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【時事評論2020】

中国が日本に対する先制攻撃を示唆

2020-09-22
  中国の国営メディアである「環球時報」が9月27日の記事で、日本に強力なミサイルがF35ステルス戦闘機に装備された場合、中国としてはミサイルで発進前に叩く必要があることを示唆した。これは先制攻撃を前提にした考え方が当然であることを主張したことを意味する。「先にやらなければやられる」という思考が中国にはあり、それをまた当然だとする雰囲気を国民の間に醸成しようとしている意図が明らかである。
 
  記事は米誌ジェーン・ディフェンス・ウィークリーが9月上旬に日本の防衛省から得た情報として、「航空自衛隊がノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社から4920万米ドル(約52億円)のJSM(Joint Strike Missile)を購入し、2021年4月に装備を開始する」と伝えたことを紹介したところから始まる。そして、JSMについて「最大の強みは、F-35戦闘機の内部弾倉に搭載できることだ」とし、F-35が持つステルス性・感知性・情報ネットワークの強みと、JSMの長距離射程・高精度・抗干渉の強みが合わさることで、「猛烈な海上キラー」になると予測。F-35のステルス性に加え、JSM自体にも一定のレーダーステルス能力があるため、「JSMを搭載したF-35がひとたび離陸してしまえば、現時点ではミサイル発射前に迎撃、駆逐する手段はない」と論じている。

  その上で、JSMへの対抗措置について「やはり、相手の空港で直接たたくことがベストだ」と主張。日本の航空兵基地は中国から近いため、ロケット軍・航空兵のいずれを用いても事前に制圧することが可能だとし、そのためにはF-35の離着陸が可能な日本の航空基地の監視体制を確保する必要があると伝えた。これは軍事衛星による監視を意味していると思われる。また、中国も日本同様にDF-100などの長距離対艦ミサイルを発射する攻勢に出ることも対抗手段の一つであるとの見解を示した。
 
  国営メディアがこのような先制攻撃を意味する論説を堂々と世界に臆せず、秘密にしようとも思わずに載せるということは、中国国民に対して「中国は負けない」・「中国は必ず勝てる」と思わせることで、自国への誇りと愛国心を涵養させるための意図があると思われる。前項(9.21「準備と発表」参照)でも述べたように、軍事情報というものは基本的にその手の内を晒さないのが原則である。日本に対抗するには先制攻撃しかないと国民に事前に納得させることで、世界からの批判をかわそうとする意図が読み取れる。つまり中共政権にとっては、世界の批判や評価はどうでも良いことであり、中国国民が支持してくれれば問題はないと考えているのである。昨今の中国の諸国への攻撃的態度はそうした自国民への事前の先導・洗脳を基に行われており、その一環が愛国教育であることは論を待たない。
 
  また中国外務省があらゆる事柄について他国の行動・政策・発言に対してメディア攻勢を仕掛け、自国の正当性を無理筋な論理で展開していることは、中国がかなり焦っていることを示唆している。先般の日本の森元首相と蔡英文総統の間で交わされた短い一言についても、メディアの報道を根拠に内政干渉してきたのも、同じ現象であり、中国がかなり近いうちに大きな事件を敢えて起こそうとしている前兆であるとみれば、それも納得できるであろう(9.21「中国の日本への内政干渉を許すな!」参照)。それはこれまでにも再三述べてきた「六場戦争論」に基づく2020年から始まる台湾侵攻である(【時事通信】13.7.5記事参照)。その目標を予定通りに達成するために、官民挙げて布石を行っているのである。これが起これば、これまでの各国との対立など大したことではなくなる。戦略的には誤っているが、中共政権にとっては外国の評判はどうでもいいことであり、自国民だけを頼りにしていると思わせるところが多々ある。

 
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