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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2021】

人口限界説の変遷

2021-05-22
  人類がホモサピエンスに進化するのには数百万年掛かっているが、ホモサピエンス自体は十数万年前に誕生したとされる。そして7万年程前にアフリカを出て世界に散ったが、氷河期によって最少人口は1万人程度まで減ったとされる。それから1万年前に地球の温度が安定したことが決定的に影響し、人類は農業を始めると同時に急激に増殖を始めた。だがそれは時間の経過からすればまだゆっくりしたものであり、農耕や牧畜が始まった頃でやっと1億人であったと思われる。だがその数は他の動物に比して極めて多かったのであろう。筆者は学者ではないため正確なことは分からないが、他の哺乳動物で1億を超えたものはないだろうと推察する。

  人間が人口について論じ始めたのは古代ギリシャの頃からであると言われる。プラトン(前427-前347)はポリスの適性人口を具体的に5040人としたという。アリストテレス(前384-前322年)は一目で見渡せる程度が適正であると考えた。それから人口についての考察の議論は停滞し、18世紀の終わり頃に、イギリスの経済学者のトマス・ロバート・マルサス(1766-1834)が1798年に匿名で『人口論』を著したことで人口論が再び脚光を浴びた。以下では人口の限界に関する諸説を比較し、筆者の自論と比較していきたい。

  国連は2020年に世界の人口について、2030年に85億人・2050年に97億人・2100年に109億人になると予測していた。だがその後ダリル・ブリッカー/ジョン・イビットソン共著の『2050年世界人口大減少』などの著作も出たり、2020年7月14日には2100年人口を88億人とする論文が英医学誌ランセットに掲載されたりした。世界人口動態は、①出生率・②死亡率・③平均寿命・④難民移民動向・⑤食料充足率、等を考慮して試算されるが、シミュレーションの仕方でかなり変動も出てくると思われる。だが確かに最近は近い将来の人口減を予想する国としてロシア・日本・中国・韓国などが話題になっており、少なくともロシアは既に1990年代にピークを迎えて減少期に入り、日本は2004年頃から少子高齢化に突入している。筆者は人口減は地球環境を重視する立場からすると歓迎するのであるが、人間はこれまで人口増を繁栄の象徴して歓迎してきたことから、学者らは危機だと捉えており、少なくともそうした表題で本を売ろうとしているようだ。

  日本の人口動態をグラフで見ると、人口の増加には3つの要素があるように思われる(「市町村合併の推進状況について」参照 )。①政治の安定(江戸幕府による安定)・②経済の活発化(明治維新)・③技術進歩(明治維新以後)である。一方人口の減少や停滞に関連する要素として、①戦争・②飢餓(飢饉等・食糧不足)がある。だが日本の太平洋戦争による310万人(国内外での軍人・民間人)は統計上は一時的でわずかな現象に過ぎず、江戸時代の享保年間以来の152年間の長い停滞に比べると大した意味はないように見える。この江戸時代の人口停滞を研究することこそ、未来の人口抑制というものを可能にする鍵があるように思えた。


  日本の人口が急速に増え始めたのは江戸時代と明治維新からであり、江戸時代の人口増は戦乱が収まって安定した庶民生活ができるようになり、経済も発達したからだと考えられる。そして明治維新では諸外国から科学技術が導入され、鉄道が走るようになって交通が革新的に進歩し、貿易を通じて繁栄がもたらされたことによると思われる。どこの国でもそうであったが、人口の増加は繁栄の象徴として歓迎された。日本では驚くべき事に、日清・日露戦争による死者はマクロの人口曲線にほとんど表れていない。その間に「産めよ増やせよ」的政策が採られでもしたのであろうか。そのような研究があることを知らないが、ぜひ知りたいものである。また日本では病気による人口減というものもマクロのグラフには表れていない。

  ヨーロッパでは1300年代半ばからのペストの大流行がマクロの人口曲線にはっきり表れており、病気というものが人口抑制に働くことが明らかに分かる。現代のコロナ禍での死者は2021年5月6日時点で690万人を超えたと推定されていることを考えると、これは全世界人口からすると、5月21日の78億2400万人の0.09%にも満たず、グラフには表れないであろう。人間のワクチン対策が今後も続くと考えると、病気が人口抑制要素になるとは思えない(「日本と西ヨーロッパの長期人口推移:小塩丙九郎」参照)

  では戦争がもたらす災禍についてはどうかというと、第一次世界大戦の1600万人の死者のうち、その1/3はスペイン風邪のためとされるため、戦争被災志望者1066万人は終戦時の関連国人口比1.7%とされており、これはわずかだがグラフに表れ得る数字である。第二次世界大戦の死者は8000万人程度(民間人・戦争飢餓・戦時疾病を含む)と推定されているが、これは当時の世界人口と比較すると2.5%に相当するという。戦争による被災者は世界大戦化したことで格段に増えていると言えるだろう。予想される第三次世界大戦では核兵器戦争が主流となるため死者も大幅に増えると思われるが、直接的戦時死者は2億人と筆者は予想し、以後の戦国時代における餓死者・病死者が圧倒的に多くなり、それをおよそ人口の1/3として25億人ほどと考える。そしてその後に数年は続くと思われる核の冬により、さらに死者は増え、最終的に戦後10年経った2030年には世界人口は20億人程度となっている可能性が非常に高い。

