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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

人間のサバイバル能力

2021-12-25
  生き残り戦略については以前「衰退期のサバイバル術」というテーマで書いた。最近の11月8日に、NHKの「ヒューマニエンス」で潜在能力について勉強させてもらった。そこで学んだ多くの知見から、人間のサバイバル能力との関連を見出し、それをテーマに書いてみたいと思った。

  赤児は生まれてから脳の重さを2ヵ月ほど経ってから増大させていくが、驚いたことにシナプス(神経端)はそれと同期して7~8ヶ月までは増大するが、それ以後減っていくという。尤もこれは密度での比較であり、脳自体は5~6歳までに3倍ほどに増大しているので、絶対数が減っているとは言えないだろう。その理由として、赤児は情報を大きな領域を見ることから得ているのに対し、幼児は情報をより狭い領域を見ることで全体を把握するという能力を発達させるからであると考えられているようだ。大人はシャーロックホームズではないが、小さなことから大きなことを推察する能力を持っており、それは賢人であればあるほど、小さな事実から全体の状況を判断する能力を鍛えているという考えと一致する愚民は小さなことを見てその事実だけしか理解することができず、時に誤った全体認識をしてしまう幼児的脳を持つ人はしばしば社会に対して誤った判断を下し、不満を募らせて文句を言い始める。その行動も幼児的で暴力的なものとなり、赤児と違って手が付けられないものとなる。

  最近、3歳の孫が2個と半分のクッキーをおやつとして貰った際、いつも「3歳だから3個ね」と言って出していたのを思い出したのか、「1つは半分だからもう1つ」と要求したのには驚いた。人間は3歳にして「半分」という概念を理解することができるのである。まさか「0.5」という数字を理解しているわけはないが、その能力は人間の知能の高さを証明していると言えるだろう。うがった見方をすれば、3歳でも生存本能から、より多くの食物を得るための智恵を働かせていると考えることができる。これもまた一つのサバイバル能力であろう。

  盲目の人が自転車に乗って公道を走るという信じられないような事実がある。イギリス人のダニエル・キッシュは1歳の時に視力を失ったが、生後15から18ヵ月頃から口でクリック音を出すエコーローケーションを訓練し、今やコウモリのように周囲の状況を把握できるようになった。建物なら50から60m先でも把握できるという。角度と輪郭が分かるのである。動いているものの方が把握が容易であるという。常人の場合視力があるため、この能力を使っていない。相手の話を正確に聴き取るために音に対して選別を行っているのである。聞きたい会話に神経が集中することで、他の音に対する敏感さを失ったと言えよう。

  このような人間の特殊能力・潜在能力を考えると、非常事態に遭遇したときにすぐにその能力を引き出すことはできないが、少なくとも一世代の間にはどんな潜在能力が現れるか、科学者にもノムにもまだわかっていない。各種のサヴァン症候群(特殊能力を持つ対人関係不全)の患者が示す特殊能力が現れてくる可能性は大きいと言えるだろう。例えば核戦争によって放射能レベルが上がり、食物などにも放射能物質が入り込む事態が起きたとしても、人間は元々放射線を有効利用しており、それをさらに高いレベルでも発揮するだろう(11.8「放射能問題は全くの虚構 」)。そして環境の激変に対しても、放射線は進化を速めることから、適応した人類が早々に現れることも十分考えられる。問題は、適応が一世代だけでどの位まで可能なのか、適応進化には何世代必要なのか、ということにある。

  適応をそこまで考えなくても、人間は元々かなりな適応能力を持つ。数世代前の時代には、冬の寒さに人々はわずかな暖房手段しか持たなかったにも拘らず生き延びてきた。サムライは登城する際にオーバーコートのようなものを羽織っていたわけではないようで、城中にあっては雪が降るような寒さであっても、火鉢しか暖房は無かった。恐らく震えるほどの寒さを慣れで乗り切っていたのであろう。この慣れ」という適応能力の幅はかなり広いと思われる。現代人は寒ければ暖房をつけ、いかようににでも厚着することができるため、寒さに慣れるという訓練を怠ってきた。ノムは今年は下着のシャツを着たのは12月5日であった。長袖シャツを着たのは12月に入ってからであった。外出時にはほとんどジャンパーなりを着用しない。一時的なことであるから問題はない。反って、暖⇔寒を交互に感じることで、温度変化に対する耐性が増していると感じている。だがそれでも、昔の寒さを想うだけで震えが来る。昔の人の耐寒性は現代人には想像すらできないものであったに違いない。

  飽食の時代にあって、人々は食べ物がないという状況を想像すらしなくなった。だが難民の中にはそうした状況を日々味わっている人がいる。また将来は災害に遭った人への救援活動というものが疎かになることが予想され、自然災害時に飢餓で死ぬ人も出てくる可能性は大きくなるであろう。そうした生存限界状況についての研究がなされているのかどうかは知らないが、ノムはまず自分の食を減らすことから慣れを生じさせようと努力している。人間が1日に必要なカロリーは体重1kg当り1870kcal だそうだが、ノムの基礎代謝は体内計によると1150kcal と表示される。恐らく肥満の人ほど飢餓に際しては生存確率は低くなるのだろう。アウシュビッツ強制収容所などが解放された際、映像では骨と皮のようになった人も救出された。人間のサバイバル能力についてはまだ体系的な研究すらされていないと思われる。


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