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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

*005「大災厄後の世界」(6329字)

  (註)参照は本HPで公開した論文の場合は(*〇〇〇「・・・」)の形で番号とタイトル名を示します。現在執筆を続けている本論文の場合は(№〇〇〇「・・・」)の形で、雑論文の場合は(記〇〇〇「・・・」)の形で示します。ただし本HPの公開論文以外はまだ公開できません。
 
*005.「大災厄後の世界」(2020.1.13起筆・終筆・1.14公開/6329文字)
 
  世界が何らかの切っ掛けから第三次世界大戦に至ったあと、世界はどうなるのだろうかという想像の範囲のことを書くのは辛いことです。あまりこの項については長くしたくありません。ですがその経過のあらましを想定しないと次に来る未来世界の展望も抽象的なものになってしまうでしょう。
 
  世界にはかつて1986年には7万発の核兵器がありました(№642「核兵器」)現在でもまだ核兵器が最低でも1万4千発(2018年現在)以上あり、現在イランが開発意欲を明確にしています。核クラブと呼ばれているアメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国の5大核保有国の他にも既にイスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮が保有しているとされ、特に中国と北朝鮮の脅威が大きいのです。それは情報を隠蔽しているからです。

  中国は2005年7月に、当時の国防大学防務学院院長で人民解放軍の朱成虎少将が「政府はすべての幻想を捨て、あらゆる力を集中して核兵器を増やし、10年以内に地球人口の半分以上を消滅できるようにしなければならない」・「アメリカは強大な国力を保っているので、徹底的に消滅させないと、将来大患になる。アメリカに対しては、我が国が保有する核の1/10で充分だ。台湾・日本・インド・東南アジアは人口密集の地域であり、人口消滅のための核攻撃の主要目標となる」・「もしアメリカが中国と台湾との軍事紛争に介入し、ミサイルや誘導兵器を中国領土内の標的に向けて発射すれば、中国は核兵器によって反撃する」・「アメリカが中国の本土以外で中国軍の航空機や艦艇を通常兵器で攻撃する場合でも、中国からのアメリカ本土への核攻撃は正当化される。中国側は西安以東の全ての都市の破壊を覚悟せねばならない。しかしアメリカも数百の都市の中国側による破壊を覚悟せねばならない」と発言したそうです。中国の軍事的脅威は当時よりもはるかに勝っており、中国のこうした基本姿勢は変わっていません。2005年の発言から想定される中国の現在の核兵器の数は弾道ミサイルによるものだけでも数千発以上であろうと想像されます。3000発の核弾頭を保有しているとする説もあります。
 
  北朝鮮は2017年に米国全土に届くとされる火星15号ミサイルによる発射実験成功で、傲慢にもアメリカや日本を恫喝しました。これは今では「2017年北朝鮮危機」と言われています。アメリカはこれに対抗措置をいくつも講じ、珍しく「米国を脅し続ければ世界が見たこともない火力と怒りに遭わせる」と北朝鮮を逆に恫喝しました。ですが北朝鮮は現在も暴言を吐いて各国を威嚇しており、北朝鮮の場合は自暴自棄による核兵器使用が想定され、その数は恐らく数十発以上であろうと見られています。

  ロシアは2014年のクリミア危機において核使用を準備したことを示唆したり、北極圏の島や北方領土を含む千島列島が攻撃され戦闘が発生したという仮定のもと核兵器の限定的先制使用の可能性を想定した演習を行っており、いざというときの使用は確実であると見られています。

  2018年での各国の核弾頭保有数は、アメリカ6450・ロシア6490・フランス・300・中国280・イギリス215・パキスタン150・インド140・イスラエル80・北朝鮮20とされていますが、アメリカとロシア以外は概数でしか分からないそうです。まして中国・北朝鮮は情報鎖国であり、正確な数字は全く不明と言えるでしょう。

