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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2023】

【時事短評】中国の経済の疲弊が露呈

2023-07-21
  中国の経済状況が悪いようだ。少なくともコロナ禍前よりは悪化していると思われる。ノムは経済にはとんと疎いが、投資をしていたこともあって、状況判断には自信がある。中国では正確な国家統計を発表せず、そもそも地方から上げられてくる経済データ自体がてんこ盛りされているため、国がいくら正確な数値だと主張しても実態を反映していない。ノムとしては多くの事象や中国の動きを観察しながら、内情を推察するしかない。唯一信頼出来る指標は外国為替だけであり、そのデータがどうも芳しくないのである。
  上のグラフは中国の人民元の対ドル価格の推移である。これから大雑把な中国国内の経済事情や政治事情を読み取ってみたい。

 《 掲載グラフの解説 》

1.2019年11月のコロナ禍発生の頃から人民元(以下「元」と略す)は下がり続け、2020年初頭には0.14
  ドルまで下げた。

2.しかし国際貿易が停滞したことで、為替の安定化を取り戻したようで、2021年1月までは急上昇した。

3.2021年1月から2022年4月頃まではこの安定期にあったが、国内的にはロックアウトなどが連続し、国内
  経済は疲弊していったと思われる。

4.2022年4月に何があったのかは不明だが、国内経済の疲弊が外に漏れたかして、元の信用は一気に下落に
  向かい、対ドル0.14ドルまで下がった。

5.2022年末のゼロコロナ政策停止の報を受けてそれは一時的に回復した。市場活性化の期待感が大きかっ
  たからである。

6.2023年に入って習近平政権の発言に強圧度が増し、諸国に警戒感が再び増し始めた。

7.徐々に元の信用度は下がり始め、最近の値動きは急落に相当する。そして、現在はほぼ0.14ドルである。
  2年間で3度目の節目となった。

  問題はこれからの動きの予測であるが、ノムは節目を超えて下落の一途を辿ると予想する。理由は以下に掲げたような背景があるからである。

1.習近平が世界制覇の第一歩と目している台湾侵攻を早めようとしている気配がある。それはロシアの戦況が
  思わしくないからであり、ロシアが崩壊すれば、西側の通常戦力・核戦力が一気に中国に向けられる可能性
  があるからである。逆の事も考えられ、ロシアが収拾不能のカオス状況になれば、核兵器の管理を巡る
  不安定化が生じ、その場合は習の判断が正しいことになる。

2.中国はプーチン戦争を切っ掛けとした西側陣営の結束に苛立っており、東京にNATO事務所を設置する
  という案には外側から激怒の姿勢を見せた。こうした感情的な激しい言動が、単に戦狼外交によって
  だけではなく、外相や外交トップの王毅からすら出ていることは、中国の焦りを感じさせる。

3.中国は「対米関ケ原」を早く開始したいという思惑を持っており、それを早めるための偶発戦争勃発を
  願っており、事あるごとに軍事的挑発を行い始めた。

4.一方、経済的苦境を隠しながら、密かに経済に絞った外交を重ねており、支援を約束したりしているが、
  全て戦略上の口約束であり、反故になる必然性を持つ。事実一帯一路ではそうした事業推進能力が失
  われ、半ば放置状態に置かれている事業が目立つ。後進国はこうした中国の欺瞞に気が付き始めている

5.中国は最近、香港をアンテナ国家化し、香港で新たな外交政策を試している。香港での脱北者摘発に
  AIを活用し始めて、入国時点で拘束を可能にした。これまでは出国時拘束が多かったが、これからは
  入国時拘束も始まる可能性があるということを示唆している。北朝鮮人以外に広がる可能性はまだ低いが、
  例えば日本人の場合、日本国内での発言や行動が反中的なものであった場合は、空港で即時退去を申し渡
  される可能性がある。

6.こうした動きは海外投資家に恐怖感を与えており、投資の縮小・事業の撤退、という悪循環を招いている。
  6月17日にはニュージーランド首相がなんと「チャイナ・ビジネス・サミット」で中国に対する警戒感を
  表明した。中国は必要以上に世界に対して挑戦的態度を取っていることが、こうした警戒感を各国に与え
  ている。