  今後数年の間に第三次世界大戦が避けられない運命的な大災厄だとすれば、それもまた自然の叡智による個体数調整の一つなのかもしれない。人間はコロナ禍はなんとかワクチンで対処できると考えているが、人口圧が無くならない限り人間界でのストレス増加はなくならないため、新たな病原菌(それは確実に原初生物ウイルスによると考えられる)の出現により、いたちごっこになり、少なくとも経済活動の停滞により人口増に限界が生じてくるかもしれない(20.11.30「ストレス論」参照)。上記した『2050年世界人口大減少』という著作もそうしたウイルスによる予測に基づくと思われる。だが筆者の場合は第三次世界大戦を未来予測に組み入れているため、その予想ははるかに厳しいものとなっている

  上記した国連の人口予測は現在の状況の延長線上に置いているので、それは科学的に全く間違ったものである。科学というのは直線的に変化しない事象に対して、直線を描くことを許さない。国連の予想は仮定を伴ったものであり、その仮定とは、「これまで人類は産業革命以来、ほぼ直線的、および級数的に増加してきた。その増加は今後も続く」という仮定である。だが科学の教えるところは、急激な変化(人口爆発)はカタストロフィーを起こし、崩壊するということを教えている。また生物が地球という空間的制限のある地表に生存が制限されているという空間制限を持つため、その増殖に限界があることは科学的に論じる必要もないほど自明の理である問題はその限界ではなく、限界を超えると起こるカタストロフィーである(20.6.27「バッタの異常増殖と人間の異常増殖 」参照)

  筆者は35年ほど前に世界人口の限界を100億人と想定した。これに何らの科学的根拠はなく、強いて言えば人口曲線を曲線的にさせたものであるが、飽くまでも直観によるものである。だがその予想はかなり現実に近くなってきており、予想した通り世界には人口ストレスによる紛争・戦争が起こり始めた。ノムが予想した35年ほど前の1980年代には世界は比較的安定しており、東西冷戦下(1947-1989年)にあったため、地域紛争は極めて少なかった。ノムは40歳頃であり、平和ボケした日本に住んでいて戦争の危機も、人口爆発の危機も感じてはいなかった。だが環境問題を研究するうちに、これは将来必ず最大の問題になるだろうと予感していた。それは新たに意識されつつあった環境問題(地球温暖化)が、人間活動から生じていることが明確になりつつあったからである。

  人間活動が人口に比例する以上に急速度に拡大するであろうことは予測可能であった。それは生活レベルの向上があるからである。そして科学技術はそれを可能にしつつあった。緑の革命(1940年代-1960年代)があったことで、世界は著しく成長が可能になり、人口爆発が起こりつつあった。これは世界大戦で進歩・拡大した爆薬製造を行っていた化学会社が、戦後にその技術を農薬や肥料製造に向けたからだと言われる。戦後生まれのノムはその真っただ中にいたのである。つまり恩恵を最大限に受けた世代である。だがそれは不吉な予感をももたらした。このまま人類は永遠に成長できるのであろうか?という素朴な疑問である。生態学などを勉強した結果、それは不可能であることを確信した。

  地球という空間的制限のある生命圏では、食料という人口制限要素が立ちはだかる。地上を全て農地で埋め尽くすことは事実上不可能であり、最終的には使用可能な淡水の量が農地を制限するだろうと予測した。当時はそのような淡水量の試算というような科学的知見が無かったが、論理的に考えていけばそれは必然的であると思われた。そうした思考から、地球の人類の最大許容量は100億人程度だろうと予測したのである。予測した35年ほど前(1985年頃)の世界人口は12億1000万人程度であったため、予想される人口曲線から、2020年には70~80億人に達し、人口ストレスから紛争や戦争が起こると予測した。その当時の常識から、世界大戦が起こるとすれば核戦争は避けられないと考え、第三次世界大戦が2020年頃に起こるかもしれないと予測した。だが必ずしも戦争だけを予想したわけではなく、それを「大災厄」と表現した。図らずもコロナ禍が2019年に起こり、それが中国の生物兵器開発から生まれた凶悪なものであると考え、事実上の戦争状態に入ったと考えた(20.12.2「中国の巧妙な悪だくみ」・5.18「武漢コロナはやはり中国の生物兵器であった 」参照)。実際サイバー攻撃は戦争の一形態を成している。今後IT戦争を経て核戦争になるであろう。その際にはフェイクニュースが世界を飛び回るであろうが、これについてはアメリカが先にその先鞭をつけた。

  この予想は生態学などから当然予想されるものであるが、事態は地球温暖化というものが、二酸化炭素濃度の増大により動物全体の窒息死に結び付くということが分かったことで、予想以上の災厄をもたらすことが分かった。それはすでに2000年に出版された『2080年に人類は滅亡する』(西澤潤一・上墅勛黃共著)で明らかにされたが、この時点での予想を上回る勢いで正のフィードバックが起こっており、それは早まるであろう(5.7「動物と人間の絶滅の危機 」参照)。これらのことは別項で述べているのでそれらを参照したもらいたいが、結論として、ノムの予想した人口限界説は現実に起こりつつあり、正に現代はその真っただ中にあると考えなければならないのである。残念なことだが、これを回避することは今となっては不可能であり、その遷移点(臨界点)は2000年頃であったろうと思う()


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