  もし上記の中国の将軍の言うような状況だとすれば、核兵器により地球が7回破壊されるという表現もあながち誇大妄想とは言えないかもしれません。中国はその後も恐らく好きなように核兵器を増やして米ソ並の数を確保しているでしょう。保有する数は非公表だからです。化学兵器・生物兵器も準備しており、それは極秘事項となっています。

  もし世界中で核兵器が連鎖的に使用された場合、その1/3が爆発したとすると世界の主要都市・主要工業地帯・軍事施設のうち4000ヵ所程度が消滅するでしょう。市販の世界地図上でターゲットになりそうな箇所を探したとしても、それだけの数を挙げるのは難しいと思います。日本で言えば、県庁所在地はたったの47で、しかも産業・工業の中心と重なっています。

  重要なのは核兵器保有国がインドより北の緯度にある国に偏っていること、そしてターゲットになる国が限られていることです。先進諸国は当然ターゲットになり、中国自体も入ります。おおよそですが、G20に相当する国家は全てターゲットになり得るでしょう。ですが相互に敵対している関係国を含めるとなんと40ヵ国程度に膨れ上がりますこれらの国家の主要都市・工業地帯・軍事施設の数を数えても、1国当たり平均50ヵ所としても2000発で世界は崩壊・消滅します。ということは世界の核兵器のうち半分が使われただけで、文明は崩壊するということです。恐ろしいことです!
 
  核戦争後の世界を想像してみましょう。日本は広島と長崎での被曝経験のある世界で唯一の国です。しかも当時の原爆は極めて小規模で、広島に投下されたウラン型のリトルボーイはTNT火薬で15キロトンに相当すると言われ、長崎に投下されたプルトニウム型のファットマンは25キロトンと言われています。戦後開発された最も強力な水爆はソ連の「ツァーリ・ボンバ」で40メガトンですから、広島型の2000倍以上です。米ソはメガトン級の原爆・水爆を沢山開発しました。1メガトンでも広島の66倍の威力です。原爆には理論的に威力に限界がありますが、水爆にはありません。水爆ではギガトン級も可能です。ロシアの単弾頭型弾道ミサイルSS-18に搭載されている水爆は24メガトンだそうです。近年では多弾頭方式(MIRV弾頭)の方がより広範囲の破壊効果を得られるため、単独の大型弾頭はあまり使われなくなっています。破壊効率がよいため、弾頭核出力もキロトン程度に抑えられてきているようです。さらに局地戦でも使える戦術核と呼ばれる小型弾頭が開発されています。これは大砲のような形でも使用可能と言われています。北朝鮮が2019年11月30日に行った実験はこのようなタイプと思われます。

  核戦争では意外にも電磁攻撃が主体になるかもしれません。これは宇宙空間に近い高層(高度100km前後か?)において核爆発を起こさせ、その際に発生するガンマ線が大気中の分子に作用し、コンプトン効果により自由電子を作り出し、これらは電磁パルスとなり、アンテナ・ケーブルなどを通じて、防護されていない電子機器を使用不能としてしまいます。北朝鮮が行ったロフテッド軌道によるミサイル実験はそれを狙ったものと見られます。初期にはどこまで到達できるかを実験していましたが、日本などの近距離国を狙う場合には探知のされにくさ、防衛ミサイルによる迎撃の受けにくさの点でロフテッド軌道による電磁攻撃の方が有利であり、かつ相手国の人間を殺さないで済むため、非難されにくいという点でも有用だからです。
  どういうことかというと、ある日突然上空に閃光が走ります。上を向いていないと分からないかもしれませんが、周囲が急に明るくなるかもしれません。そして5分後くらいにわずかな衝撃波を感じるかもしれませんが、それは恐らく微弱です。ですが閃光があった瞬間に全ての景色が変わるでしょう。自動車はエンジンが停止して制御不能になり、あちこちで衝突が起こるでしょう。携帯電話は使えなくなり、照明も点かなくなります。もし夜だったら一斉に闇夜となるかもしれません。すなわち電気・電子製品のほとんどが使えなくなるのです。コンピューターも使えなくなるので通信インフラは壊滅します。これ以降人々は原始時代に戻ったかのような生活を強いられ、食料を食べ尽くしたあとは飢餓に襲われます。冷蔵庫も停止するため保存が効く食料は限られます。米櫃の米を焚こうと思ってもガスが使えず、水も出ないでしょう。政府はある程度はこのような事態に対処できる備えをしているかもしれませんが、ほとんどの通信が閉ざされるため情報が集まらす、また命令を発信することもできないかもしれません。戦争はこのような状況から始まるかもしれないのです。

