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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

ウイルスについての知識・その3

2020-05-05
  先日NHK総合でクルーズ船でのコロナ禍の分析に関する番組を放送し、その中に有益な情報が有ったので追加情報として記録することにした。だが番組自体はクルーズ船のオーナー・クルーズ運営会社・船籍など基本的な情報をわざと伏し、コロナに関する医学的な問題に絞っており、総合的に捉えていない所に不満が残った。またいつものパターンで一組の夫婦に焦点を当ててストーリーを作り出すという劇場型番組であったため、他に示してほしいデータや状況が後回しにされたようだ。時系列での説明が不十分であったこと、クルーズ船が予定を変更して横浜に向かった経緯についても説明が無かった。
 
  まずクルーズ船の状況は都市封鎖・地域封鎖のミニチュア版であったという点で今後に大いに示唆を与えるものであった。船客の1人が香港で下船し、発症が確認されたとの第1報が船に届いたのは2月1日であった。だが船会社と船長はこのことを乗員には知らせたが船客には知らせず、乗員に箝口令を敷いた。しかもその翌日から2日間は普段通りのイベント・ショーを繰り広げた。感染はダンスパーティーやショー、そしてレストランで拡散したと思われる。この経緯は船会社の責任を問える犯罪である可能性が高い。事後検証では感染は2月2日から4日にかけて集中していたことが分かった。
 
  2月3日に横浜港に戻ったクルーズ船では直ちに検疫が行われ、最初は状況を甘く見ていた日本政府も、PCR検査で31人中10人の感染が確認されて青ざめた。30%を超える感染率は尋常ではなかったからだ。5日に船内隔離が行われ、同時に患者の搬送が開始された。3月1日に全乗客・乗員が下船を完了し、1ヵ月に及ぶ船内での闘いは終わった。3711人の乗員・乗客のうち712人が感染、13人が亡くなった。感染率は全体で19.1%であり、乗員だけみると13.9%で低い。ノムの計算では船客は21.3%感染している。接触感染の機会の多いはずの乗員の方が低かったのは、情報を知っていて対処した結果なのかもしれない。番組ではこのことに全く触れていない。
 
  下船後の船内は科学調査が行われ、その結果感染者がいた部屋のユニットバスルーム(トイレ兼用)の床・便座・トイレの取っ手・枕・電話・テレビのリモコンなどからも見つかっている。これらは明らかに接触感染の可能性があることを示している。接触感染はドアノブ・スイッチ・エレベーターボタン・階段手摺などのハイタッチサーフェス(高頻度接触環境表面)と呼ばれる部分で起こる。つまり人間の行動そのものが感染経路になる。無症状感染者の部屋からもウイルスが見つかったことから、無症状であっても感染能力があることが判明した。また実験も行われ、レストランのビュッフェ形式では料理の蓋やトング、飲み物容器の取っ手などが共通の接触感染の可能性のある場所であることが分かり、また通常の会話などでも感染の可能があることが分かった。
 
  器物に付着したウイルスがどの程度感染力を持続するのかを実験した海外研究では、ステンレス・プラスチックともその表面で3日間生き残ることが示された。特に最初の2~3時間は注意しなければならないという。布や皮膚への接触での実験例はないようだ。ノムが一番知りたいのは野外の太陽光線が当たる部分と当たらない部分での生存期間である。野外消毒(各国がパフォーマンスとして行っているが、日本ではほとんど行われていないようだ)の有効性はまだ検証されていないのではないだろうか。恐らく野外消毒の意味はほとんどないと考えている。それよりも屋内消毒が重要なことは、上記実験でも明らかである。

 
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