7.15日のニュースで、習は「口は出すがカネは出さず」という方針に転換していると思わせられるものが
  あった。つまり香港に金を出そうにもカネが無いという状況に陥っているとノムは見ている。

8.18日のニュースでは、中国の経済成長が停滞しており、その主要原因は、①恒大グループの巨額な負債
  (47兆円)や赤字(2020年は9兆円・2021年は2兆円)に代表される不動産業界の赤字・②国民の
  消費に対する意欲減退と貯蓄への備え・③若者世代の失業率の悪化(21%)、であると分析しているが、
  それよりも諸国の中国に対する強圧的態度への警戒や不都合情報隠蔽への懸念の方が強いと思われる。

9.18日のニュースで、中国に再びコロナ禍の気配が濃厚であることが分かった。中国当局は統計を隠蔽、
  もしくは削除したが、浙江省で火葬件数が2倍に跳ね上がっているという。再びロックダウンと同様の
  措置が取られたら、中国経済は失墜するため、中国はこれをひた隠している。

10.19日のニュースでは、ついに日本に対して海産物輸入一時停止の措置に出た。検査のためと称している
  が、まだ福島から処理水を出してもいないのに、こうした強硬な措置を取った理由は、海産物の鮮度を
  落して、価格を暴落させようといういじめである。

  以上のことから、社会主義国であっても、競争のある現代資本主義の時代にあっては、習近平にとって全てが自分の思惑通りには進まない。経済の苦境をどんなに押し隠そうとしても、市場は正直に為替に実態を反映させる。中国の政治的・経済的・外交的動きを見るにつけ、明らかに中国はゼロコロナ政策で国内・国外需要を疲弊・不安定化させ、外交で頭の高い傲慢な姿勢と強圧的政策を取り続ける限り、諸外国の警戒感が増大することで、経済が疲弊してくるであろう。もはや「世界の工場」とうそぶいている時代ではなく、各国とも「デ・リスキング」のために「デ・カップリング」を推し進めていると思われる。

  この項を起稿した7月16日以降、中国経済悪化のニュースが続々と出てきている。20日の文春オンラインは、総額10兆円に及ぶゴーストタウンの話や、ナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数(米ナスダック市場に上場している中国企業の株価の指数)が、2021年2月のピークから3分の1ほどにまで落ち込んでいることを報じた。地方政府の財政はコロナ禍ですっからかんになり、公務員の手当削減や路線バスの運行本数削減などという切ない話も出ている。都市部では活況を呈しているように見えるが、不景気の傷は見えないところにあるようだ。中国政府の統計によると、中国四大都市(北京・上海・広州・深圳)の人口は27万5000人のマイナスとなった。統計史上初の異常事態だ。工場や店舗などの雇用が減り、出稼ぎ労働者が地元に戻ったためだという。そのため失業者が都会でたむろする風景はないのだ。都市部のテナント店は1階だけは繁盛しているが、上層階に行くほど空になっていることが多い。これも表からでは不況が見えない理由となっている。

  高さ597メートル、世界6位の高層ビルですら廃墟になっているという。2008年に着工し、その7年後には最頂部まで完成していたが、そこでお金がなくなり工事はストップ。野ざらしにされてきた。その周りの高級マンションや住宅街も廃墟となっている。地方の交通の便が悪い農村部にニョキニョキ生え出た高層マンションは軒並みゴーストタウン化している。これだけでも中国経済の状況が分かろうというものである。習近平総書記が作ろうとした新たな都、雄安新区はまさにその典型となりつつある。北京市から南西に100キロほど離れた農村を、エコでハイテクな大都市に作り替え、北京市の経済・研究機関の一部を移転させようという国家プロジェクトであり、計画は2017年に発表され、その時は世界でも大きく報じられ、日本からも多くの視察団が訪問した。だが現在、住民はゼロ。すでに10兆円を注ぎ込んだというが、完成までにどれだけの追加が必要かも見通せないという。見学者はほとんどいないため、廃墟感が著しいという。習が焦りを強くしているのは、この計画の失墜があるからかもしれない

(7.16起案・起筆・終筆・7.21掲載)


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