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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

自由主義と民主主義の破綻

2020-07-16
  コロナ禍が世界を覆っている現在、これまで民主国家で常識と思われていた自由主義と民主主義に大いなる疑問が現れたことに気付いた人はどの位いるのだろうか? 対抗する全体主義国家である中国が、コロナ禍をいち早く収束させてその体制を自慢そうに誇った時、民主国家はその傲慢さに腹立たしく思ったに違いない。だがそれでも自由主義と民主主義が最高の体制であると信じて疑わない人が圧倒的に多いのであろう。だがその後、その自由主義と民主主義のリーダーであるはずのアメリカに、思いがけずも人種差別問題が再び沸き起こり、コロナ禍を収束させることもできない有様に、何か原因の分からない当惑を覚えている人は多いはずである(20.6.4「アメリカの自由主義が崩壊するか?」参照)
 
  本来なら、医療技術でも国民の団結という点においても模範を見せなければならないはずのアメリカという超大国が国論を分裂させるに及んで、人々は体制の問題を考えざるを得なくなっているのではないだろうか。池上彰も、「民主主義とは何か。考え込んだ人もいるのではないでしょうか?」と書いている。そもそもコロナ禍が発生する以前から、アメリカでは若い人の間に富の格差に疑問が生じて社会主義を望む声すら起こっていた。だが中国のような国家にしたいと思う人はアメリカだけでなく、世界のどこにも見つけることは難しいだろう。人は本来的に自由を求める存在であるからである。だが日本では国難に際して、戦時のような非常事態が生じているにも拘らず、外出禁止令すら出すことができなかった。民主主義のルールに従って法律改正をしようにも、愚劣な野党の攻撃を恐れて政府が法改正の発議をできないからである。民主主義というルールそのものにも大いなる疑問が生じることになった。
 
  そもそも自由主義も民主主義も人間が生み出したイデオロギーであり、それは一種の集団幻想である。王制や帝政に対する反動から生まれた人為的理念であり、自然法則に則ったものではない。自然の摂理をみれば、それは生存本能と生存競争に支配された世界であり、人間もまたその摂理に従って自然界の敵を克服してきた。だが人間はその誕生の当初から同じ人間を敵としなければならなくなった。それは人間に知能があったからである。その知能は技術を生み出し、人間は技術の高さを競い合ってきた(20.9.16「競争はいつ芽生え、何をもたらしたか? 」参照)アメリカが超大国と言われるまでに成長したのは、この技術力の高さ、科学力の高さにおいて秀でていたからである。決して自由主義や民主主義を採用したからではない
 
  そもそもアメリカは1776年にヨーロッパから独立した際、キリスト教の愛の理念を掲げた訳ではない。キリスト教が国教であると言われるが、独立そのものは経済的理由が主たるものである。その証拠に1865年の南北戦争終結によってアメリカ合衆国憲法修正第13条が出されるまで、奴隷制度によって繁栄したのである。形式的には1964年の公民権法成立を以て黒人は白人と平等になったはずであったが、未だにアメリカは人種差別問題でいつも揺れており、それは自由主義や民主主義が白人優位の思想を許容しているからである(思想・信条の自由)。恐らく全体主義(社会主義)になって白人優位の思想が禁止されない限り、この人種間闘争は無くならないであろう。
 
  第二次世界大戦が終結した1945年から米ソの間で冷戦が始まった。これは体制の違いによる闘争であったが、自由主義経済に立つ米国に圧倒的な利があったため、ソ連共産主義は1991年に壊滅した。だが中国共産党はしぶとく生き残った。それは1971年のニクソンショックによって米が中国の市場をわが物にしようという経済的利益を目論んだためであり、賢明で悪賢い鄧小平はそれを利用して経済発展の端緒を作り出した。天安門事件があっても日本は積極的に率先立って中国に支援を差し伸べた。それらの自由主義国の思惑には、中国は経済発展すれば同化してくるだろうという思い込みがあったのである(米国の「関与政策」)。だがノムは中国の本質を見抜いていたため、それはあり得ないと考えてきた。むしろ経済的に豊かになれば自らの体制に自信を持つようになり、情報を隠蔽して都合の良い情報化社会を形成することで独裁が強まるだろうと予測していた。
 
  現在の状況から見ても分かる通り、現時点で米中が全面対決した場合、それは圧倒的に中国に有利な状況にある。コロナ禍への対応を見てもそれは歴然としており、国家統制の容易な中国と、国論をまとめることすらできないアメリカには体制の面で圧倒的な差があり、中国が勝利するであろう。また軍事面で見ても、中国はサイバー攻撃訓練を積み重ねてきたことから、初期のサイバー戦で勝利し、米軍をフリーズさせることに成功するだろう。ハイブリッド戦争というものがこれまでの戦争の概念を変えてしまうことを世界は知るであろう。ということは、自由主義と民主主義の欠点が、第三次世界大戦における雌雄を決する戦いにおいて決定的な敗北原因となることを知らなければならない。軍備の差は依然として米中比は4:1程度にあると言われる。だが攻撃能力から観れば、1:2程度に中国に利がある。単に核戦力や通常兵器だけを比較することは意味がない。中国は法律を既に総力戦に備えて作成済みであり、いつでも世界に散らばった中国人を使って情報攪乱を行うことができるからである(2010年施行「国防動員法」・2021年施行「国防法」)。
 
  イデオロギーである自由主義や民主主義を盲信してはならない。それは専制に対する反動から生まれた理想主義に近いものであり、自然の摂理に反している。むしろ全体主義の方が自然の摂理に合致しており、社会的動物である人間の社会に対しても合理性がある。問題は独裁者のための全体主義(独裁主義)を選択するか、地球環境と民を価値の中心に置いた全体主義(ノム思想・真社会主義)を選択するかの問題である。だがその選択は現代においては不可能である。前者は既に存在するが、後者はまだその姿すら明らかではないからである。選択は未来に託されることになる。その時に人類がノム思想を知っているかどうかが大きな分岐点になるだろう。もし知っていれば、廃墟に立つ人々は、自由主義でもない、民主主義でもない、独裁主義でもない、全く新しい概念に基づく新しい思想に希望を見出すだろう。ノムとしてはその時に望みを託すしかないのである。2021年になった

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