア色の世界を見ているのかもしれない。 

  動物進化の過程を遡ると、5億4千万年前に三葉虫が生命で初めて「眼」を獲得したという。魚類も進化の過程で色覚を得た。 魚は視力はそれほどでもないが色覚はとても優れており、赤青緑の三色の他に紫外線を認識することが可能な四色色覚を持つ。哺乳類は二色色覚のものが多くなった。 これは哺乳類の共通の祖先が一度完全な夜行性となり、赤い光と紫外線を認識する必要がなくなったのが理由だとされる。哺乳類が夜行性から昼行性へと行動様式を変えたことで、「霊長類」は再び三色を識別できるようになった。それは果物などが赤色が多いことと関係していると云われる。樹上の餌を色で認識できるようになることは、樹上生活をしていた霊長類にとって重要なことであった。ちなみに赤外線を認識できる四色色覚の人間も稀に産まれるという。鳥類は四色色覚を持つものが多いと云われる。また人間と同じ三色色覚を持つ動物も多いが、必ずしも人間と同じ色を識別しているとは限らない。たとえばミツバチは青~紫外線を識別する三色色覚を持つと考えられている。

  動物界最大の眼球を持つのはコロッサル・イカ(ダイオウホウズキイカ)のようで、眼球は35cmもあり、フットボールの球ほどであるという。陸生動物の中ではダチョウが一番大きく、東南アジアの島々に生息する小型の跳躍する霊長類、タルシヤはその顔や体形の大きさに比して大きな目を持つ。ほぼ脳の大きさと同じだという。これは夜行性だからであるとされる。眼は顔に2つあるのが常識だが、ヒトデには腕の先に眼があるという。水生動物のケヤリムシは単眼も複眼も持つという。最近ペットとして水槽で飼うのが流行っているそうだ。

  目の瞼の動きは上下が多いが、瞳孔の形は丸や縦長もある。瞬膜(人間には無く、半月ヒダとして痕跡のみがある)は左右に動くものが普通のようだ。色々調べてみたが、分からないことが多い。 瞬膜とは鳥や爬虫類が持つ薄い膜であり、左右に開閉して眼球の乾燥を防ぐとともに、掃除をする機能を持つ。 哺乳類では瞬膜が痕跡器官となっているものが多いが、ラクダやホッキョクグマ、ツチブタ、アシカやアザラシの仲間には完全な瞬膜がある霊長類ではキツネザルやロリスなどに発達した瞬膜が見られる。瞬膜があれば目に入ったゴミを掃除しやすいのであろうが、その時痛みを感じているようには見えない。

  人間はわずかなゴミが入っただけで痛みを感じ、激しくこれを取り除こうと反応する。しばしば目を開けられないほどの苦痛の表情を呈する。自然界に棲む動物は空気中の埃や土粒などが頻繁に目に入ると思われ、これに対して無感覚になっている可能性があるが、そうしたことに触れている記事は見当たらなかった。ビーバーやマナディは水中では瞬膜を閉じて行動しており、瞬膜も透明だそうだ。ハヤブサは獲物を狙って急降下するとき繰り返し瞬膜を瞬きするという。猛禽類はヒナに餌を与える時、突かれないよう瞬膜を閉じる。キツツキは木の幹を突くときには木片が目に入るのを防ぐため瞬間的に瞬膜を閉じているという。

  目の汚れを取り去るためには、涙が欠かせないが、人間の場合は涙腺が顔の外側の眼の根元にあり、外側から内側の目頭にある涙道に水平方向に流れるようである。だが瞼は上下方向にしか動かず、瞬膜は退化して働かなくなっているので、ゴミを取るには不都合である。そのためゴミの存在を知らせるために「痛み」が強くなったのかもしれない。動物はその点、頻繁にゴミに晒される可能性があるため、いちいち痛みがあったのでは生存競争に勝てないことから、「痛み」を無くしたのかもしれない。こればかりは動物に訊くこともできないことから、研究者に調べてもらうしかないのであるが、その研究があるのかどうかは分からなかった。


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