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【時事評論2021】

【時事短評】中国経済に異変・恒大グループ危機から始まるか?

2021-09-22
  21日のNHKニュースで中国の不動産企業の恒大グループの経営危機から、世界的規模の株安が生じたとの報道があった。これまでの中国経済の流れがあまり報じられていなかった中、素人としては突然の中国経済の赤ランプ点滅に驚かされたが、予想していたことでもあった。その予想は、8月30日に中国政府が「中国衰退論」についてのネット上の噂を禁止したことから出てきたものである。この頃にすでに中国経済に景気の衰退感が出てきていたようである。以下では簡単にノムの中国経済についての自論を展開したい。

  中国が2014年11月に開始された習近平による一帯一路構想は、丁度中国経済が転換点に差し掛かった頃であった。筆者はこのときに、一時的にせよ中国経済に陰りが生じたと観たが、その後の経済の躍進振りは目を見張るほどであり、筆者の予感は外れたかと思った。だがどうも成り行きを見ていると、習近平はこの頃にこの陰りを隠すために一帯一路を提唱(2013年)して、目をくらまそうとしたか、あるいは起死回生の切り札としようとしたように見える。それは大成功し、中国経済は躍進を維持したどころか、それ以上の効果を上げたようである。

  だが社会主義に資本主義を接ぎ木したような歪(いびつ)な体制は経済にも大きな歪(ひずみ)をもたらした。それが国営企業の問題である。経営効率が悪い上に、利権絡みで不正も多く発生し、国家全体に汚職が蔓延した。習近平は汚職追放もほぼ同時に進めてその矛盾を解消しようとしたが、それはやはり原理的に言って無理であったようである。また習近平は中国の司法主義的手法による利潤の確保を優先するために、民間企業の活躍をほぼ野放しにしていたが、それもまた地方政府を巻き込んでの土地収用問題を引き起こしていた。中国全土にゴーストタウンが生まれたのは周知の事実である。すなわち恒大グループの問題は今さら出てきたものではなく、積年のツケが露呈したということを意味する。

  この問題から派生して、中国の国庫自体が恐らく資金不足に陥っていると筆者は観る。それは一帯一路を進める上で、各国首脳を収賄するのに必要な資金やロビー活動資金、そして口約束した膨大なインフラ整備投資に回す資金が圧し掛かってきているため、いくら莫大な貯金があったとしても底なし沼に入ったかのように、資金は瞬く間に枯渇していったのではないだろうか。そのため習近平は妙案を捻りだし、「共同富裕」思想を突如2018年頃から唱え始め、2021年8月に具体的に「三次配分」を企業に強制し始めた。つまり莫大な儲けを出している大企業は、その蓄えを差し出すべきだと諭したのである。これは社会主義としては当然の理屈であり、企業は報復措置を恐れて自発的に国家に寄付を始めた。これは国庫に入るため、必ずしも国民には回らない。こうした手法で国家と国民にとってウィン・ウィンの結果になるはずであった。だが資本主義にこうした社会主義の規制を導入した結果がどうなるかは歴然としており、企業は競争力を失って破綻する恐れが出てくる。

  今回の恒大グループの経営危機は今に始まったものではないが、その端緒となることは確かであろう。ニュースでは日本円にして負債総額は33兆円に上るそうである。通常の資本主義国であったなら、とうに倒産していておかしくない。なぜここまで負債が膨らんだのかという疑問は、中国のことであるから全て隠蔽されてきたのであろう。筆者の観るところ、中国は世界の工場で大儲けして傲慢になり、世界制覇の大風呂敷を広げてはみたものの、その儲けの根拠であった不正な競争をやり玉に挙げられて追及されるに及んで、ついに儲けた莫大な資金を枯渇させてきているのではないかと思われる。それは世界各地で一帯一路絡みのプロジェクトが進んでおらず、中には中止や再検討を要求される案件も出てきている。つまり大盤振る舞いはもう不可能になったことを示唆していると言えるだろう。

  これは中国のバブル崩壊を観ることもできるかもしれない。事実恒大グループは土地と建物という不動産に絡んだ企業体であり、地方政府と組んで偽りの儲けを出してきたが、それは全国的に資金不足から行き詰まり、工事は途中で放棄されているようだ。恒大グループが倒産したらどうなるのかは2つの考え方があるようだ。1つは国有化、2つ目は解体して再生へと向かわせるというものである。国有化はさらに矛盾を拡大することに繋がるので、恐らく2つ目の方策が取られるだろう。

  問題は習近平が「共同富裕思想」によって規制を強めていると同時に、「第二の文化大革命」と言えるような庶民文化にも規制を始めていることである。これはその必要性を考えた場合、今がそのときか?と疑わざるを得ない気がする。どうも習近平は全てのことに焦りを感じているようだ。自分の考えた計画が上手くいかなくなったときに、独裁者がやることは、強権の発動であり、それは文化面に及ぶ。毛沢東を尊敬していると言われる習近平としては、文化面にまで口を出すのは当然だと考えているのかもしれないが、それが文化大革命の失敗の原因であったことを彼が知らないわけでもないだろう。同じ失敗を自ら繰り返そうとしているのであろうか?

  以上挙げた2つの要素、バブル崩壊文化規制強化は相乗的に働き、予想以上に早く中国の昇竜気運を失墜させるかもしれない。西側はこれを好機と捉え、さらなる経済包囲網を築いて第3の要素を創り出すべきであろう。すなわち経済制裁による中国包囲網である。全ての分野で中国から手を引き、中国と関わらない方が身のためである。今回株価が下がった国は中国との関わりを続けようとしている国家であり、アメリカだけは敵対しているため逆に株価を上げた。正に経済は、政治状況をも端的に物語ってくれるのである。今後の成り行きを注意深く観察したい。


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