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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2022】

女性兵士の是非

2022-12-22
  女性兵士が正式な形で登場したのは第二次世界大戦時のソ連であったらしい。スターリンは人の命などお構いなしであったので、ドイツへの反撃のために兵士不足を女性で賄おうとした。その数は80~100万に上ると云われている。そして女性兵士が立派に勇敢に戦えることが証明されたため、戦後は女性を軍に導入し、前線に送る国家が増えてきている。トルコ・アメリカ・ヨルダン・ノルウェー・イスラエル・エストニアなどで採用しているという。ウクライナでは兵士の22%が女性である。その理由は明快である。戦争というものがもはや体力を競うものではなくなり、兵器を扱えるかどうかで決まるようになったからであり、その兵器も軽量化が進んでいるためである。女性が最も不利とされる生理についても、生理用品の発達と生理調節の薬剤がその不利を補うことができている。以下ではそうした事情の変化を踏まえた上で、女性兵士の是非を論じてみたい。

  古代のまだ兵士という職業的分業が無かった時代、集落同士・部族同士の争いや戦争では女性も戦闘に加わった可能性が大きい。武器は手斧や槍など、女性でも扱えたからである。男性との体力差はあったが、女性であっても戦闘意欲はあったからである。紀元前15世紀頃を舞台にしたギリシア神話に登場する女性だけの部族にアマゾネスというものがあったとされる。狩猟民族であり、この部族は女だけで構成されていたという。アマゾネスは子を儲ける時だけ他部族の男と交わり、男の子が生まれると殺すか他部族に預けたという。自らの集団を守るために、女達はこぞって戦闘に参加したという。

  15世紀のフランスでは17歳のジャンヌ・ダルクといううら若い女傑が登場し、フランスの軍人としてイングランドをオルレアンの包囲戦で打ち破り、一躍英雄として祭り上げられたが、コンピエーニュ包囲戦で負傷し捕虜となったため、19歳で火刑に処せられた。

  第二次世界大戦では冒頭で述べたように、女性が正規の軍人として登用された独ソ戦では特にソ連側で女性スパイや狙撃手などの兵士が活躍し、(捏造も含まれるが)英雄が多く誕生した。ソ連側ではゾーヤ・コスモデミヤンスカヤが前線で活躍したがドイツ支配地域で捕らわれ、絞首刑となった。ソ連は翌年の1942年、彼女に英雄称号を与えてプロパガンダとして大々的に英雄に祭り上げた。マリーナ・ラスコーヴァリュドミラ・パヴリチェンコ(後述)は国民的英雄として知られている。連合国側ではアメリカ・イギリスの女性工作員がフランスに送り込まれ、37人のうち、14人が命を落としたというが、特に英雄としてはいないようだ。

  連合軍の特殊作戦執行部 (SOE) の工作員ヴェラ・アトキンスは生き残り、戦後になって行方不明になった500人以上の女性工作員の足取りを辿る調査を行った。アトキンスは「女たちの戦争には、色・匂い・光があり、気持ちが入っていた/女たちは気持ちに支えられて立ち上がる」と語る。最近のニュースの中にも、恋人を戦争で失ったウクライナ女性が、今度は彼に代わって軍に志願したというものがあった。女性が弱々しく、戦争には向かないという先入観は棄てた方がよいのかもしれない。

  女性が戦闘力や戦略力に於いて男性に劣るというのは誤った認識となりつつある。現に第二次世界大戦においても、ソ連のマリーナ・ラスコーヴァはパイロットとして優れた才能を発揮し、夜間爆撃を敢行して「夜の魔女」という異名を取った。やはりソ連の狙撃兵のリュドミラ・パヴリチェンコはウクライナ生まれであるが、ライフルで309人(その内36名は狙撃手だった)を狙撃して一躍英雄となった。敵のドイツ兵は「スターリンの死のエンジェル」と恐れたという。ドイツでは飛行士のハンナ・ライチュが1937年に女性初のアルプス横断飛行を成し遂げた。ヒトラーはこれを称賛し、世界初のヘリコプターの試乗をやらせている。だが彼女はナチ党にも軍にも所属していない民間人だったにも拘らず、有名な急降下爆撃を発案し、急降下の際にスピードが上がり過ぎないように制御装置を開発した。これにより命中精度が飛躍的に上がったという。ライチェは軍用グライダーも開発した。1944年にヒトラーから一級鉄十字章が与えられている。その場でライチェはV1飛行爆弾を有人にすることをも提案している。