ミサイルのロフテッド軌道

  2017年11月に北朝鮮が行った「火星15」によるミサイル実験では4000キロ以上の高度に達したとされます。これは典型的ロフテッド軌道発射実験です。2019年には15回に上る実験を繰り返しました。7月に行った実験では最初高度50キロ程度の低空を巡行し、ターゲット直前で上昇してターゲットにはほぼ垂直に近い角度で落下するという軌道実験を行いました。これもロフテッド軌道に相当するもので、電磁波攻撃に使えると思われます。これは迎撃が難しいと言われています。
 
  通常の地上付近での爆発では広島・長崎の事例と同じで、閃光と爆風、そして強烈な放射線により、膨大な人命が奪われます。広島では16万人、長崎では7万5千人が亡くなったとされています。被爆者はおよそこの3倍以上と言われます。東京に1メガトンの原爆が落とされた場合の試算はありませんが、約半数が即死、残りの人々は重症となるでしょう。高層ビルは崩壊してガレキとなり、火事により東京は終戦直後と同様の焦土となることは間違いありません。
 
  世界各地の主要都市でこのような惨状が突如出現します。中国ではそのような事態に備えて司令所として北京近郊に非常時退避場所を用意しているでしょう。米国でそのような準備をしているということは聞いたことがありません。コロラド州のシャイアン・マウンテン空軍基地にあるNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)は山の地下にありますが現在待機状態であり、多分核攻撃ターゲットになっていると思われますが冷戦時代のものであるため老朽化して余り役に立つとは思えません。この点においても米国は中国に遅れをとっています。冷戦後長く平和が続いたことがその要因です。中国は世界制覇をいつも目指してきたため、あらゆる方策を自由に取れる有利さがあります(№050「独裁という政権構造の強みと弱み」)。アメリカの摩天楼がどのような景色になるのか想像できません。巨大なガレキの山ができるのでしょうか。各国の世界遺産としての建築物なども消滅します。これは人類遺産の消滅をも意味しています。
 
  恐らく核戦争は最初の核ミサイルの発射(それがどこから始まるのかは全く不明)から1時間ほどで終わるのではないでしょうか。たとえば北朝鮮からアメリカに向けて最初の1発が発射されたとして、およそ大陸間弾道ミサイルなら秒速8km以上で飛行するため、15000kmでは35分程度で着弾することから、迎撃が行われた場合往復を考えても1時間以内に双方に大打撃が加えられることになります。北朝鮮はまだICBM搭載可能な潜水艦を完成していないため報復手段は無く、北朝鮮の全ての都市・軍事施設は消滅するでしょう。それに対してアメリカは軍事衛星による早期警戒システムを持っており、またジョージ・W・ブッシュ政権時代に統合されたMD(ミサイル防衛システム)によって迎撃は可能であり、相当程度の着弾を防ぐことができると思われます。まだ北朝鮮は実戦配備が追い付かず、ミサイルと弾頭の数(多弾頭はまだ完成していない)から言っても現時点では全く痛手を与えることすらできないでしょう。アメリカは2017年の国連総会でトランプ大統領が、「米国と同盟国を守ることを迫られれば、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択はない」と強く警告していますが、金正恩自身が「トランプが世界の面前で私と国家の存在自体を否定して侮辱し、我が共和国を滅ぼすという歴代で最も凶暴な宣戦布告をしてきた」と北朝鮮史上初の最高指導者名義の声明で猛反発し、まるで子供の喧嘩のように、「老いぼれ」「犬」などとトランプを罵倒しました。米朝の応酬は国家間を超えて政府首脳同士の個人攻撃に拡大したのです。
  問題は北朝鮮の恫喝がもはや国家の政治的範囲を超えてキチガイじみてきたことです。恐らく国際政治的にも孤立し、国内政治的にも行き詰った先には、キム・ジョンウンの被害妄想的思考から自暴自棄による核戦争が起こる可能性が高いと思われることです。北朝鮮の国内事情は滅多に漏れてきていませんが、2020年初頭の冬は相当経済的にも厳しい状況に置かれていると想像できることから、国内に不穏な空気が生じてきたときには突発的に戦争を仕掛けないとも限りません。状況論的にはかなり可能性が高いと言えます(№021「状況理論」)
 
