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【時事評論2020】

「人類運命共同体」の嘘と真実

2020-10-04
  最近習近平が唱えている「人類運命共同体」という概念は一種のプロパガンダであり、真実を表した従来からの概念ではなく、政治的スローガンである。つまり非常に普遍的な一般用語を中国を中心とした中華世界というものをイメージさせるために借用した政治的意味での用語であり、我々はそれに騙されてはならない。
 
  人類運命共同体という言葉はかなり前から用いられており、調べてみたがウィキペディアでさえ、中国が創り出した言葉であるかのような書き方であった。それによれば中国首脳の言葉として初めて登場したのは2011年であり、当時の温家宝総理が東日本大震災の被災地を訪問した際、「自然災害の前で人類は運命共同体である」と述べている。中国では人類運命共同体が正式に登場したのは、胡錦濤前党総書記2012年に中国共産党第18回全国代表大会で行った活動報告であった。中国共産党の習近平党総書記が就任後の初会見で「国際社会は運命の共同体になりつつある。複雑な世界経済情勢とグローバル問題を前に、どの国にも単独で立ち向かうことができない」と言及している。2011年の『中国の平和発展』白書にては、「運命共同体の新視点から人類の共同利益と共同価値観を探るべきだ」と記されている。2017年12月、中国共産党と世界政党のハイレベル対話会の席上、習近平党総書記は「人類運命共同体はすべての民族と国の前途に深く関わり、我々が生まれ育ったこの地球を仲睦まじい大家庭に建設すると共に、各国国民の憧れや夢を適えるものだ」と説明している。2018年に行われた憲法修正時に、『中華人民共和国憲法』の序言に盛り込まれた。 ということは、この言葉が既に中国のプロパガンダとして定着したことを意味する。
 
  筆者は以前から同じ用語をもっと普遍的な意味で使ってきたが、余りにも一般的用語なのでどこで書いたかは覚えていない。だがその概念はごく当たり前のことであり、特に地球温暖化問題が顕在化してからは全世界の共通認識になったと言ってもいいだろう。それを中国が事さらに強調し出したのは地球温暖化などを考えてのことではなく、あくまでも政治の世界での概念に留めている。つまり世界は一つにならなければならないということを婉曲的に述べたに過ぎず、しかもこの用語は暗に、中国を中心とした世界観を明確にしたのである。上記の仲のよい大家族」には家長として中国が最適だと自信をもって語っている。今やっていることが世界に憎まれ、警戒されることばかりなのに、よくとぼけてそのような欺瞞に満ちたことを言えるものだとその厚顔さに呆れて怒りを覚えるが、彼らの壮大な中華帝国理念からすれば当然出てくる言葉なのであろう。
 
  では真実面からこの「人類運命共同体」という言葉の意味を探ってみよう。これは人間が地球という生息領域でその環境に影響をほとんど与えないレベルで生活していたときにはあり得ない言葉であった。事実人類は各地域・各国において集団を作り、本能・欲望にまかせて地球を破壊・汚染し、ついには大気環境に変化を生じさせ、それが地球温暖化という環境問題を惹き起こした。ここに至って初めて人類は「運命共同体」であることを自覚し始めたのである。だがまだその意識は世界の人々の一部にしか浸透していない。ほとんどの人はその日を暮らすことに頭が一杯であり、この用語を聞いたとしても実感が湧いていないのが実情である。それがそろそろ実感され始めたのは、台風・ハリケーンの大型化や集中豪雨などによる水害の多発、そして極地や氷河が溶けだしたというニュースが多発し始めたからである。つまり異常気象という形で実害が及ぶことによって、やっと人々はその脅威を肌で感じるようになった。
 
  だが人類運命共同体の意味はもっと深く、それを間もなく世界は実感するだろう。それが第三次世界大戦の勃発である。筆者はこれについて口酸っぱいほどに繰り返し述べてきたし、本論にも取り上げている。だがまだ誰もその脅威を感じてはいるものの、実感を持って受け止めてはいない。丁度地球温暖化が知られるようになっても、それが自然災害という形で自分に降りかかってくるまでは実感できなかったのと同じである。だが地球の変化は今後数十年単位で変動していくが、人間界の矛盾から生じるストレスによる戦争はもう目の前に迫っている。そのことを実感できないというのは非常に不思議なことであり、筆者にとっては人類の愚かさだとしか見えない。現代の戦争は始まりは数日で、戦闘は数時間で、継続は数日で終わるであろう。その後には廃墟と化した都市と、急激に寒冷化を始める暗い世界が残るだろう。そして人々は最初は連帯するがすぐに食料争奪のために野獣化するだろう。
 
  その時に初めて、人類は国家という存在とは関係なく、世界の全ての人々が同じ運命の下にあるということを悟るだろう。すなわち、「人類運命共同体」というものを実感するだろう。それが最初の認識であり、その後の数十年の間に中国が世界を支配すれば、第2の人類運命共同体、すなわち中華帝国が出現するということになる。だが中国が2011年から唱えてきたこの中華帝国が出現するかどうかは極めて怪しい。それは人々が既にその嘘とプロパガンダ性に気が付いて警戒を始めているからであり、一時的には「世界の中国への傾斜」があるにせよ、その虚飾性を見抜いた世界が反発することで、中国は内部から自壊を始め、ついには内戦となって自滅するだろう(【時事通信】《中国》10.2記事参照)核戦争後の世界を支配するのが誰であれ、一国が支配する構造は破綻が予測されるものであり、アメリカがそれを実証してくれた。未来世界が一つにまとまらなければ同じ事の繰り返しになるのは避けられない。それには連邦形成しかなく、その思想はノム思想にしかない。
 
  ノム思想がその時までに世界に広がって認知されているかどうかが大きな分かれ目になる。砂漠に埋もれた宝石に価値はない。それを拾い上げた人にとって宝石は意味を持ち、価値を持つようになる。なんとかこの思想を早く世界に伝えなければならないが、そのためにはこれを読む人ができるだけ多くの人に宣伝してくれなければ、ノム個人の努力には限界がある。筆者は高齢なために実戦的に動けない。ノム思想の伝道師を作るためにどうしたらいいか、今、最もそのことで悩んでいる。イエス・キリストは11弟子を得たことで世界にキリスト教を広めることができた。釈迦は王族や高位の人を多く弟子にしたことで、存命中に世界に躍進した。筆者のノム思想は大枠は完成しているが、宗教ではなく科学であるためその検証と実証にはまだ時間を要する。早く弟子が現れなければ筆者の生存中に思いを伝えることはできない。だがそれもまた運命であると、筆者は悟っている。 
 
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