  折しも本項をアップした当日(22日)のニュースに、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンが、女性受刑者をスナイパーとして前線に配置することを目指していると語った、というものがあった。彼は第二次世界大戦でのソ連でのスナイパーの活躍に目を付けたらしい。プリゴジンは「第2次世界大戦で女性受刑者は看護師や通信員だけでなく、妨害工作員やスナイパーとしても活躍したことは誰もが知っている」と言及し、上記したリュドミラ・パヴリチェンコを例に挙げた。女性受刑者をスナイパーとして募集する考えを明らかにしたという。だがそれは嘘であり、スナイパーとして活躍したのは飽くまでも正式な軍人であった。勿論パブリチェンコも正規の軍事である。ただ例外はあったかもしれない。旧ソ連では第2次世界大戦中、約100万人の女性が軍隊に所属。そのうち2484人が女性スナイパーとして戦地に送られ、約500人が生き残ったと「東スポWeb」は報じている。ということはソ連時代にも女性受刑者を戦場に送ったという先例があることを示唆している。勿論、減刑もしくは自由放免と引き換えに軍に所属することを条件としたと思われる。これは論外の話であり、ソ連やロシア以外ではこうした話は聞いたことがない。(この部分は12.22の夜に追記)(《国際》12.22)

  だが男の職場であるような軍に女性を組み入れるとなると、色々と厄介な問題が生じる。兵士同士の恋沙汰や性行為などが管理対象になるだろう。冒頭に述べたように女性の生理の問題もある。長期の前線での行軍や戦闘で生理が始まると、厄介なことに女性としての恥ずかしい気持ちが出てしまうという。第二次大戦では1日30キロの行軍をしていた女性兵士の中に生理が始まった者が多数おり、行軍後の道の砂には赤い跡が残されたという。彼女らは河に辿り着いた時、爆撃の最中にあって河に入って身を清めたという。女は戦場でも化粧をし、女性らしい振る舞いを忘れない。だが女性兵士の場合、敵兵に捕まったときには強姦されることを覚悟しなければならない。

  以上の事実を踏まえて、ノムは女性に対しての徴兵義務は間違いだと考える。それは本来的に女は子孫を残すことが最大の責務であり、心理的にも子育てに向いていることから、女性は戦時においても後陣を担うべきだと考える。ただ、女性の中には男勝りの者もいるであろうし、戦闘意欲を持つ場合もあり、もし自分から志願して兵士になりたいと思う女性がいたならば、それはそれで良いと考える。問題は女性を受け入れる態勢を軍の中に作らなければならないということである。

  日本でも自衛隊に女性は居り、女性自衛官は現在約1.7万人(全自衛官の約7.4%)であるようだ。ノムが心配するような事件はこれまでのところ聞いたことがないことから、杞憂なのかもしれない。幸いなことと言うべきか、日本には徴兵制がないので、男女に自分の意思による任官が可能となっている。だがもし戦争が起きたら、徴兵制を復活しなければならない事態に陥ることは明々白々であり、ロシアも兵員不足で苦労していることから分かることであろう。そうした場合、憲法を改正しなければならないことになるだろうし、諸法規も改訂しなければならなくなる。そうした事を前提に考えた場合でも、女性は徴兵対象から外し、自由な志願制にすべきだと思うのである。

  人間界では男女の役割というものが自ずと分かれており、現代文明の中ではそれが「機会均等・自由平等・男女平等」というイデオロギーで一緒くたにされているが、やはり男女の適性と役割を考えた上で、兵士という任務には女性を充てるべきではないと考える。だが軍にはいろいろな仕事の役割があり、前線に出て戦闘するだけが仕事ではない。たとえば看護兵などは女性が向いている職域だと思われる。中には女性であっても前線で戦いたいと思う人もいることは確かであり、本人の希望によって軍内の適切な仕事をあてがうことは可能であろう。女性兵士については原則(徴兵忌避の自由)を守りながらも、臨機応変に対応していくしかないと思われる。


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