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【時事評論2023】

【時事短評】G7広島サミットの成果

2023-05-23
  5月21日に閉幕したG7広島サミットの評価がそろそろ出始めており、各国によってその成果の評価は異なるが、概ね当事国にとってそれぞれ成功したというものになっているようである。それは議長国の日本が、日本的な創意工夫によって成し遂げた、英知に基づいた戦略が成功したことをも意味する。他紙の論評については知らないが、少なくとも産経新聞(ノムの購読紙)は日本の成功を冷静な目で評価していると思うし、それは正しいと思う。以下では、ノムの独自の視点からG7広島サミットの評価をまとめてみたい

  まず第一に、先進国首脳会議の経緯について述べたい。その第1回は1975年11月のランブイエサミット(フランス)だった。この時には日本を含めG6(仏・独・伊・英・米・日)のメンバーだったが、伊は当初含まれておらず、のけ者にされたことで憤慨し、無理やり会議に当時のモロ首相が乗り込んできたらしい。主要議題は「第一次オイルショックに伴う世界的な経済危機について 」だった。この時日本からは三木武夫首相が参加している。参加国の資格として「①先進国・②国家が豊か・③IMFの主導国・④代議制政府(民主主義国)」という条件が必要で、敗戦後30年を経ていた日本がこれに選ばれたということは、復興が如何に素晴らしかったかを物語っている。1975年では日本のGDPランキングは2位であり、中国はまだ8位であった。1976年にカナダが加わってG7となり、1998年にロシアが加わってG8となった。だが2014年のロシアによるクリミア強奪による制裁として、ロシアは同年に排除された。広島サミットは先進国首脳会議としては49回目であり、日本がG7の議長国になったのは7回目となる。

  先進国首脳会議の意義としては、世界経済・世界貿易に秩序をもたらすことにあった。だが秩序が欧米の価値観に偏っていたことで、自由主義が先行し、自由経済競争の下で先進国に有利な状況が作り出され、次第に経済的格差が広まったともいえるのではないだろうか。それでも文明の格差は縮まったという評価もあり、その評価は今回の広島サミットで表面化した。というか岸田首相は敢えてアジアの盟主として、グローバルサウス(GS)を取り込む努力をしたと云える。これまでのサミットは欧米主導で欧米の価値観で運用されてきたが、これからはG20を意識して世界全体の利益になるような方向に持っていかなければ、G7が浮いてしまうことになる。岸田はそのことを意識して、G7以外の8ヵ国、そしてウクライナを特別に招待して、喫緊の課題の解消に務めようとした。

  今回のG7の課題は以下のようなものであった。

1.核拡散・核兵器使用への反対
2.ロシアのウクライナ侵攻に対抗する西側諸国の支援の強化
3.ウクライナ支援に対するグローバルサウス(GS)のヒガミ・妬みの解消
4.GSの意見の表明の場の設置と、GSの意識をウクライナ支援の理解に向けること
5.中国の専横と秩序破壊に対する世界の一致した対応の形成
6.国際法の順守・支配の確立
7.経済安全保障のための脱中国の主導
8.生成AIなど先進技術に対する世界基準の策定 
9.地球温暖化防止への意識の醸成

  他にも重要な課題はいくつもあったが、ノムの視点からまとめたものであり、視点が偏っている可能性はあるかもしれない。最後の9.地球温暖化問題についてはほとんど話題にならなかったようだが、これはむしろ国連の課題であるため、先進国首脳会議の課題とはならなかったのはやむを得ないとはいえ、人間界の最終的喫緊の課題として、本来はこれが最終課題として伏線になければならなかったと思う。

  成果の評価であるが、日本が議長国を務めたのは最善のタイミングであったと云えよう。民主主義国と権威主義国の対立がプーチン戦争を機に一気に高まり、エスカレーションの様相を呈している中、西側白人国が議長を務めたら、より問題が先鋭化しかねないところであった。良いタイミングでアジアの盟主たるべき日本が思い遣りに富んだ手法で会議を主導できたことは、最高の感銘を与えることになったと云えよう。特に岸田が故郷の広島を会場に設定し、サミット行事の中に原爆資料館見学と原爆慰霊碑参拝を組み込んだのは、決して違和感のあるものでなく、逆に世界の指導者に緊張ある使命感を与えたに違いない。それは核戦争になったら、世界のどの国の首都も広島と同じことになることを各国首脳が思い知ったからである。岸田はまずこの点で大成功を収めた