  もしこの非常に不安定な北朝鮮の状況が乗り切れたとしても、2020年はイランの政局に不安要素が生じてきており、ハメネイ指導者の権威失墜(ウクライナ航空機撃墜事件での嘘)がイランに何かしらの行動を起こさせる可能性が出てきており、ペルシャ湾で予想される事件が各国を巻き込む恐れも大きくなってきました。中国も習近平の失策・信用失墜から何かしらの行動(香港侵攻・台湾侵攻)を起こす可能性があります。11月にはアメリカ大統領選挙がありますが、ここでトランプが敗北した場合には国際情勢は一気に不安定になる可能性の方が大きいように思われます。今年(2020年)は余りにも多くの不安定要因が多く、予想すらできない状況が続くでしょう。
 
  なにが核戦争の発端になったとしてもおかしくない状況の中、核戦争はいつか必ず起こると考えます。それは筆者が予想するのではなく、状況がそう動くという現実です。そして核戦争は報復を含めて恐らく1日で終わることでしょう。その後には通常兵器による侵略が始まると考えます。これはまさに国家のサバイバル戦争になるということです。司令塔を失い、通信手段を失い、生産基盤を失ったならば、国家は直ちに飢餓に直面します。農村は国家によって統制、または略奪集団によって侵略され、食料の奪い合いが起こるでしょう。こうして世界は各地での戦国時代に入ります。ただしそれは長くは続かないでしょう。指導層が生き残っていれば収拾はかなり早く行われ、指導層が全滅していた場合には数年という長い期間、国内は内戦状態になるかもしれません。それは国家間の侵略戦争という形に発展していきます。その期間は10年以内ではないかと考えます。それを収拾するカリスマ性のある指導者が世界的に現れるでしょう。ですがアフリカの某国の内戦状態などをみると、それが長期化する恐れも多分にあると思われます。
 
  人々が戦争に飽き飽きしてきた頃、指導者が現れるでしょう。その指導者が善人であるか悪人であるかによって、その国家の将来、そして世界の将来も決まると思われます。筆者としてはヒトラーのような野望を持った悪人ではなく、ガンジーのような哲人が指導者として現れることを期待します。そしてもし世界が再び人間の良識によって導かれるなら、未来世界というものにも希望が見えてくることでしょう。ただしそこに未来に対する毅然とした統一思想がなければまた同じことが繰り返されます。人間の本能を克服するための新しい思想(ノム思想)があれば、人間は同じ過ちを二度と繰り返さないことを願って、その思想に帰依することになるでしょう。筆者はそのための準備をしています。そしてその完成にはまだ数年は掛かると思いますが、この仕事が続けられるかどうかは分かりません。もしこの仕事が一段落したならば、私の使命は果たされたことになります。そしてこの思想の継続を次世代の人々に託したいと切に願っています(№062「使命と使命感」)。(完)
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