  第二にGSの8ヵ国を招待したことも、非常に有効な戦略であった。どうかすると2022年のインドネシアでのG20、2023年9月のインドが議長国となるG20との対立が目立ってきていたが、G7との融和性を作る上で今回はこの点でも成功したと云えるであろう。

  第三にウクライナが電撃的に参加したことが最も大きなインパクトを与えた。事前にウクライナから打診があったものの、直前までOL参加となる見通しであった。ゼレンスキー大統領の決断によるものだったのだろう。そして日本は、ウクライナが参加したことでG7会合に華が添えられることになり、これも世界的な話題として盛り上がりを見せた。

  その結果、異例づくめの広島サミットは世界を巻き込んだ形で大きなまとまりを作ることに成功した逆に言えば、ロシアと中国の孤立が際立ったと云える。中国は焦り、直後の23日(本日)にロシアとの会合を持つことで、意見調整を行うことにしたが、恐らく中国・ロシア連合は孤立感を深めたに違いない。中国はG7開幕中、連日のように批判し続けたが、それに耳を傾けた人は恐らくいない。「また自国のことを棚に上げて他国を批判している」と思って、意味のない批判を聞こうともしなかっただろう。ロシアも同様に、「G7はプロパガンダショーに変質した」などと非難したが、これもまた嘘のプロパガンダに終始しているロシアが、自国のことを棚に上げて他国を批判していると見られているため、誰も気にもしていない。

  今後もG7の役割は大きくなることはあっても、存在が軽視されることはないであろう。これまでは米欧の少数富裕国の世界支配のための連合と見られることもえてしてあったが、日本が主導したことで、世界のG7の観方が変わったかもしれない。ある意味ではそれが最大の成果だったのかもしれない。日本がG7の議長国になったのは7回目であるが、「和」を重んじる日本精神が最大限に発揮され、それが成功の元になったと思われる。これまでのG7会合では、各国首脳の顔つきが緊張していたことが多かった。今回では多くの首脳が本当の意味での笑顔に溢れていたように見受けられる。それは日本がある意味で中立(西側ではあるが独自の平和路線を歩んでいる)で公正な大国として世界に受け入れられていることを反映しているのかもしれない。その意味で、これからも日本は、利害関係の無い仲介国としての役割が大きくなることが期待される。だが残念ながら、隣国中国の脅威の存在がある限り、米中の仲介役は果たせそうにないと思われる。

  薮蛇な蛇足であるが、今回のサミットを機に、韓国でもG8入りを目指す機運が高まっているという。それについてノムは期待を持っているが、韓国が単に自国の名誉のために「地位としてのG8入り」を目指しているとするならば、残念ながらその期待は間違っている。まずその前に、100年も前のことを根に持って日本を中傷してきた歴史を反省しなければならないだろう。日本は「和」の精神で戦後の復興を成し遂げ、精神的にも世界に受け入れられてきたが、韓国は「怨」の国と言われて蔑まれてきた。日本の統治によって技術的にもインフラ的にも世界に伍する繁栄の基礎を築いたが、そのことを感謝するどころか、恨みの種としたことで精神的品格を損ねている。もし韓国がG8に加わったら、そうした怨念の精神がG8諸国を悩ませることになるだろう。経済的にも体制的にも十分な資格を持ちながら、未だにG8入りが果たせないのは、そうした不安定要因があるからである。もし韓国が、政権が代わっても怨念を前面に出すようなことがなくなれば、そして口を慎む慎重さを身につければ、すぐにでも韓国をG8に加えることができるだろう。だがそれを成し遂げるには、まだ最低でも10年の年月が必要であろうと思われる。

(5.23起案・起筆・終筆・掲載)


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